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番外編:川下先輩視点4:俺は引きこもりになる……。違う。少し休んでいるだけだ……!

 俺は結局一睡もできなかった。寝不足でだるいから学校は休んだ。


 進路は決まってるし、もともと登校する意味もほとんどないしな。


 スマホを起動すると、Xitterは煽りカスの陰キャがウザいから、ネットニュースを見ることにした。


「なんだこれ!」


 大手ニュースサイトAhoo!を見て、俺は思わず叫んでしまった。


 震える手でタイトルをタップし、記事の詳細を読む。


 ――VTuber事務所のソングステージは、ネットで炎上中の高校配信部VTuberのぱじめちゃんについて、所属契約を否定。


「ど、どういうことだ?」


 いや、焦るな。別に、何もおかしくない。


 俺は新デザインに転生するんだから、ぱじめちゃんが所属しないのは、あたりまえのことだよな?


 別に、俺と契約しないってわけじゃないよな?


「ソングステージ関係者によるとぱじめちゃんとソングステージは契約を結んでいないし、仮に中の人と専属契約していたとしても、今回の騒動で契約は破棄でしょう……だと?」


 適当なこと書きやがって。どうせ関係者に取材してないだろ。


「VTuber業界関係者によると『チャンネル登録者数日本国内一位で業界トップの砲塔メロンが身バレのリスクを冒してまで少年の無罪を主張する以上、真実性は極めて高いと言えるでしょう』……。笑わせんな。何が業界関係者だよ!」


 ふざけやがって。アクセス数を稼ぎたいだけのニュースサイトがいい加減な記事を載せやがって!


 ドンドンドン!


 ……ッ!


 いきなりドアをノックされた。


「はじめ。ちょっといい?」


「なんだよ、クソババア」


「学校から電話がかかってきて」


「はあ?」


「えっと、お母さんよく分からないんだけど、インターネットの書き込みの件で、高校に警察から連絡が来たとか……。ねえ、はじめ、何かしたの?」


「……ッ。何もしてねえよ! 関係ねえよ!」


「あっ。待って。また電話。……もしもし。はい。川下です。はい。……ソングステージの深見さん? はい。少々お待ちください。ねえ、はじめ、ソングステージの深見さんという方から電話がかかってきたけど、出てくれない?」


「……ッ!」


 くそっ。


 さすがにソングステージからの電話を無視するわけにはいかないか?


 俺はドアを僅かに開き、手だけ出して電話を受けとる。ドアはすぐに閉めて、母親に声は聞かれないようにする。


「もしもし。川下です」


「もしもし。ソングステージの深見です。今、お時間よろしいでしょうか」


「……はい」


 ふざけんな。一〇時に、学生の自宅に電話なんかかけてくるなよ。


「Xitter上で、というよりネット上で、ぱじめさんのイベントの件が炎上していることは把握されていますか?」


「……はい」


「確認しておきたいのですが、川下さんがソングステージに所属することをイベント内で公表したのは事実ですか?」


「……」


 くそっ。正直に言うしかないのか?


 リアルイベントはオンライン配信しているから、深見さんも見る可能性がある……。


「……はい。ですが、アレは台本に書いてあったからで」


「そうですか。事前の台本チェックはされなかったんですか?」


「……事前にチェックはしました。でも、前日に変更されていたので。本番はちょっと緊張していて、台本に書いてあることをそのまま読んでしまって……」


「なるほど。では次に、ぱじめちゃんがリアルイベントに失敗した責任を部員に押しつけているのではないかという問い合わせが弊社に来ているのですが」


「してません! 俺は何もしてません!」


「えっと。落ちついてください。正直に話してください。世間からの注目が大きくて、弊社としても公式に声明文を発表しないといけない状況でして。あとで事実とは違っていましたとは言えないんですね。ですから、正直に話してください。今回の件、川下さんは台本を読んだだけに過ぎず、自らの意志でソングステージの所属を発表する意図はなかった。そして、特定の少年に責任があると指摘するインターネット上の書きこみとは一切関係がないということでよろしいですか?」


「……そ、それは」


 はあはあ。 


 どうすればいいんだ。なんて答えればいいんだ。


 俺はどこまで上山のせいにした?


 どこを否定して、どこを肯定すれば、矛盾せずに上山のせいにできる?


