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第二百五十八話

「第二百五十八話」


 数日前。


・エレナ視点


「う~ん。」

「どうしましたか?今晩のおかずに不満でも?」

「おかず……おかず……?おかず……??」


 語尾を高めて疑問を投げかける。

 そして、支給してもらったレーションを頬張った。


「ねぇ。アキ君。」

「は、はい!」

「君ね。つい先ほど、皆さんお疲れでしょうから自分が晩御飯の支度をしてきますねと言ったね。」

「はい。言いました。」

「それで数分。おかしいと思ったんだ。数分だよ?数分。体感では十分も待ってない。だからおかしい。早すぎるんだよ。私はてっきり、焚火でも起こして、椅子でも用意してくれるのかと思ったわけさ。」

「は、はい。」

「いやぁ~立派だと思ったね。思った。一日中運転してくれているアキ君が一番疲れているだろうに、率先して動いてくれるなんて、なんてできた子なんだろうと思いもしたさ。」

「……はい。」

「呼ばれたから外に出たよ。そりゃあそうだよね。相手の行為を無下にすることなんてできない。でもさ。」


 目を擦って開く。


「これは……何かな。」


 簡易的な椅子もなく、焚火もない。

 極めつきは、晩御飯と言う名のレーションだった。レーションはこれで三日連続である。三日連続だと言う事は、九食はこれを食べているというわけでもある。


「やめろ。言うな。」


 アキの隣に座った主任が言葉を遮った。


「飯がまずくなるだろう。」

「飯?これを飯だと認識しているのかな?」

「………これは飯なんだ。」

「暗示しているじゃないか。」

「分かるか?これをまずいと言ってしまえば、俺らは餓死するんだぞ。」

「追い込まれているし、これ以外に道はないと分かっているんだけど、分かる?受け入れられないものってあるんだよ。」


 主任は思い切り肩を落とす。


「はぁ……あまりうるさくするなよ……俺はこれを飯だと思い込んでんだよ。」

「じゃあ、本音は?」

「犬の餌。」

「主任君のご飯じゃないか。」

「犬って言いたいのか?」

「ごめんごめん。そんな大層な者じゃないよね。」

「違う。そうじゃない。近頃の親ってのは否定文を教えてないのか?」

「すみません……キャンプとかも碌にしたことが無いので……」

「いや、アキ。お前は悪くないぞ。仮面の馬鹿が悪い。」

「ごめんごめん。場を盛り上げようとしてさ。」

「ノアはどうした?」

「車で寝ているさ。」


 車の方をそっと見た。

 やはり、相当に体が傷ついているのか、ほぼ一日寝ている。起きても、水を飲むとか、少しご飯を食べるだけだとかそういうレベルの話だった。


「ノアが居ればこの馬鹿は大人しいのにな。」

「君ね。意外に整った顔だと形容したじゃないか。」

「意外にな。意外に。そして、社交辞令ってもんを知らんのか。」

「知らない。」

「うるさい。」

「お二人は本当に仲が良いですね。」

「こいつと?勘弁してくれ。」

「否定が速すぎないかな?」

「大体だな。なんでノアと一緒に寝たいからって俺とアキが外で寝るんだよ。昨日は凍死するかと思ったぞ。」

「か弱い女の子を守りたいってのは男の嵯峨だと思ってね。」

「女の子?はは、おもろ。」

「殺すぞ。」


 主任はすばやくレーションをかきこみ、この場から立ち去ろうとする。


「ちょっと待ちなよ。」

「ん?」


 立ち上がった主任を止め、目を見る。

 すると、何かを察してくれたらしく、座りなおした。


「アキ。」

「なんですか?」

「やっぱり寒いからさ、燃えそうなものをとって来てくれるか?」

「燃えそうなものですか?」

「ああ。できるだけ遠くに行った方が良いな。その方が良く取れそうだ。」

「……分かりました。」


 アキは食べかけのレーションを持ってどこかへ歩いていく。

 主任に急かされ、アキの背中はどんどん小さくなった。


「で?話って?」


 主任が開口一番聞いた。


「プランBだ。」

「……は?」

「プランBにいこう。」

「プランB……?」


 主任は顎に手を持っていこうとしたが、その手を止める。迷子になった手を膝の上に置いて


「あ、ああ。プランBね。」


 合点がいったようにうなずいた。


「じゃあ、そう言うことだから。」


 私は立ち上がり主任に背を向ける。


「待て。」


 そんな私を主任は止め、座れとジェスチャーしてきた。


「何かな?」


 座ることも無く、立ったまま会話をする。もちろん、顔も見ない。背を向たままの姿勢で。


「作戦が変わったってことは、指揮官が変わっても良いよな。」

「え?ま、まぁ、別に良いけど。」


 その意味がまったくと言ってもいいほど分からなかった。


「じゃあ、指揮官として命令するぞ。」

「………」

「今日はノアと寝とけ。」

「君は私がしようとしていることが分かるのかい?」

「お前から見れば小僧だが、これでも四十年は生きてるんだ。」

「……そう。」

「アキには俺から言っておく。車の近くには居ないからな。」

「じゃあ、ついでに伝言も良いかな?」

「………もう会わないつもりか?」

「申し訳ないね。ちょっと体の不調でね。」

「……なんだ。」

「アキ君にはアイアン・ドールの援護に」

「違う。不調ってのはなんだ。」

「……察してくれ。でないと、君は私に殺される。」

「……分かった。」

「じゃあ、元気でね。ノアと言葉を交わしたら、私は出るよ。」

「訃報はノアに言わないからな。」

「あら、残念。アリエナの時みたいに泣いてくれないのかな?」

「泣かない。」

「だから、否定が早いって。」

「だから、絶対帰ってこい。」

「もしさ……もし、次会ったときに、私が私でないのなら、君はどうする?」

「ノアに会わせないよう、全力を尽くす。」

「……【フロストホロウ】で君に会えてよかった。君を誘っておいて良かった。」


 主任の顔を見ずに、車の中に入り、ノアに抱き着いた。


「っ!!ってなんだ。エレナか。」

「そう。私。うれしかった?」

「そうだな。うれしかった。」

「まだ眠い?」

「眠い。」

「枕をあげよう。頭浮かして。」


 ノアが素直に言葉に従う。

 頭を上げたところに自分の腕を通し、頭を乗せさせる。


「暖かい?」

「完璧だ。」

「良かった。」


 ノアが自分の胸に体重を乗せたので、私もノアの後頭部に頭を乗せ、囁いた。


「私たち……わかれようか。」

「……?ああ、二手にか?」

「そうだね。」

「次はいつ会える?」

「なぁに?甘えん坊だなぁ。」

「しょうがないだろ。怪我人なんだからな。」

「そうだね。そうだったね。」


 額にキスをしてから、二人で眠った。いや、眠ったふりをした。

 ノアが完全に眠るのはすぐだったからだ。

 そっと腕を引き、車から出た。ノアの顔を見ずに。


 車を出ると、片づけをしていた主任と目が合った。


「お前……今日は」


『眠らせなさい。』


 主任が背中から倒れる。

 アキが帰ってきたら介抱してくれるだろう。


「じゃあね。楽しかったよ。」


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