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第二百三十九話

「第二百三十九話」


 依然変わりなく、悪天候だった。

 六度目の『知足』。五度も同じことを繰り返しているのだ。全員が理解していたに違いない。

 ドゥームに対抗するのは不可能であることを。


 一番最初の位置から始める。

 全員が目を見開き、自分の役割にのみ集中する。


 最初に動くのはやはり、ドゥームだった。

 雷を鳴らし、降り注がせる。自身は目に見えるほど帯電し、放電する。その速度は目で追うにはあまりに早く、観測しようものなら死んでしまう。


 ほぼ、同時に動くのは、カイゼルとベリンガー、そしてオリヴァーだった。


「『結界・月虹』」


 オリヴァーは無茶苦茶に剣を振り回し、ドゥームに近づかせない。


「『結界・影牢』」


 カイゼルは、影を実体化させ、隙を狙い走り回る。


「『結界・満足』」


 ベリンガーは確かな、少量のダメージをドゥームに与え続け、翻弄する。


 三人がギデオンを守るようにして、動く。

 いよいよ作戦らしくなってきた四人に対して、ドゥームは一人ずつ殺して回ることに決めたらしい。


 最初にカイゼルを狙う。これまでも、カイゼルは何かと工夫して邪魔をすることが多かったので、一番厄介だと考えた。

 走り回るカイゼルの背中を見つけ、追いかける。


 オリヴァーの攻撃を避けながら、カイゼルに追いついた。


 ドゥームがにやりと笑ったときに、右手の中指と薬指が折れる。ベリンガーの『満足』が発動したのだ。

 ドゥームもこれに対応する。剣を素早く捨て、カイゼルに拳を突き立てる。しかし、カイゼルは間一髪のところで避け、ドゥームの肩を突き刺した。

 ドゥームは刀身を握り、電流を流すが、カイゼルは既に剣を手放していた。そして、次に放電が来ることも分かっていたので、自分を影に引っ張らせ、後ろに退き、影を立てにして致命傷を避けた。

 カイゼルが蹴りで牽制するが、ドゥームは右腕で簡単に止め、逆に蹴り返した。カイゼルは飛んでいく。しかし、浅かった。骨が数本折れた程度だっただろう。

 ドゥーム自身もそれに気が付いていたので、得意の素早さでとどめを刺そうとするが、真横から鎌が飛んできたので行けなかった。


 ベリンガーはドゥームの満足げな顔を見逃さなかった。次に、ドゥームの胸に十字の切り傷ができる。

 吐血し、よろめくが、その目は完全にベリンガーを捉えて、殺し方を考えている最中だった。


 雷をど派手に落とした。

 周囲を包み込む自然界の光は、ベリンガーを一瞬だけひるませた。その一瞬の隙は、攻撃するに容易な時間だった。

 ドゥームがベリンガーの胸に飛び込み、速度から裏付けされた破壊力を誇るパンチを繰り出す。

 しかし、その左腕も飛ぶ。


 オリヴァーが狙っていたのだ。左肩から先が無くなり、大量に出血する。

 ベリンガーは恐怖のあまり失神し、泡を吹きながら倒れる。散々死んだ後に、もう一度あの苦痛を耐えうることが彼にはできなかった。


 ベリンガーを視界から外し、次にオリヴァーへと標的を変える。

 一歩踏み出し、オリヴァーの目前まで近づいた。

 蹴りで胴体を破壊しようとするが、カイゼルの影が足に飛びつき、威力を殺した。


 しかし、ドゥームには余裕があった。一人でも殺せば、『知足』を使わざるを得ないと考えていたからである。

 最終的に、失神したベリンガーでも殺せばこいつらは振り出しに戻る。そう考えていたのだった。

 遠慮なく、足にまとわりついた影を放電で消滅させ、遠くに離れたオリヴァーめがけて突進した。

 オリヴァーは迎え撃つ構えを取り、剣を振った。

 縦に大きく振る。

 ドゥームに当たるはずもなかった。しかし、敢えて外し、ドゥームがわずかに姿勢を崩すことこそ狙いだった。

 小さく一回だけ振る。

 すると、右足が飛んでいく。ドゥームは不意な出来事に驚き、転んでしまう。


 流石に、無理かと思い、ベリンガーが倒れている辺りに雷を落とす。

 これでやり直すしかない。そう考えていた。

 しかし、動けないベリンガーをカイゼルが運んでいたのだ。


 六回目。全員が五回死んだところで彼らはドゥームの『天罰』にようやっと対抗することが出来た。


 雷の音が小さくなっていく。

 誰もが勝ったと思った。


「悪い……負けそうだ……代わってくれ。」


『運命』


 ドゥームの顔は別人のように柔らかくなり、好青年に変わり果てた。


 カイゼルとベリンガーが居るところへギデオンが駆けつけようとした、その時だった。彼は三歩歩いたのだ。

 肉体はこの世から、存在していたことも疑わしいほど、清々しく消え去った。


 その光景を見た誰もが、理解できなかった。

 理解を拒んだ。奴の『結界』は天候の操作ではなかったのかと同時に思った。


 疾うに雲は消え、雨は止み、雷もない。それなのに、彼は遠くのギデオンをいとも簡単に消した。それが納得できなかった。


 しかし、オリヴァーだけは違った。

 勝つことのみに固執し、執着した。


「お前が雷をアホみたいに落としたからよぉ……そこら辺がぎらぎらしてやがるッ!!」


 鏡の部屋に閉じ込められたような砂場は、オリヴァーの処刑場と変わった。


「『結界・月虹』」


 タナトス・ドゥームもギデオン同様、消え去った。彼とは違い、大量の血液を残した状態で。


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