表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/274

第二百六十五話

「第二百六十五話」


・セリシア視点


「へぇ。」


 自己の複製である影をはめ込むことで無理やり体を動かす気か。理屈には合ってるな。だが、治癒にはほど遠いはずだ。

 プロが義手や義足で誤魔化すのとはわけが違う。

 ダメージは蓄積し、出血は止まらない。

 放っておいても死ぬな。


「厄介なのは……」


 あの後衛か。

 銃の扱いに長けすぎだ。一つ一つの攻撃が、まるで実験しているかのようだ。あれをやられ続けるのは面白くねぇな。

 だが、結界師じゃねぇ。カイゼルを殺して、あとでじっくり話でも聞きながら殺すってのも悪くねぇな。


「迷うなぁ~」

「よそ見するんじゃぁ……ねぇよ!!」


 カイゼルが突っ込んでくる。


「へぇ。」


 欠損部位を埋め合わせただけで、普通に動けるのか。

 以前よりもスピードが上がった。やはり、影に蛇を任せたのは自分よりも戦闘能力が高いからか。

 影を軸に動くことで無理やり身体能力を向上させた。だが、そんなゴールデンタイムは長く続かない。


「蛇ちゃん。あいつの首を持ってきて。」


 三匹の蛇がカイゼルに向かって一斉に走り出す。


 バァン!


 弾丸が目の横を通り過ぎる。


 またこれか。やはり、精度が高すぎるな。奴の弾丸。

 私が狼狽え、おかしな行動一つでもすれば頭を抜かれていた。

 自滅野郎は蛇に任せ、私は後衛をじっくりいたぶるとするか。


 歩き出そうとした時だった。


「っ……!!」


 しまった……ダメージを受けすぎた。

 受け身を取っていたとはいえ、接近戦で良いようにやられすぎたな。


 バァン!


 弾丸は太ももを貫通する。


「ちっ!

 蛇!!野郎の玉を取ってこい!!」

「やらすかよ!!」


 叫び散らすカイゼルの方を見ると、手足すべてが影に変わっていた。

 両腕で蛇の首を握る。とんでもない握力なのだけが分かる。


「こうすればよぉ……火も氷も吹けねぇわけだ。」

「っ……!!」

「そしてよぉ……三匹目がどうなるのか、知りたくねぇか?」


 二匹が捕まったことで三匹目には気合が入る。


「まさか……止めろ!!止まるんだ!!!」


 三匹目は躊躇なくカイゼルの脇腹をえぐり取った。

 かなりの激痛であるはずなのに、カイゼルは笑った。


「狩ったぞ……てめぇの下らねぇ芝居道具をよぉ!!!」


 カイゼルの脇腹を食いちぎった蛇が崩壊する。


「お前ッ!ふざけ」


 カチャリ。


「っ!!」


 銃を向けた男が私を指さすかのようだった。


「落ち着けよ。カイゼルが話してる。」

「理屈によぉ……合わねぇってんならこいつらもだよなぁ?」

「っ!!」

「羽もねぇこいつらが空を飛び、あり得ねぇ話だが火を吹きやがる。おかしなこと、だよなぁ?」

「………」

「神話の生物でも具現化して、操った気になってたかもしれんがなぁ……てめぇの理屈と、世間様の理屈は大分ちげぇんだよ。」


 カイゼルは一匹の蛇を離し、口に手を突っ込む。


「おかしいと思ったんだ。どうして武具の類が効かないのか。それこそがてめぇの『結界』だったとはな。」

「……しゃべるな。殺したくなる。」

「理屈の拒絶。それが『飛龍』の力だ。弾丸で体が傷つくという理屈を跳ね返し、蛇は空を飛べないという理屈を覆す。誰も火を錬成できないという理屈を破壊した。屁理屈を並べた……ガキの飯事よりもヒデェ話さ。」


 カイゼルが蛇の中の何かを壊すと、蛇は壊される。


「お前……」

「そして、まったくもって甚だしい話だが、てめぇはこいつらの弱点を知らねぇ。」

「………」

「知ってるわけねぇよなぁ?理屈、理屈、理屈を唱えるてめぇが従えるペットの原動力がなんであるのか……知らねぇわけだ。」

「………」

「屁理屈を唱える人間は正論を前に、名も名乗れない。」


「これが……蛇の正体だ。」


 カイゼルは残った蛇の口を両手で掴み、割いた。

 腹の中から出るのは、血でも臓器でもなかった。

 小さな、それはとても小さな蛇だった。


「でけぇ蛇が、殻しょって動いてたわけだ。空っぽの中にあるのは、小さな自分だ。自己の理論を唱えるときはでけぇ口を叩くが、相手に論破されれば小さくうずくまり、被害者ムーブをかましやがる。」

「……黙れ。」

「滑稽で仕方がねぇよ。」

「黙れ!!私は理屈で動いている!!誰かが適当なことを抜かし!!町のガキをたぶらかそうと何も言わねぇ!!だが!!私だけは真実を語る!!そのゴミみてぇな蛇は私のじゃねぇ!!私が言うんだから理屈に適っているに決まってる!!!」

「そうかよ。そりゃあ、後で論文にでもまとめな。その小せぇ脳みそに言語が詰まってるならな。」

「私の前で!!しゃしゃりでるんじゃぁねぇ!!!正しいのは私だ!!!」

「リバッチ。あんたは華を持つんだろ?」


 バァン!!


・リバッチ視点


「そりゃあな。」

「良かった。」


 カイゼルが背中から倒れる。


「カイゼル!!」


 カイゼルの下へと駆け寄り、肩を持つ。


「カイゼル!!カイゼル!!!」

「聞いてくれよ……オリヴァー……」

「お、オリヴァー……?」

「俺はさ……未来の俺になったんだ……一瞬だけだったけどな……」

「何言って……あ……」


 カイゼルの目から光が消えた。

 誰かに聞くまでもなかった。魂がこの世から消えたのだ。

 一気に体重が重くなる。そして、欠損部位から血があふれ出し、固まる。


「クソ……」


「ほんと……弱いなぁ。」


 声の主を知っている。


「なんでこんなのに姉さんとの時間をさぁ……割かなくちゃぁいけないのかなぁ……許せないなぁ……」

「………感傷に浸りたいんだ。」

「私はさぁ……姉さんが居るだけでいいのにさぁ……」


 影から体を出したのは


「アリエナ・ドリフト。」


 彼女だった。


「あはは、笑える。

 その顔……本当にむかつく。

 死ねばいいのに。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