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第二百九十四話

「第二百九十四話」


・アキ視点


「さっきの奴なんなんだ?」

「いや……」


 どうする……切り出すか。説得を試みるか。それとも、拉致してしまおうか。

 アイアンが言っていた以上に時間が無い。恐らく、今頃襲撃を受けているに違いない。

 こいつに聞いて、真偽を確かめた方が良い。


「な、なあ、シヴァ。」

「ん?なに。」

「………」


「ノアって知ってる?」


「ノア………?」


 シヴァは考え込む。

 脳内にそのような人物が居るのか探ってくれているのか。隠し事をするために言い訳を考えているのか。


「知らない。友達?」

「そうじゃないんだけど……」

「……?」

「シヴァ。君に頼みがあるんだ。」

「なに?」

「力を貸してくれないかな。」

「だから、何を?」

「君……『権限』って知ってる?」

「………」


 シヴァはその単語を聞いて、顔色を変えた。

 その人物の地雷を踏んだみたいに、硬直して動かなくなった。


「やれやれだ。一般人を演じてやっているのに、どうしてそんな言葉を吐いた。」

「………」

「助けてやったのにな。」


 シヴァは背中を向けて立ち去ろうとする。


「どこに行くんだ……!」

「学校。言ってやろうじゃないか。俺は特別だ。凡人が野生に興じ、全力を出す中で、群れに帯びず冷笑する特別性なのさ。俺って人間は。じゃあ……

 群れの中で全力を出すだなんて無駄なことしない。」

「待て……!」


 シヴァは何事も無かったかのように歩いて行った。

 手足の震えが無くなったときに、シヴァを追いかけるように学校へ行った。


 シヴァは着々と授業の準備を進めており、今朝の出来事がまるで夢のように、澄ました顔で鎮座していた。


「おい……し」

「どいてくれ。」


 シヴァに文句の一つ。いや、説得をしようとしたら後ろから声を掛けられた。


「ルフェル……」


 その人物はルフェルだった。

 僕を退かし、一歩前に出ると、座っていたシヴァを蹴り飛ばした。


「なっ!?」


 抵抗の一切を見せないシヴァは、立ち上がることなく、そのまま地面に転がる。

 ルフェルが、机の中に手を入れ、一枚の紙を取り出すと


「ちっ。」


 舌打ちを一つして、教室を出て行こうとする。


「ま、待てよ!」

「なに?」

「い、いや……」

「ごめん。」


 なぜか謝罪され、ルフェルは苛立ったまま教室を後にする。

 その異常ともとれる行動に唖然としてしまい、はっとして転がったシヴァに手を差し伸べる。


「……大丈夫?」

「………」


 シヴァも普通に起き上がり、ルフェルが机の上に置いて行った紙を整えて、机に仕舞った。

 その紙はテスト用紙に見えた。右上に赤い文字で六十点と書かれていたのを視界の端で捕らえた。


「シヴァ……」

「なんだよ。」

「さっきの……」

「ああ。あいつ……俺のことが嫌いなんだ。」

「そりゃあ、見れば分かるけどさ……」


 一連の行動を見た他の生徒たちは、何も言わない。

 それにどちらを気遣う様子もない。誰もが見て見ぬふりを貫いている。


「どうして?」


 一つ聞いてみた。


「どうして、ルフェル・リンドは君のことを嫌うんだろうか。」

「………」

「その反応……心当たりがあるんだね。」

「何でも良いだろ。授業が始まるぞ。」

「………」


 シヴァは服装を整え、筆記用具を手に取った。


「もしかして……君はもっと上の点数を取れたんじゃないのか。」

「……だったら?」

「………」


 試すように、ふざけた態度で笑う。


「君は特別なんだろう。君は優秀なんだろう。今、僕が君にしていることはお願いなんだ。だから、僕が君にこんな偉そうなことを言うだなんて不格好にもほどがあると言いたいのかもしれない。」


 自分の目線が上がっていく。


「僕は、君よりも年上で、ここでは馬鹿に馬鹿にされるくらいのスコアしか出せない。」


 周りの視線をいっきに集めた。


「っ!?お前……!」


 シヴァは驚いた。

 かつて、自分を襲おうとした男が目の前に現れ、同級生だと思っていた男が実は大人。つまりは、隠し事をしていたことに。


「でも、能力がある人間に出し惜しみされて、心の中で笑われるほど、僕は落ちぶれちゃいない。」


『僕にはアイアンを助ける権利がある。』



・アイアン視点


 数分前。寮にて。


 十人……いや、もっと居るな。


 お茶を啜りながら、窓から外を見る。

 風が木を揺らし、窓をガタガタ鳴らす。


 監獄であると錯覚するみたいに、壁が関係ないみたいに、視線が刺さる。

 どうやらバレてしまったらしい。


「さて……」


 剣を握り、足を叩いてドアを見る。

 階段を上って来る足音。正面からは三人。そして……屋根に五人。

 通りには……六人。

 集まって来る足音を数えるともっと居る。確実に狩りに来ているな。


 ドカン!


 ドアを突き破る爆発音。

 まさか、子供が住む場所を破壊するとは思わなかった。


 三人の男がぞろぞろと土足で上がり込んでくる。


「お茶でもしに来たのかな?」

「啜るのは生き血だけだ。」

「へぇ?誰の。」

「アイアン・ドール貴様のだ。」

「これはこれは……自己紹介の必要が無くて助かるよ。」

「どうやってここまで侵入してきたのかは知らんが、堪忍しろ。ここでおっぱじめたくない。」

「不可能な相談だ。確かに私らは侵犯を犯している。故に戦闘行為を享受する他ないが、我々に敵意はない。上官殿と話をさせて欲しい。」

「安心しろ。わたしがこの隊の長だ。」

「許してくれない?」

「ふっ……」


 男は手を上に挙げる。


 両脇の男二人が剣の柄を掴み屈んだ。

 すると、窓の外で火花が散る音がした。


「戦闘用意……撃て!!!!!」


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