第二百九十六話
「第二百九十六話」
・アキ視点
『僕には隊長を治す権利がある。』
アイアンの傷はふさがっていく。
しかし……
この煙幕の中を狙撃……いや、驚くべきはその精度か。
周囲に大きな建物は無かった。でも、あの角度的に間違いない。上から撃ったんだ。
どんな距離から撃ってんだよ……
「アキ。」
「っ!!隊長!!」
「ダッシュ!!」
「え?」
砂埃の中から四人飛び出してくる。
「っ!!」
一人は槍で、一人は剣で、一人は銃で、一人は双剣で。
槍兵が一番最初に到着する。
一突き目を避け、追撃も避ける。次の攻撃の時に、槍を蹴り、先っぽを折った。
体勢が悪かったので、回し蹴りをしようと思ったら、背中に折ったはずの槍の先端が刺さる。
「っ!!」
「ぬかったなぁ……阿呆が!!!」
ぐりぐりと遠隔で操られているみたいに、先端が心臓へと近づく。
アイアンが槍を持った男を蹴って、背後に迫った剣士から太刀取りで剣を奪うと、双剣とぶつかる。
鋼が打ち合う音だけが響き、その間に槍を自身の体から引き抜いた。
目の前の男を殴り飛ばし、アイアンに背後から攻撃しようとした男も吹き飛ばす。
バァン!
バァン!
バァン!
弾丸を避け、鳩尾にパンチして、気絶させた。
「ぷっ」と血を吐きだし、アイアンと一緒に構える。
「次はどうします?」
「あの狙撃手が気になる。恐らく遮蔽はかんけ」
シュン!
またもアイアンの脳天が貫かれ、その場に倒れ込んだ。
「なっ!?」
次に飛んできた弾丸を弾き飛ばし、親指と人差し指で輪を作って、狙撃手を探す。
マジか……この距離……二キロはあるぞ!!
しかも………バケモンが!!スコープがついてねぇ!!
どうやってこの距離を見てんだよ!!
左腕が落ちる。
「しまっ!」
気を取られ過ぎた!!
既に至近距離に二人、そして、向かってきている者が四人、近づいていることに気が付かなかった。
右腕も斬り落とされ、
「僕にハ……」
な!?
こ、声が……!!
で、でも呼吸はできる……まさか!!
空気の振動を無くしたのか!?声が反響しないように!?
向かって来た残りの四人の顔を見る余裕もなく、目を瞑った。
・シヴァ視点
さっきから周りが嫌にうるさいなぁ。
アキもどっか消えたし。
まぁ、でも関係ないか。
黙ってホームルームを聞く。なんてことのない、変わらない退屈ってやつだ。
教室に居る者は様々だ。
背筋を伸ばし先生の話を聞く者。朝だと言うのに寝る者。隣の席同士で話す者。
その中で俺はどこにも属さない。
外を眺めて、退屈という生活に浸る。
特別なんだからな。俺って人間は。
馬鹿な父親が見捨てた時も、間抜けな母親が見限った時だって、俺は自己を貫いた。だって、特別なんだからな。
成績だってもっと上を目指せる。だが、手加減して周りに合わせてやってるんだ。ちょっと本気を出せば、誰も敵わないくらいの実力を持ってるんだ。
俺は特別で天性の才を持ってるんだから。
神にだって会ったことがある。期待してると毎日言われる。
下らないことに全力を出すほど、俺は凡人じゃないのさ。
そうだ。周りがせこせこ、必死になってる様を見て、抉るような見下しをするのが最高に楽しい。これこそ、人生って味がする。
いやあ……羨ましいね。こんな下らない教科書の問題程度に必死になれるだなんて。何の才覚も持たないってのは下らなく罪だな。
陰で人を嗤い、影で人をボコす。
神に愛され、崇拝されこそしていないものの、対等である俺だからこその所業だ。
なのに……なんでだ。
「ちっ」
立ち上がる。
「……?ど、どうした?シヴァ君。」
前に立って話をしていたハルトンがいきなり立ち上がった生徒にきょとんとした表情で声を掛ける。
クソ……俺としたことが、目立つことなく、陰で人を小馬鹿にするのが俺って人間のポリシーなのに……クソ!
「………」
何の声も掛けずに、教室を出る。
「お、おい!」
ハルトンの声が後ろから聞こえてくるが、関係なかった。
そんなことよりも……なんなんだ。この感覚は!!
なんで……なんでアキの声が頭から離れねえ!!
「言ってみろよ……言ってみせろ……管理人。俺に何をさせようってんだよ。」
歩みは止まらなかった。
引き寄せられるように、そこへと向かった。
自分が何をしているのか、もはや分からなかった。いや、分かっていた。分かり切っているはずなのに、どうしても、理論的に説明できない。
別の教室の扉を開けた。
こちらもホームルーム中だったらしい。
いきなり別クラスのいじめられっ子が登場して、唖然としている。
「………」
目的の生徒を見つける。
最悪だ。こんな奴にお願いするだなんてな。願い下げたいが、どうしても……体の疼きが止まらねぇ……
「……おい。」
「………」
「おい……ルフェル。」
「……なに。」
「面貸せよ。」
「……良いぜぇ……てめぇの舐め切ったその態度……改めさせてやるッ!!!」
「結界」
ルフェルの首を掴んで、空を舞わせた後に、机に背中から叩きつけた。
「かはっ!?な、何すんだ!!てめぇ!!」
「黙れ。」
『旅行に行きたい?どこへ行く。』




