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第二十話

「第二十話」


「今日の顧客は山賊さん。」

「あ、そう。」


 目の前に置かれた山盛りのご飯をかきこむ。

 昨日は目の前の馬鹿のせいで満腹にできなかった。そのため、今、全力でご飯を食べる。

 お腹が空いていないのか、エレナはあまり食べていない。

 飲み物だけだ。


「ちょっとの間、野宿になりそう。」

「あ、そう。」

「街のご飯も数日は食べられないよ。」

「あ、そう。」

「少し、遠くの方へ行かなくてはいけないからね。」

「あ、そう。」

「ねぇ。」


 面白くないと言わんばかりの不満な声。

 小言が飛んできそうな声色。

 面倒臭いと思いつつも、聞き返す。


「なんだ。」

「もっとバリエーション増やせないの?いつも、私が自我語りしているみたいじゃん。」

「実際そうだろ。そして、ご飯中に話しかけるな。」

「あら、ほっぺにご飯ついてる。」


 エレナは手を伸ばし、ほっぺについたご飯を取る。

 それを自分の口に運んだ。

 それを静かに見守った。

 こいつは俺の母親か?


「良い?野宿だよ?野宿。」

「聞いた。」

「そっか。ノアは慣れてるのか。」

「ああ。傭兵みたいな頃にほぼ毎日な。」

「じゃあ、頼りになるね。」

「お前だってやったことあるだろ。」

「え~エレナ分かんなぁい。」


 顔に手を近づけて謎のポーズをとる。

 寒気がするような感覚。いい歳のババアが何やってんだ。

 純粋に湧き出た感想を言わせてもらおう。


「きも。」

「うん。泣くよ?」


 食事を終え、外へと出る。

 この寒さなら野宿は堪えるな。

 朝でこの気温だ。夜になると、いつ凍死してもおかしくない気温へと落ちる。

 そのため、ルートにある洞窟等で睡眠をとらなくてはいけない。

 無論、ルートなど教えてもらってない。こいつには物事を共有するという考えがないのだ。


「じゃあ、行こうか。」

「おい。」

「なに?」

「この軽装でか?」

「そのつもりだよ。」


 これはまずい。

 こいつはこの地方の夜の過酷さを知らない。

 普通の服で行こうとしている。

 これは早死にする。


「一回帰って、ある程度の食料と服を取って来るぞ。」

「そんな時間はなーい!」

「おい!」


 エレナは忠告を無視して歩き出した。

 食料もなければ、厚手の服は今着ている分しかない。

 こんなのでは夜は越せない。

 断定できる。

 死にに行っているようなものだ。


「分かった。ノアは寒いんだね。」


 そう一言こぼすと、手を握ってきた。

 最近は抵抗するのも面倒になってきたので、素直に従う。

 それがうれしいのか、鼻歌を歌いだす。


「今日はどこまで行けるかな~。」

「行ったことあるのか?」

「もちろん。何回か行っているよ。」

「じゃあ、この軽装がおかしいって分かるだろ。」

「うん。夜は抱き合って寝ないとね。」

「俺は死んでも、別の場所で寝る。」

「大丈夫!死ぬ直前で助けてあげるから。意識のないノアを看病できるってことでしょ?」

「きしょい。」

「君ね。」


 ため息をつくように話す。


「最近口が達者すぎるよ。」

「お前が訳の分からん行動するからだろ。」

「分からなくはないでしょ。ずっとこうして、行動しているわけだし。」


 確かにこいつと組んでからそこそこの日数が経過している。

 それにも関わらず、俺たちはお互いのことをほとんど知らない。

 こういう関係はどうなんだろうか。俺は気にしないが、エレナはどうなんだろうか。


「ん~?何か聞きたげだね。」

「別に。」

「言ってみなよ。なんでも答えてあげるよ。」

「どうせ、本当じゃない答えしか返ってこない。」

「分かった。今回は真剣に答えるよ。」


 言っていることと表情が一致していない。

 その表情は誰かを化かす狐のようだ。


「いい。」

「早くしないと、今晩のご飯抜きにするよ。」

「俺は自分で獲れる。」

「じゃあ、今晩は一緒に寝ないよ。」

「願ったりだ。」

「分かった。本当に答えるよ。」


 少しその言葉を信じてみることにした。

 なんてことのない質問ではなく、こいつの根本を知るためのいい機会だ。


「生まれは?」

「あ~………」

「どうした。」

「いや、別に。そっち方面の質問かと思ってね。」

「は?」

「もっと力のことを聞かれると思ったから。」

「ああ。後で聞く。」

「あ、もしかして結構質問ある?」

「俺はお前のことを顔くらいしか知らん。そりゃ、突き詰めれば質問なんて無限にあるだろ。」

「それもそうだね。」

「逆にお前は知りたくないのか。」

「ノアのこと?」

「ああ。」

「大丈夫。ほとんど知ってるから。」

「きもい。」

「酷い。」


 なんでもお見通しの彼女を、誰か把握してあげているのだろうか。

 一方的に知っているだけの彼女の理解者は誰が担っているのだろうか。


「生まれは【ニクスポート】の端っこだよ。」

「……ほんとだろうな。」


 これが一番厄介なところだ。

 嘘か本当か見分ける手段がない。


「だから、嘘は言わないよ。だから、安心して。」


 こんなにも安心できないセリフは他にない。

 正解を知っている第三者が居なければ、信用できない。

 しかし、何か得ていけば、こいつの力の根本を理解できるかもしれない。

 故に続けてみる。


「家名は。」

「そんなのないよ。田舎だからね。」

「【ニクスポート】は田舎じゃないだろ。」

「田舎だったんだよ。昔はね。」


 なんだかしみじみとした言い方だった。

 【ニクスポート】には行ったことがない。しかし、こんなところとは別に、支配者である五家があるはずだ。

 そうなれば、少しくらい栄えていてもおかしくない。


「私からも質問良い?」

「なぜだ。」

「質問攻めはよくないと思わない?」

「思わない。」

「思ってよ。それに、私だって君のすべてを知っているわけではないんだよ。」


 そうか。

 こいつも一人の人間。情報を追うのにだって限界がある。

 俺のすべてを知っているわけではないのか。


 では質問に答えよう。

 ある程度のレベルのだが。


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