第2章 魔法の光と…
冷静に考えてみると、右も左も分からない森の中、歩き回るのは如何なものか。
そう思った自分はまずは周りの環境を色々と調べることとした。
そして、いくつか確証を持った。
まず、ここが自分の知っている世界とは全く違う世界であること。
少なくとも自分が知る知識に自ら光を発する水晶のような鉱石や三ツ目の子犬ほどのサイズがある化け物ネズミは存在しない。
次に、ファンタジーならほぼお決まりの魔法やご都合的なスキル的な物、こちらの方に関しても色々と判明した。
残念だが天の声が聞こえたり、超人的な能力は今のこの身体以外見当たらなかった。
しかし、身体の中に流れる【何か】、それを操作することが可能だった。
そしてこれが不思議なことにまるで生まれてからずっといじってきたかのようになんの苦もなく操作できた。
おそらくこれが俗に言う【魔力】に該当するのはわかる。
しかしその魔力をそこからどうすれば良いのかは一切分からない。
試しに魔力を手から放出するイメージで動かしながらファイアボールだとかメラだとか色々言ってみたがうんともすんとも言わない。
魔法の打ち方は正直全く検討がつかない。
まぁ分からないものは考えても仕方がないので他を調べてみることにする。
とりあえず気になるものと言えば、少し離れたところに生えている1メートルはあろうかという大型の光る水晶だろう。
とりあえずあちこちから観察してみる。
ただの水晶だ。それしか分からない。
手触りはなんだかツルツルしていて……
とそこまで考えていたところ。
突如、その水晶から「ブゥン……」というような重低音が聞こえ、魔力の奔流が流れ込んできた。
体内の奔流が流動し、それが光へと変ずる。同時にもうひとつ、レンズのような物が生成され、収束されて行く。
まるで太陽の光を集めて黒い紙を焦がすあの実験のように。
……これは……記憶されたというだろうか?
突如頭の中に流れたイメージ。
今のは紛れもなく、魔法だ。
今のイメージの通りに実践してみる。
まずは、魔力を一定量手元に集める。
次に光る球体を思い浮かべ、変換。
すると魔力だったものが次々に光に変じ、球体を形作る。
次にもう一方の手でレンズをイメージして同様の操作をする。
最後にそのふたつを合わせ……打つ!
するとレンズに光が吸い寄せられ、ピィィン!というSFチックな音とともに光線が発せられる。
正面にあった少し大きめの岩の直撃面が赤熱している。というか少し抉れている。
なかなかの威力である。
初めての魔法に少し興奮しつつ、さらにもう一度、さらにもう一度と魔力を練り、魔法を行使。光を大きくしてみたり一度に複数作ろうとしてみたりたくさんの光球をレンズに突っ込んだり気づくと岩は半分ほどが無くなってしまった。
あまりに新鮮だったためつい興が乗りすぎてしまった。
でもおかげで発動の動作はかなりスムーズになったので良しとしよう。
さて、そろそろ探索を始めなければ。
このような場面だと大体頂上を目指したり……いや、平坦な森なのでそれは無理だろう。頂上が分からない。
後方の岩壁もあることなのでとりあえずは前方へ進むしかないだろう。
てなわけで、新しい武器である光魔法も手に入れたことなので多少の脅威ならどうにかなるだろう。