 どうやって、俺は悪くないって証明すればいいんだ。


 くそっ。くそっ。


 なんでだよ。なんで俺が問い詰められないといけないんだ。


 俺が何したってんだよ。


「えっとですね。部員とされている少年の家に野次馬が押しかけた件で、近隣住民の方から警察に通報があったんです。それでその際に暴れた方がいらっしゃいまして、その方が警察の取り調べに対して『Xitterのダイレクトメッセージでぱじめちゃんに頼まれた』と言っているそうなんです。そのことで警察の方から弊社に連絡が来ていまして。説明のため、川下さんには保護者の方と一緒に弊社に来ていただきたく」


 な、なんで、ソングステージに警察から連絡がいくんだよ。


 はあはあ……。


 く、苦しい……。息が……。


「もしもし。川下さん? もしもし?」


 はあはあ……。


 うっ……。


 ドサッ……。


 はあはあっ。く、苦しい……!


 ……。


 ……。


 うっ。


 気づいたら俺は病院のベッドの上に居た。


 母が言うには、俺は過度なストレスによる過呼吸で酸欠になり、意識を失ったらしい。


 退院後、俺は自室から出られなくなった。部屋から出ようとすると目眩と吐き気に襲われ、呼吸ができなくなるようになってしまったからだ。


 ソングステージだけでなく高校にも警察からの連絡が来ていたらしい。担任や竹田先生が家に来たが、俺は部屋から出られなかった。


 俺は部屋に引きこもり、耳をふさいで過ごした。


 そして、何回か季節が変わった……。


 俺は部屋にこもり続けている。


 ううっ……。なんでこんなことに……。


 なんで、俺がこんな目に遭わないといけないんだ。


 俺は暇つぶしのためにパソコンでインターネットをする。


 俺はひきこもりやニートなんかじゃない。


 ニュースサイトをチェックしているから、社会情勢は理解している。


 いつだって社会復帰できる。


 そうだ。俺は少し休憩しているだけだ。


 今はたまたま人の目が気になって外を出歩けないだけだ。


 世間はそろそろ俺の存在や声を忘れただろうし、またVTuber活動をするのもありかもしれないな。


 俺の才能なら、部屋から出ずに、人に会わずに楽して稼げるだろうし。


 新たなVとして転生するか。


 そうだ。

 以前はカス達に足を引っ張られたせいで上手くいかなかったが、俺ほどの才能があればすぐに話題になって一瞬で人気が出るはず。


 個人勢として頂点に立って、俺との契約を解除したソングステージの奴等を見返してやる!


 そうだ。俺が惨めな思いをしているのは、あいつらのせいだ。


 ふざけやがって。


 俺は胸に怒りを秘め、再デビューに向けて業界の最新情報を収集し始めた。


 ん? なんだ、このニュース記事?


 虹ヶ丘第三高等学校・部活ュー部快挙! 日本高等学校配信部活連盟で初のSランク認定……だと。


 佐々木達がやったのか!


 さすが俺の後輩!


 けど、部活ュー部ってなんだ?


 配信部じゃないのか?


 ……えっと。


 虹ヶ丘第三高等学校の部活ュー部に所属する砲塔クルミは、ロボライブ社の人気タレント砲塔メロンの妹としても知られており、同社から許諾を得て砲塔の名前を冠して華々しく現役高校生VTuberデビューを果たした。


 部活ュー部は砲塔メロンや田貫ポコラといった人気VTuberとコラボをし、人気が爆発。同校生徒で全国高校生柔道選手権女子の部四〇キログラム級で優勝した神谷真美香さんと実写コラボをしたり、コスプレイベントに参加するなど活躍の場をバーチャル空間の外にも広げている。


 また、部活ュー部が配信しているゲーム『ワールドクラフト』は販売者や開発者が不明の謎のゲームとして話題になっている。映像のクオリティの高さから、大手企業が開発に携わっていると噂されているが詳細は不明だ。次世代ゲーム機の実験映像ではないかという噂もあるが、これも詳細は不明だ。


 同校の事情に明るいYaaTuberタロちゃんによると「部活ュー部の躍進の影には優秀なプロデューサーがいるんだよ。虚無顔のヤベえやつが。あと、顧問が巨乳過ぎてヤベえ」とのこと。


 ……すげえ!


 クルミンは島本か?


 それとも新入部員か?


 しかし、マジで凄え。メロンやポコラとコラボだと……。よく業界トップとコラボしたな!


 OBとして鼻が高いぜ。そうだ。こいつらとコラボして、俺も個人勢としてデビューしてやる!


 佐々木の電話番号はまだ登録してある。持つべきものは、優秀な後輩だぜ!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

ここで完結です。


他のコンテスト作品への応募が終わるなどして時間ができましたら、続きを書くかも知れません。


それとは別に、近日中に全話更新します。

内容を大きくは変えませんが、キャラ名の変更や、矛盾の修正などです。

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[一言] 楽しく配信してるとこもみたい…
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