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川下先輩視点2:上山が退部の腹いせをしてきているが、俺達は負けない!

 さあ、いよいよ、リアイベ当日だ。可愛い客がいたら、イベント後、個人的に誘うのもありかもしれねえな。


 開場より二時間も早く会場に入った俺を迎えたのは、佐々木の体に見合ったデカい声だ。


「川下先輩、大変です!」


「は?」


 既に部員は揃っていた。佐々木達が何を慌てているのかも、一目で分かった。


 イベントホールに椅子が並んでる。


「なんだよ、これ」


「来たら並んでいて……」


「くそっ。こんなのあったら客が入れねえ。上山の嫌がらせかよ! チケットを追加販売して立ち見イベントに変更したことを、会場に伝えなかったんだ!」


「どうしますか、先輩。椅子を前に寄せて、座れない人は壁際に入ってもらいますか?」


「それもありだが……。座れる客がいると、立ち見になった客が不満を感じる。……そうだ。客を待たせるために隣の部屋も借りてあるよな?」


「え、ええ」


「椅子をそこに運ぶぞ! 全員でやればすぐ終わるはずだ。女子も手伝え!」


「はい!」


「……いや、待て。本田と田中は図書館の自販機で飲料をなんでもいいから一〇〇本買ってこい。会場で売る準備をしてくれ」


「分かりました!」


 上山め、退部の件で逆恨みをして嫌がらせをしてきたようだが、無駄だ。


 てめえの思い通りにいくかよ!


 俺は手当たり次第に椅子を隣の部屋に運んだ。


 #配信部 #リアイベ #俺達最高の仲間 #絶対成功 #革命起こす #VTuber # 青春


 おらあ!


「上山の嫌がらせに負けずに、椅子を片づけきったぞ!」


「川下さん、さすがです! トラブルに負けない判断力、最高ッす!」


「佐々木。これが最後の機会だ。お前も新部長として俺からたくさん学べよ」


「はい! マジで尊敬します」


 開場時間を一〇分くらい過ぎたが、入り口前に殺到している様子もないし、騒ぎ声も聞こえない。


 Xitterを見たら「リアイベ楽しみ」という呟きに、行列の写真が添付されている。


「見ろよ。さすが俺のファン。ちゃんと並んで大人しく待ってる。これがファンの結束力ってやつだ。よし。全員、準備はいいな。開場だ」


「はい!」


 イベントは大成功だ。


 大勢のファンが俺の生配信を楽しんでくれた。


 俺のファンは三〇代の女性中心だったため、きゃあきゃあと黄色い悲鳴をあげてくれたぜ。


 イベント後、俺達は、予約してあったファミレスの個室に向かった。


「みんな、今日は俺のためにありがとう。リアイベの成功を祝して、乾杯!」


「乾杯!」


 俺はもう誕生日が過ぎていて一八歳を超えているから、カクテルドリンクを頼んだ。デビューしたら先輩に誘われて、お酒を伸びながら配信することもあるだろうし、お酒風のドリンクで少しずつ慣れていかないとな。


 俺が気分良く何杯目かのドリンクを飲んでいると、隣で吉野が変な声を出した。


「あっ。(はじめ)君」


「どしたぁ。吉野」


「Xitter見て。大変!」


「お。なんだ。バズってるか」


「うん。でも、ちょっと、見て」


「んー?」


 もしかして人気VTuberが拡散したり、絶賛したりしてくれたか?


 コラボ依頼が殺到してるのか?


 俺は吉野の肩に腕を回し、まあ、向こうが誘ってきたんだからこれくらいありだろうってくらいの距離感から、スマホを覗きこむ。


「えっと……。『ぱじめちゃん、ソングステージ所属おめでとう』……か。お祝いメッセージがいっぱい来てるな」


「そうじゃなくて、こっち」


「んー? 『ソングステージ所属発表、ヤバない?』。おう。マジでヤバいからな。お前等全員で、他人のフリして拡散しろ」


「そうじゃないでしょ。これ、事務所より先に発表するのはまずくないかって意味だよ」


「は? 別に問題ねえだろ。俺は既に、業務なんとか契約書ってのに二枚も判子を押して送ってるんだ。所属は決まってるんだしよ。本当のことしか言ってねえよ」


 つうか、吉野って、そんな美人ってわけでもねえけど、こうして抱き寄せていると可愛く見えてくるっていうか、高校卒業前にヤッておくか?


