寄り道
残酷描写強め、苦手な人はバックを。
部活が終わり、いつものメンバーで帰りに少しだけゲーセンで遊ぼうという話になって馴染みの店にやってきた俺たちは自動ドアを抜けて冷房が効いた店内の空気を吸い笑顔を浮かべながら各々、得意なジャンルの筐体に向かって歩いていった。
「とりあえず何すっかなー。 お? 乱入受付してんじゃん!」
俺は最近ドはまりしているレースゲームの対戦受付表示を見つけすかさず空いているシートに座り百円を入れて馴れた手つきでメニューを操作、対戦を申し込む。
「げ。 俺が勝ったらいちゃもんつけてきそうだなぁ」
相手が誰か気になり視線を向けると同じ高校生だとは思うが茶色に染めた髪をワックスで撫でつけ耳にピアスをした男だった。
レースが始まり、序盤は様子を見ようと相手の後ろにピタリと張り付きいつでも抜けるようにしておく。
「あ、この人それほどでもないな」
俺はコースの走り方を後ろから観察して、そう判断すると後半のショートカットが可能なカーブのイン側を飛び越えていき華麗に抜き去る。 その後必死に追いかけて来るが逆転されることもなく勝負は俺の勝ちに終わった。
その後、ガラの悪い男は負けたのが悔しいのか舌打ちをしつつも物に当たり散らしたりはせず帰っていった。 それを見届けたあと、勝者得典でそのままプレイを続行しようとしたところで部活の仲間が肩を叩いて話しかけてきた。
「ん? どした」
「な、なんかさ。 向こうのトイレから出てきたら上の通気口から変な音聞こえてきて、気味悪くて……もう帰らねえ?」
「はぁ? なにそんなんでビビってんだよ。 きっとネズミかなんかだろ……店の衛生管理が悪いんだろ、アンケート用紙にでも苦情かいとけ」
「そ、そうなのかなぁ」
せっかく勝利の余韻に浸りながらゲームを再開しようとしたところに水を差され投げやりに答えた俺に納得し切れてないのかはっきりしない反応を示す部活仲間。
と、その時だった。
「うわあっ! な、なんだこいつらっ!!」
奥のスロットの台で遊んでいたと思われるおっさんの声が色んなゲームの台の効果音などにかき消されることなく響き渡り、何事かと流石に気になりシートから立ち上がると似たような様子の客たちが声の元へ視線をやるとそこに居たのは、60センチほどの大きな毛だまりに大きな一つ目、フラミンゴのような細い足を四本生やしその足先には鎌のように鋭利な爪が生えており口は端まで裂けて歯はびっしりと生えていて口の端から涎を垂れ流していた。
「ギギギ……」
「きゃあああああああああああっ!」
女性客が悲鳴を上げそれを合図に店内は大パニック。我先にと店の外へ出ようと駆け出し俺たちの横を通っていくが急に足音が止まる。 振り向くと、自動ドアを塞ぐかのように更に数十体の毛まみれの化け物が現れていた。
「囲まれてるっ! くそっ! なんなんだよ!」
大学生くらいの男の人が蹴りを放つが、素早く飛びのきガラスに張り付いたかと思うとそこから男の人の顔面に飛び掛かり大きく裂けた口で丸呑みにした。
ビクビクと痙攣しながら倒れる身体に他の仲間たちが群がり食い散らかしていく。 それを見ていた女性客は失神。 それを逃さず他の場所に居た化け物が、餌にありつこうと群がり、数秒で血の池が出来上がる。
「こんなのどうしたら……」
俺が途方に暮れているとさっき話しかけてきた部活仲間が小さい声で俺を呼び手招きする。 どうやら客と化け物が暴れたせいで筐体が少し動き隙間が出来たようで、そこに隠れてやり過ごすつもりらしい。
とりあえず俺もそこに入ろうと歩き出したら丁度そこの上にあった別の通気口から新たな化け物が現れ爪で部活仲間を串刺しにしてそのまま隙間からひっぱり上げて通気口の中で食い散らかしているのだろう、大量の血が通気口から流れ出した。
俺はもう、何をどうすることも出来ず周りの人間たちが食い散らかされていくのを見ているしかなかった。 そしてふと俺の横にある筐体から音がして顔を向けると、大きく口を開けて俺を見ている化け物と目があった。
次の瞬間、俺の意識は真っ暗になって消えた。
読んでくださってありがとうございます。 実はこれ、大体の流れは作者が中学生の時に見た夢の内容になっております。 病んでたんですかね?