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第二百五十一話

「第二百五十一話」


・ノア視点


 まだ、『白紙』はすべて揃ってる。

 一撃一撃がそこまで重くないんだ。

 奴は、右手を負傷してる。そこにつけこむしかない。


 腕を後ろへと振り、壁を崩壊させる。

 できるだけ大きな破片を掴み、投擲する。二三個ほどの瓦礫を投げた。

 投げられた瓦礫はナイアラの目の前で砕け、やはり「バリン!」という音を立てる。

 瓦礫は散らばり、死角が生まれる。


「すごい馬鹿力だこと。そんなに接近したいならどうぞ?」


 蹴りを首に向かって行った。

 直前で止められ、届かない。


「ダメ。全然薄い。」


 ナイアラも足を振り上げる。

 攻撃を同時に行えば、『結界』は反応しないのではないか、そう考えた。

 蹴りに対して、頭突きで対応する。

 蹴りの直前で頭上から「バリン!」という音だけが鳴り、肩に蹴りが突き刺さった。


「っ!!」


 一歩退こうとするが、ナイアラが開いた距離を詰めてくる。


「甘い。」

「ちっ!」


 右腕の拳も、蹴りも、すべてが無駄だった。

 『白紙』で強化された身体能力で連撃を行っても、一向に前に進めなかった。

 ナイアラが攻撃のモーションに入ったので、地面を蹴とばして一階へと逃げる。


「あらあら……敗走?」

「いいや。作戦と呼んで欲しいな。」

「そうなんだ。どんな手品を見せてくれるの?」

「この建物……俺は計算が苦手でな。申し訳ないが、重さは自分で考えてくれ。」

「重さ?」

「ああ。例えば屋根に圧死させられることを想像してな。」

「なるほど。薄っぺらい。」

「主任!!!避難だ!!!!」


 屋根のあるところまで跳躍する。

 触れれるところまで行って、屋根を掴み、思い切り引っ張った。

 元々崩壊寸前だったのか、屋根は簡単に落ちた。


 周囲に騒音が鳴り響き、瓦礫の欠片は飛んでいく。

 道行く人が誰も居ないのが救いだろう。

 昼間にこれをやったなら被害は甚大であっただろう。


「ごほっ……ごほっ……やったなぁ……お前。」

「必要経費だ。テロの金でまた建てりゃ良い。」


 主任と横並びになって倒壊をした建物を眺めた。


「さっきの子は?」

「生きてる。だが、狙い通りだ。」

「そうですか。替えの剣は居るか?」

「いや、素手で十分だ。」


 主任を置いて、ナイアラが立っている場所まで移動する。


「ほんと薄っぺらい。」

「そうか。薄ら笑いをやめた方が良いぞ。」

「何?」

「俺の勝ちだ。」


 ナイアラまでの距離を一気に詰める。

 そして、渾身の拳を食らわせる。


「ほら、うすっぺ」


 続いての蹴りは、ナイアラの首をへし折り、十メートルほど吹き飛ばした。


「ほんと軽い体だな。鍛えた方が良いぞ。」


 ナイアラが吹き飛んで行った先まで歩いて向かう。

 すぐそこで腹に柱が突き刺さったナイアラが血を出して倒れていた。


「っ………っ……」

「しゃべる元気もないだろ。ゆっくりして行けよ。」


 ナイアラの防御には限度があった。耐久的な面ではなく、数としての面で。

 恐らく、その時産まれた感情の数だけ氷の壁を形成することが出来るのが『結界』なのだろう。

 ストックされた氷を建物の崩壊で壊し、最後はとどめを刺しに行く。

 彼女自身、経験が少なかったんだろう。自分の『結界』について無知過ぎた。


 氷の壁に囲まれていたのは、強力な『結界』に包まれたただの少女だったわけだ。氷に包まれたのは、本音でも本性でもなく、感情と言う方便に振り回されたお気楽な一人の人間だった。


「他の結界師が来る前に逃げるぞ。」


 カイゼルを担いだ主任が走って来た。


「死体の回収はどうする?」

「………やめておこう。」


 主任は静かに否定する。


「そう……だな。」

「花でも持ってくれば良かった。」

「……もう少し急げばよかった。」

「……早く行くぞ。時間が無い。」


 主任に手を握られ、進まされる。


「な、に……コレ……」


 後ろから違う女性の声が聞こえた。

 主任と一緒に振り返ると、そこには、十五歳ほどの女が立っていた。


「なに……してるの……?」


 驚愕をして、言葉を失っているのか、言葉が聞こえなかった。


「な、はぁ……?」


 目の前の女は敵なのか、それとも通りすがりの一般人なのか。

 どちらなのか判断がつかなかった。


「カイゼル?」


 主任の背中に乗ったカイゼルが目を醒ました。


・カイゼル視点


 霞んだ目を開けると、いつもの明るいイリスとは逆転した脳のキャパシティーを大幅にオーバーした理解に苦しんでいる彼女の姿があった。

 リバッチさんに背負われているらしかった。

 ノア君も来ている。二人が助けてくれたらしいのだ。


 二人に口を動かしてお願いしてみる。


「ふりかえ……らずに……いきましょう……」


 俺が起きたことに驚いたのか、指図を出してきたことに驚いたのか。

 二人は目を合わせた。

 そして、ノア君は殺気を治め、リバッチさんは黙って歩く。


「こ、答えなさいよ!!!何してるの!!!」


 誰もしゃべらず、振り返らない。

 彼らも理解してくれたらしい。この場において、誰が正義で誰が悪であるのかを。

 無論、こちらが悪だった。


「みんなの希望に……何してるの!!!」


 イリスが激昂しながら、泣きながら、石を投げてきた。

 それがリバッチさんの頭に当たるが、彼は動じなかった。

 ノア君も何も言わない。


 遂にイリスは泣き崩れ、石が飛んでこなくなる。


「お二人とも……ありがとうございます……」


 二人は終始無言だった。


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