愛の行方【読切】
5作目です。
よろしくお願いします。
ラブレターを書こう。
毎日少しずつ、でも確実に。
題材は既に決まっている。大好きな君のことを綴るに決まっている。
僕の心の容量では、君への想いの大きさは到底入りきらないから。
溢れ出してしまう前に、こぼれ落ちてしまう前に、どうにかしなければと思ったから。
君への無限大の愛を余すことなく堪能するために、僕は表現の道を選んだのだ。
君への愛情とイコールだから、文字が尽きることはない。永遠に書けてしまうのだ。
むしろ悩んだのは、一言目。最初に何を伝えるか。
結局、僕に選ぶことはできなかった。
馬鹿にするなり、意気地なしと罵るなり好きにしたらいい。
しかし、僕はタダでは転ばなかった。大好きな君が主人公の物語を書こうと閃いたのだ。
小説を書こうと決意したのだ。
そうすれば、君への想いを時間をかけて伝えられると思ったから。
――――――
そうして、第1話が完成した。
君の魅力が詰まっている。名作ができたと確信した。
嬉しくなって、誇らしくなって、勢い余ってとあるサイトに投稿した。
……結果、大当たり。たくさんの読者が名作として喝采してくれた。
嬉しかった。こんなにも作品が愛されて、僕は幸せ者だ。
君もとても喜んでくれた。
『ちょっぴり恥ずかしいけど、胸がきゅーってなるね』
意味はよくわからなかったけれど、祝福してくれてることは伝わった。
そうして、PCにかじりつく日々が始まった。
もっといいものを、よりよいものを書かなければいけない。
それができなければ、読者も君の心も離れていく気がして。
僕は必死だった。
寝る間も惜しんで、何もかもを犠牲にして愛の結晶を書き連ねていった。
そして、僕の本は大変人気を博した。
書籍化が決まり、その後も売れに売れた。
いくつかの賞ももらったそうだ。
最近のニュースでも取り上げられたらしい。
だが、そんなことはどうでもよかった。
そんな過去の余韻に浸ってる暇などない。僕は書き進めなければならない。
1日のほとんどを机の上で過ごす。いや、もはや1日の感覚すら麻痺してしまった。
僕の血と涙と時間の結晶は、出せば出すほど伸びる売れる。
そんな極限の続けていたある日、ふと思う。
【僕は何のために書いているのだろうか】
――――――僕は再び極限へと身を投じた。
これで短編は一回終わりです。
少しでも楽しんでいただけましたか。
気が向いたらまた書きます。
それより長編の準備が忙しくって。
感想・ブックマーク・レビュー等々お待ちしております。