 脱童貞しておいたほうが俺の演技の幅も出るだろうし、デビュー後に女Vやファンとヤるときに未経験だったら恥ずかしいし、練習しておいた方がいいだろうしな。


 吉野も卒業前の想い出に、プロVチューバーとヤれたら嬉しいだろうしな。


 俺は吉野の耳元に囁く。


「なあ、今から二人で部室に行って、ヤらね?」


「待って。そうじゃないでしょ」


「お?」


 吉野は両腕を使って、肩に回してあった俺の腕を外した。


「よく見てよ。会場前の行列整理がなかったこととか、着席イベントじゃなかったこととか、悪い評判が書きこまれているんだよ」


「は?」


「行列は綺麗に並んでいただろ」


「知らないわよ。最初は図書館の周りに広がっていたみたいだし……。事務所所属を発表したことが、一番、反響が大きいみたい。もちろん、悪い意味で」


「はあ? そんなん、どこに問題があんだよ」


「分からないよ。でも、上山君がNGって言ってたし、本当に良くないことだったんじゃないの?」


「上山なんて関係ないだろ」


 俺は吉野を突き飛ばすようにして離れ、自分のスマホを確かめる。他のメンバーもスマホを弄り始めた。


 確かにXitterを見ると、リアイベを批判する書きこみがちらほらとある。


 上山からの嫌がらせか?


 退部になった腹いせで、複数アカウントを作ってまで俺のイベントをディスりやがって。


「あのカス、退部になったあとまで迷惑かけやがって。イベントの手配をミスっただけじゃなく、ネットで叩いてくるなんて最低過ぎだろ。悪いのは上山だ。ネットに真相を書くぞ!」


「真相というと……」


「会場を予約したのも、行列の待機方法を決めたのも、全部上山だ。それを書くんだよ」


「はい!」


 俺達はネットに真実を書きこんだ。


 イベント会場を手配したのは上山だ。チケットの追加販売をしたのは俺だけど、そのことはわざわざネットに書く必要はない。これで、待ち行列が崩れたのも、立ち見になったのも上山の責任になる。


 俺は何も嘘はついていない。


 俺も配信部も何も悪くない。すべて上山が悪い!


 俺にはXitter三〇〇〇人のフォロワーと、YaaTubeチャンネルの登録者一〇〇〇〇人もの味方がいる。少しくらい事実と違うことが書いてあったとしても、俺の言ったことが真実になる。


 夜になっても配信部を叩く声は消えない。


 上山の野郎はクソ陰キャなだけあって、ネット工作を依頼する仲間が大勢いるのか?


 まさか、本当に俺が叩かれているのか?


 俺は、配信部や俺を叩く呟きに反論を書きこんだ。


 翌日になると、SNSに俺のソングステージ所属を批判する書き込みが増えてきた。


 くそっ。喜んでいるファンもいるんだから、別にいいじゃねえか!


 俺がオーディションに合格したのは事実なんだぞ!


 どうする。もし、事務所関係者が俺の炎上に気づいたら……。まさか俺ほど才能あるタレントを解約破棄するなんてことはないはずだが……。


 そうだ。他に炎上する話題を出せば、ネット民は俺のことなんてすぐに忘れるはず。


 何かいい話題は……。


 そうだ!

 上山に責任をとらせよう。あいつのせいで俺が炎上したんだから、代わりにあいつを炎上させればいいんだ。


 たしか、あいつを退部にしたとき、吉野が動画を撮っていたな。


 あの映像を上手いこと利用して、寿司屋の醤油ペロペロキッズみたいに炎上させてやる……。


 よし。部員の私物を盗んでいるってことにしよう。


 俺のファンなら、リアイベで叩かれている内容は全部あいつのせいだって信じてくれるはずだ。


 俺は部員に指示を出し、動画を加工しネットにアップロードした。


 ざまあみろ、上山。燃えちまえ!


 最後は俺が勝つんだよ!

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