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第二百四十七話

「第二百四十七話」


・エメット視点


 新調したばかりの銃を取り出し、磨く。


「なんだって、新品が一番良いに決まってる。」


 弾を一発だけ詰める。


「例えば……店先で気に入った服があったとするだろう。それが、高額の商品だったりする。月の給料を上回るほどに。しかし、どうしてもそれが欲しい。そのために人は懸命に働くことだろう。二か月が経過し、三か月が経過する。四か月でもまだ買えない。五か月目でようやくまとまった金ができる。でも、惜しむ。朝から晩まで働いてようやく貯まったお金を出し惜しむんだ。本当に欲しかったのか疑問を持つようになる。では、どうするか。お店にもう一度行くんだ。本当に価値のある物だったのか、確認するために。生地を触り、デザインを比べ、店頭で一時間もその服を眺める。そして、いよいよ買ってしまうんだ。買ったその日は、クローゼットにも仕舞わず、部屋に飾るだろう。家具のようにね。次の日にもまだ着ない。その次も、その次も、その次も。ようやく見慣れたときに初めて袖を通す。やはり良い物だと再認識する。丁寧に洗濯し、干すのにだって注意する。そして、初めてクローゼットに仕舞うんだ。その日を境に頻繁に着るようになる。クローゼットにも当然のように仕舞うようになる。するとどうだ?ある日見た時、その服の魅力がまったく分からなくなる。どうして、その服を買ったのか。酔っぱらっていたのか、錯綜のし過ぎではないのかってな。結局店先に並んでいるときが一番魅力的に見えたのさ。誰かが買った中古品に人間は興味無いのさ。誰にも触れられない最高峰の逸品だから人は金を惜しまない。」

「なかなか……面白れぇ遺言じゃねぇか。」

「この条件で人間を見ると面白くてね。じゃあ、人間は母親の胎内に居る時が一番魅力的なんじゃないかって話さ。だから、魅力を失ったゴミ共に制裁を与える。これがわたしの『結界』だ。」


 ミミズのように地面に這いつくばったゴミを見る。

 血だらけで、目も見えていないようなゴミを。


「君は空に帰ろうとしているんだ。立派な姿勢だ。」


 『促進』は相手の症状を進行させる。

 こいつの体は見るからに不健康だ。これに間違いはないだろう。

 そして、あの目……薬物中毒者だな。アホなやつだ。体を動かすために薬をキメて向かってくるとは。

 体の中身がどうなっているのか、知る術はないが……こいつはもう歩けない。


 お気楽に弾丸を放つ。頭を狙って。

 『促進』がある限り、弾丸がどこに当たろうが関係なかった。


 オリヴァーが体を捻って避けたので、弾丸は肩に命中した。

 たちまち肩は壊死し、変色する。

 これで動かすことなどできないだろう。


「お前……良い色してんな。」

「は……?っ!?」


 横腹に大きな穴が空く。


「ぐふっ……!?」


 野郎!!

 もう、十分な思考を持ち合わせてるわけがない!!

 薬物中毒者が対象の場合、禁断症状で何も考えられなくなるはずだ!!

 それなのに……こいつはッ!!わたしを敵として、殺すべき敵として認識しているのか!?


 後ろによろめき、新品の銃を取り出す。


「なっ!?」


 なんとオリヴァーは立ち上がり、わたしに向かって突進してきた。

 綺麗な肘打ちを顔面に食らう。


「っ!!」


 次に髪の毛を掴まれ、ぐっと下に引きせせられる。

 顔面に膝蹴りを食らい、鼻が折れる音を聞く。

 踵で耳の辺りを蹴られ、二メートルほど飛ぶ。


「『結界・月虹』」


 右腕と左脚が無くなり、地面にひれ伏す。


「良い気になってよぉ……話すのも悪かねぇが……結局はよぉ……力量が物を言うんだぜッ!!!」


 オリヴァーが剣を向けた瞬間に、体がはじけ飛んだ。


 中古にも……宿ってるじゃないか。


・オリヴァー視点


 次の得物は………


「次はどいつだ!?そこか!!!!!」


 影が見えたので攻撃する。


「そっちか!!!!」


 攻撃をする。


「こっちもか!?」


 攻撃をする。


「あ……あはははははっはははっは!!!!!!」


 次は……次は……次……つぎ……つ……


「なんだ!?なんなんだよ!!!!!」


 痛ぇ………ああ……地面の固さか。


「良いぜ……やってやるよ!!!!!」


 エリ……オット………


「こいよ!!!!向かって来いよ!!!!」


 カイ……ゼル……


「殺してやる!!!!!!!」


 ヴァルター………レオナルト……


「ビビってんじゃねぇよ!!!!!」


 ガルド……ローク……フェリクス……アルマン……


「そんなに怖いかよ!!!!!」


 イリーナ……マリエッタ……リサンドラ……ノアラ……アルトリウス……


「殺しに来い!!!!俺がここに居るってのによぉ!!!!!」


 オスカー……ユリウス……セレナ……イザベラ……ネリア……


「リヴィア……フィオレンツァ……あんたの……ために……戦ったんだ……」


「真っ白な……手のあんたの……ために……よごした……じぶんの……手を……」


「わらうなよ………おれは……しあわせだった……ともだちが……こんなにたくさん……よかった……」


「あ~あ……奇麗だな」


 月夜が見えるこの場所で、オリヴァーの目の前は虹色に変色した。

 オーバードーズの結果、彼の色盲が悪化したのだった。


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