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第二十九話

「第二十九話」


 剣がぶつかる。

 聞き慣れた鋼の音。

 感じ慣れた嫌悪感。

 聞き慣れた悪党の声。

 どれも新鮮味に欠ける。


 その腕力で剣を弾かれ、ボディが、がら空きになる。

 そこへ勢いよく蹴りが飛んでくる。

 勢いのまま腹に命中した蹴りによって、壁を破壊し、小屋の外へと出される。


「なんでだぁ?なんで、クリスを殺した?」

「さぁ。そんな奴はいちいち覚えてない。」

「クソガキが!!!!」


 鋭い突きが飛んでくる。

 反射で躱すが、わき腹をかすってしまう。


「っ!!」


 鈍い激痛。

 まだ、寝ぼけているのかもしれない。

 普段ならよけられた。

 それがどうして……。


 足元がふらつく。

 手足が痺れを訴える。


「安心しろ。簡単には殺さねぇ。お前に必要なのは反省と謝罪だ。それをこの場でして、あの世でクリスに土下座してこい。」


 痺れる手で剣を強く握り、相手の目を見る。

 予測する。次の動きを。


「おらあああああああああ」


 勢いよく飛び出してきて、一撃目を放ってくる。

 それを受け流し、反撃を行う。

 が、目で捉えているはずのこいつに当たらない。振った剣は虚空を切り裂いた。


「な……」


 振りぬいた剣に引っ張られて、前へよろめいてしまう。

 ふらふらと歩く。

 背中ががら空き。斬ってくれと言わんばかりの自分の行動に疑問を感じる。


 その背中に蹴りを貰った。

 威力を殺せるだけの体幹がなく、支えることが出来ないまま地面へとキスをする。


「うっ……」


 痛い。

 今までにないほどに体が重い。

 なんでだ……こんなやつ簡単に殺せるのに。


「なぁ。教えてくれよ。快楽殺人鬼って表現すれば良いのかぁ?」


 耳も遠くなってくる。

 何を話しているのか段々と捉えられない。


「なぁ。教えてくれよ。他人の人生を踏みにじった後の味をよぉ!!!」


 腹に激しい蹴りを食らう。

 目も霞んで、耳も遠く、手は剣が握れないほどに震えている。

 そんな無防備な状況での蹴り。

 それは深く食い込み、子供の骨を簡単に破壊した。


「ぐはっ!!!」


 血が口から飛び出る。

 雪が解けている。自分の口から出た血液の温度で雪が解かされているのか。

 それを眺めながら、何度も蹴りを食らう。

 何度も、何度も、何度も。

 痛覚がどこかへ散歩しているようだ。

 痛みが全くない。

 それどころか、どことなく居心地の良さを感じる。


「おい!!!興が乗ってきたところなのによぉ!!!!起きろよ!!!!」


 体に強い振動が走り続ける。

 だんだんと視界が遮られていく。

 目が閉じていっているのだ。


 これがガキの限界だ。

 どうしようもなく、無力に、その場で横たわることしかできなかった。

 これが最大限の抵抗。

 これしか、今の自分にできることはない。


「おい!おい!おい!!どうした!?こんなもんかよ!!!!」


 周囲がやけにうるさいな。

 誰か居るのだろうか。

 記憶が曖昧だ。

 俺は何をしていたのだろうか。


 そうだ。

 今は眠いんだ。

 時間になれば、母が起こしに来てくれる。

 そうに違いない。


 あれ?ははってなんだ?

 時間?いつのことを言っているんだ?

 あれ、ここは、どこだっけ、、、、

 なんでねている?どうして、こんなにも……………………………………………


 コロシテヤリタインダロウ。


 プツン。


 自分を繋いでいる何かが切れた音がした。

 その何かはとても大切だ。見えない器官ではある。しかし、とても大切だ。


「おい!!!!仕舞いか!!!!こんなんで許されるわけっ」


 血が噴き出る。

 それは俺のじゃない。


「は…………それ………俺の………足?」


 俺は手に足を持っていた。

 太ももからつま先にかけての部分。

 右足だろうか。


 そんなどうでもいい物は視界に入らない。

 そんなことよりも、違う方の手に持っているこれだ。

 なんだ。これ。なんでこんなにも魅力的な物に気が付かなかったんだ。

 光を反射して、鏡のように映す。

 極めつけはこの赤色だ。

 なんて綺麗なんだろう。

 でも、綺麗と言うには少し赤が足りない。

 もっと装飾しないと、そうだ、この男の赤色なんてどうだろうか。きっと、もっと綺麗になる。魅力的に光る。


 そうだ。そうしよう。

 これはしょうがない。だって、こんなにも魅力的なんだから。


「お前………誰だ……?」


 何か騒いでる。

 でも、関係ない。もっと綺麗な物を見たいんだ。


 その男の腕を斬る。


「うわあああああああああああ」


 うるさいな。

 でも、問題ない。

 だってすぐに終わるから。


 予想通りだ。

 なんて綺麗な赤色なんだろう。

 でも、足りない。

 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと綺麗にできる。

 俺ならこれ以上にないくらいに綺麗な作品を作れる。


 振り上げる。

 もう片方の腕も奪う。


 ほら!きれいじゃないか。

 でも、足りない。


 ぐさぐさと何度も剣を突き刺す。

 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと!

 全然足りない。

 こいつからはもう赤色を出せない。

 枯れたのか………残念だ。もっと出してくれれば綺麗になるのに。


 視線をずらすと、そこにはたくさんの人が居た。


「居るじゃないか。」


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