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第二百九十七話

「第二百九十七話」


・アキ視点


 やけに周りが騒がしいな。まるで……そう、喧嘩でもしているかのようだ。


「っ!!」


 目を開けると同時に起き上がる。

 最後に見た光景は、自分の死に際だった。

 腕を上げようとした時だった。


 思い出したかのように、激痛が襲って来た。


「っ……っ……はぁ……」


 そうだった……腕が無いんだった。


『僕には傷を治す権利がある。』


 両腕が生え、体の傷が完治していく。

 騒がしい方へ顔を向けると、シヴァとルフェルが言い合いをしている最中だった。


「お前ッ!!やっぱり力を隠してやがったんだ!!」


 ルフェルはシヴァの胸倉を掴み、壁へ追いやっていた。


「………」

「何とか言えよ!!」

「………そ、そうだよ。」

「あ!?」

「この力はお前程度に見せるだなんておこがましいんだよ。」

「っ!!」


 ルフェルはシヴァを投げ飛ばす。


「『結界・聖剣』」


 仰々しく、そして、荘厳に携えた剣を構えた。


「立てよッ!!ぶっ殺してやる!!」


 流石にまずいと思い、ルフェルとシヴァの真ん中に立って、場を収めようとする。


「落ち着きなよ。」

「お前……」


 そうだった。元の姿でもルフェルと面識があるんだった。


「どいてくれ。」

「それはできない。」

「………」


 ルフェルは今にも剣で斬りかかってきそうな勢いだった。


「どけよ。」

「………」

「アキ……さん。そっちの女の人、大丈夫?」


 シヴァが後ろから声を掛けてきた。

 後ろの女……?

 あ!隊長!


 冷たくなってどれだけ経ったのか分からない。

 彼女の頭には弾丸が貫通した痕があり、その穴から血が垂れている。


 二人のことなど放っておいて、アイアンに急いで駆け寄り


『僕には隊長を治す権利がある。』


 傷が治り、目をようやっと開けようかとする彼女を見た。


 良かった……これで……ナントカ……ナントカ……なんだっけ……


・アイアン視点


「痛っ………」


 頭を摩りながら起き上がる。

 二日酔いのような気だるさと頭痛が体を侵略していた。


「ありがとう……アキ。申し訳ないんだけど、水もらえ……アキ!?」


 そんな体調を忘れるくらいの出来事が目の前で起きた。

 アキが倒れ、目、鼻、口、耳、全身の穴と言う穴から血を吹き出し、焦点が合っていない。


 攻撃されたのか!?

 と言うか、ここはどこだ!?


 一つの光源しかない洞窟のような暗がりで、二人の少年は先ほどまで喧嘩していたのか、対峙している。

 しかし、その二人もアキの様子を見てか、心配そうな顔を覗かせていた。


「アキ!アキ!!どうした!?何があった!!」

「………」


 まずい!

 治療するような道具もないし、そもそも私には医術が無い。

 他のガキ二人は……無理だ。どう考えても無理だ。


「アキ!!しっかりしろ!!す、すぐ医者を……!!」

「………」


 アキの口が少しだけ動く。


「な、何!?」


「い……す……」


「椅子!?す、座った方が楽か!?」


 アキの体を起き上がらせようと、抱きかかえる。


「っ!?」


 な、なんだこれ!?

 こいつ……こんな軽かったか!?

 アキの正確な身長は知らないが、百七十ちょっとはあるはずだ。そう考えると、体重は六十キロ前後あって普通だろう。

 それに、アキは意外に動ける。それなら、筋力を考えて、七十キロあってもおかしくない。

 それなのに……こいつ……今の体重は果たして三十キロあるかどうか。


 ぐっと腕に力を入れると、アキの体は不気味なほどに凹んだ。

 まるで……そう、臓器が何もないみたいに。


「っ!?」


 信じられない出来事に、言葉が詰まる。

 座る態勢にしても、アキは全く自立できなかった。

 なぜかは見るに明らかだった。

 体を支えるだけの筋肉量が無いのだ。


「アキ!何があった!!」

「い……すが……ならんでて……」

「おい!!ガキ共!!椅子を持ってこい!!」

「「………」」


 二人は不思議そうに、一点を見つめる。


「早く!!」


 そう叫ぶと、二人は急いで、どこかに走って行った。


「アキ!もうちょっと待てるか!!」

「だれ……も……いない……」

「ここに居るぞ!!大丈夫だ!!もうちょっと……」


 アキの足が無くなる。

 それは、斬られたとか捥げたとかじゃなく、無くなったのだ。


「アキ………」

「くろい……へや……いす………くびを……」

「ほ、ほら、い、椅子です!」


 一人の少年から椅子をぶん取り、アキの目の前に置く。


「アキ!座れるか!?」

「………」

「っ……おい!ガキ共!!ここはどこだ!?医者は居ないのか!?」

「あんたら……どこの出身だ。」

「あ!?」


 一人の少年は、大して珍しくない現場だとでも言わんばかりに、冷静だった。


「カーディス領だ!!」


『旅行に行きたい?どこへ行く。』


 視界に光が灯る。

 洞窟からいきなり、太陽の下に出たみたいに。


「っ………なっ!?」


 目を見開くと、そこは軍御用達の病院だった。

 目の前には診察中の先生が居る。

 どこかの少年の診察をしているらしい。


「は?」


 医者は情けない声を出し、いきなり現れた四人組を理解できていない様子だった。


「な、なんだね!君たち……アイアン・ドールさん!?」

「よ、良かった!!彼を診てくれ!!」

「え?え?」


 服をめくり、背中を向けた患者を退かす勢いで、医者に駆け寄る。


「至急頼む!!」

「い、今は……」


 医者の顔にはクマが出来ていて、その忙しさを物語る。


「時間ピッタリ。恐いくらい。」


 患者の保護者であろうか、汚れた服に、この場に似つかわしくない端整な顔立ち、目のハイライトを失った男がベッドに座っていた。

 ベッドから立ち上がり、アキに触れる。


「力を使い過ぎたね。自分の体を差し出すなんて。」


『スペア』


「ごほっ……ごほっ……かはっ……」


 アキは血を滝のように、吐き出す。

 顔色が随分と良くなり、凹んだ腹も治っていくようだった。


「良し、役者は揃った。『権利』、『旅行』。君たちを待っていた。」


 男はニヤリと笑う。


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