表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/298

第二百四十五話

「第二百四十五話」


・カイゼル視点


 放たれた弾丸は腹の中で暴れた。血を吐くよりも先に、弾丸が背中から出てきた。

 床に穴ができるのと同時に、吐血した。

 それは、赤色と呼ぶよりも、黄色に近かった。体が限界に達していたことを意味しているだろう。


「終いだ。ボケ。」


 トムは近づくことも無く、距離を保ったままに、銃を向ける。

 続けての発砲は、足に命中する。次は肩に。次は横腹に。次は脹脛に。

 遊ぶように乱射した。

 毒のおかげか、いやに痛覚が反応しなかった。それは、恐ろしいほどに。


 自分の呼吸が微かに聞こえる。ボリュームを下げ過ぎたテレビのように聞き取りづらい。

 息づかいを聞き入ろうと目を閉じる。何も感じない無の空間の出来上がりだった。


「ここまで離れれば問題ないんだろう?君の『結界』、確かに強力だが、敵じゃあない。室内戦であれば勝てると踏んだんだろうが、それはこっちも一緒さぁ。蝶の群れは密集する。これだけ狭い室内なら、どこへ逃げようとも追跡できるってもんだ。」

「ヒュー……ヒュー……」

「虫の息だ。トドメは刺さない。わたしはあんたに興味が無いからなぁ。」


・トム視点


 わたしとしたことが、興味の無い男に熱くなるだなんて。みっともない姿を晒してしまったものだ。

 恥ずべき行動は、挽回しなくてはならない。他に侵入者は二人居たな。

 わたしが始末して、セレーネさんに報告だ。


「っ!?」


 後ろから急にぶたれた。

 咄嗟にガードしてそれを防いだが、バランスを崩してしまう。


「しまっ」


 次は蹴りを放ってきた。

 腹に入り、骨を砕かれる。防ぐことが出来ず、壁にぶつかる。


「……き、貴様!!」


 カイゼルは死んだはず……『結界』がまだ継続してやがるのか!?


 恐る恐る視界を上に上げる。


「なっ……」


 カイゼルを背中にくくりつけた影が立っていた。


 野郎……リーチという欠点をこの状況で……捨て身で対策してきやがった!!

 本人は瀕死で動けん。絶対にだ。先ほどの影の動き……明らかに怪我人の動きじゃない。

 影は本人がどれほど負傷して居ようと関係ないのか?

 い、いや……それとも、ありえない話だが……野郎死んでも俺を殺す気か。根性だけで、死の極地を歩いてやがる!!


「はは……悪くねぇ……いやぁ?面白れぇ!!!」


 やってやる。

 本人を殺せば流石に動けまい。


 接近戦は圧倒的。

 射程は無いに等しい。

 距離を取り、蝶の毒で殺す。


「『結界・胡蝶』」


 蝶で部屋全体を覆い隠す。

 これで身動きは簡単に取れねぇ!


 この隙に部屋を脱して、あいつが苦しむ様を見物させてもらうぜ。


 出入り口へと近づいた時だった。


「なっ!?」


 影が思い切り突進をしてきた。

 計画性も何もない、ただの拳の突きだった。

 間一髪のところで避けるが、追撃は避けられなかった。

 顎を肘で打たれ、よろめき、手刀で右肩が外れる。

 蹴りを腹に食らい、壁まで戻された。壁に激突し、嘔吐する。


「うっ……クソ……」


 この蝶の群れの中を……見えてやがるのか!?い、いや。勘に違いない。火事場の馬鹿力ってやつか。最期に見せるのは、人間の本性ってな。

 だが、あいつも相当限界だぜ。影の背中から出る血の量が明らかに減ってやがる。

 そら……あと二秒もすれば影も消滅するに決まってる。


 次の攻撃を防げば、俺の勝ちだ。


 銃を一発放ち、影がそれを避け、突進してくる。


 来た。やはり、ワンパターンだ!!

 間違いない!!こいつは目が見えてねぇ!!感覚だけで戦ってやがる!!


 影が目と鼻の先に来たときに、しゃがんで一発目を避けた。

 そして、胸元からもう一本の銃を取り出し、影の胸に銃口を突きつけ、入っている弾丸をすべて叩き込んだ。

 影に八個の穴ができる。


 やはり!!こいつには毒とかは効かんが、物理攻撃は効く!!

 これで俺の勝ちだ!!


 影は後ろへと倒れる。

 その姿を目に焼き付け、勝利を確信


「ぐはっ……」


 腹に異物が混じったような違和感を覚えた。

 下を見ると、剣が突き刺さり、臓物が地面に転がっていた。


「は……?」


 後ろへ振り向くと、死んだはずのカイゼルが俺に剣を突き立てていた。


「お、おま……」


転がった影を見ると、そこには何も無かった。

 影は消滅し、消えたのは分かる。背中に乗っていたはずの、カイゼルがどうして俺の後ろに居るんだ……?


「わ、悪ぃな……『影牢』の背中に俺が乗ってると思ったろ……違ぇんだよな。お前が……蝶をいっぱい出すのにきっかけを作っただけだ。自分の視界もままならん位にな。」

「かはっ……」

「あとは、影に時間を稼がせ、俺が隙を見つけてお前を殺すって寸法だ。おかげで……全身毒まみれで……朝まで生きられんがな。」

「………」


 顔面から崩れ落ちる。


「どうして……この視界の中を……影が迷わずお前を捉えられたか理由が気にならんかったのか?」

「………足音か。」

「そうだ……俺が耳を地面に付けて移動してたからな……位置くらいまる分かりなんだよ……」

「疑問を疑問のままで放っておく……関心のない俺らしい最期ってわけか。」


 目を閉じて、最期の蝶の羽を見る。


「お前ら……こんなにも……汚かったんだな……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