表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキー女子高生といじめられっ子の俺が心中。そして生まれ変わる?  作者: 麗玲
第3章 ヤンキー美少女の下僕は脱見習いを目指しました
57/141

トレーニングは一日にしてならず

 女子会の次の週に俺はキックボクシングのジムに入会した。

 そして、三週間。この間、俺はみっちりと鍛えこまれる事になった。


 平日、学校では昼休みの三十分と放課後の一時間は勝子とトレーニング。

 その後、ジムに行き、入門クラスで一時間キックボクシングの基礎の練習。

 帰宅後は勝子に教わった自主練とジムの推奨するメニューで筋肉トレーニングを三十分程。


 土曜日は女子会(?)でスパーリング中心の練習。

 勝子相手でボクサー対策と姫野先輩を相手に総合対策を行う。

 他にも姫野先輩から()()()を教わり、それを重点的に練習したり、ジムではちょっと使うのが躊躇われるサンドバックを叩かせて貰ったり、トレーニング器具でサーキットトレーニングを行った。


 日曜日は休暇も必要との事で、オフにしたが、軽く勝子に教わった自主練だけは行った。



 二週目は平日はキックボクシングのジムで入門クラスの練習終了後、更にその後に行われる初級クラスの練習にも参加し、土曜日も女子会終了後、初級クラスだけ練習に参加した。

 入門クラスと初級クラスの違いは、入門クラスは体力よりも技術習得に重点を置いたクラスであり、初級クラスは入門クラスより練習量が多くなり、入門クラスでは学ばなかったキックの全般的な技術が学べる。

 とにかく両方のクラスに参加する事で、実戦に備え少しでも多く受け返しを経験したかったので、良い練習になった。


 二週目から日曜日以外は大体一日四時間ぐらい練習している事になるので筋肉痛が酷い。元帰宅部には辛い運動量だった。


 だが、二週目になって、嬉しい事に予定よりも早く麗衣の傷も完治して、俺に付き合ってジムでは一緒に練習してくれるというのも励みになった。


「中級クラスとマススパークラスがある時はそっち優先するけど、それ以外の日は武と一緒に入門クラスと初級クラスにも参加してやるよ」


「ありがとう麗衣。でも麗衣なら自主練の方が良いんじゃない?」


 麗衣が以前よく学校をサボっていたのは自宅のジムで試合が近い場合など自主練していたかららしい。

 それに、ジムでも選手の自主練の時間で妃美さん等と共に高度な練習が出来るはずだが。


「体訛っているし、調整に丁度良いだろ? それにあたしが入門クラスの練習の時に居た方が無料体験とか見学で来た人が入会してくれる可能性が高いんじゃないかって妃美さんに言われてなぁ……」


 麗衣は気恥ずかしそうに頬を掻きながら言った、

 成程。麗衣目当てで入会者が増えるかもしれないって事か。

 確かにそうだけど、ナンパなんかした日には血の雨が降りそうなものだけれど……


「そんな事あるわけねーけどこの前、厚鹿文あつかや達の入会費と月謝損させちまったからな……なんか悪いし」


「そんな事あるよー。麗衣ちゃんと勝子ちゃんは客寄せパンダ……じゃなくて我がジムのマスコットになって欲しいんだけどね?」


 俺達の話を聞いていたのか、妃美さんは口を挟んできた。


「客寄せパンダって確かに言いましたよね……それに、勝子は確かに可愛いしマスコットっぽいかも知れませんけど、あたしじゃイメージ落とすだけじゃねーすかね?」


 いや、あんな狂暴なマスコットは居ないだろ?

 それに麗衣は今一つ自分の美貌について無頓着というか、認識が欠けているような気がするが……。


「まぁ男の子と喧嘩してほっぺたに沢山絆創膏貼ったりしてなきゃ、そんな事は無いと思うんだけどね。もう少し女の子なんだから自分を大事にして欲しいな」


「いや、格闘技していたら多かれ少なかれ、怪我は免れないですし、あたしにプロ入り勧めている妃美さんの台詞じゃないっスよ」


「もーっ。そういう意味じゃないんだけどなぁ……麗衣ちゃんに健康の為とか選手になる為とかトレーナーになる為とか以外に()()()()()()()()格闘技をしているとしても、せっかく可愛いんだから女の子である事まで捨てて欲しくないんだよね。ねぇ? 小碓君も勿体ないと思わない?」


 妃美さんは俺に話を振って来た。


「そうですね。見てくれも性格も良い奴なんですけど、言葉遣いやら態度やらで勘違いされやすいから、もう一寸女子らしく振舞った方が良いとは思いますけど……」


「ほう。下僕の癖に言うようになったじゃねーか!」


 麗衣は不意に背後から相手の左足に自分の左足をからめるようにフックさせ、俺の右腕の下を経由して自分の左腕を首の後ろに巻きつけると、背筋を伸ばすように伸び上がった。


「イタタタっ! ギブギブ! コブラツイストは止めて!」


 俺があっさりギブアップすると麗衣は技を解いてくれた。


「というか、何時も何時も何で男子小学生みたいに俺にプロレス技を掛けたがるんだよ!」


「何言っているんだ? 勝子にかけたら抵抗しないで痛くても我慢しそうだから可哀そうだし、姫野にかけたら十倍返し喰らうからに決まっているだろ?」


 あ、確かに目に浮かぶ光景だな。

 いやいや、納得するなよ俺。


「だからって俺にかけて良いのかよ!」


「これはMMA対策だ。我慢しろ」


「いやいやいや! これはMMAじゃなくてプロレスの技じゃないか!」


 そんな俺らの様子を見て、妃美さんは笑いだした。


「あはははっ。本当に君達仲良いよねー。恋人同士でも余程深い仲じゃなきゃ、こんなにじゃれついたりしないんじゃない?」


 そんな事を言う妃美さんに対し、今度は俺にヘッドロックをかけながら麗衣は反論した。


「いや、これは下僕に対する躾の一環なんで。というか、コイツは最近は勝子との方が仲良いっスよ」


 また話がややこしくなるような事を麗衣が言った。


「え? まさか小碓君……二股かけてるの?」


「どうしたらそんな風に見えますか? 二人から下僕扱いされているだけなんですけど……」


「そうかそうか。人は見かけに寄らないって言うけど、やるねー。でも二人とも、とーっても強いから怒らせない様に気を付けてね?」


 ……女という生物は人の話を一切聞かないのものだって偏見持って良いですか?


「ところで、話が変わるけれど麗衣ちゃんはボクシングクラスには参加しないの? 勝子ちゃんが喜ぶと思うけれど?」


 それは俺も不思議に思っていた事だ。

 麗衣のパンチは体格で上回る棟田を一発KOする程強力な物だけれど、亮磨には全然パンチが当たらなかった結構荒いパンチである。

 ストレート系はとにかく、フック系はもっとコンパクトに打つ練習をするべきだと素人目には思うけれど。


「あたしのパンチはどちらかというと細かいパンチでダメージ積み重ねるんじゃなくて、ムエタイ式の試合終盤に一発KO狙うようなパンチですからねぇ。下手にボクシング風にするとスタイルが崩れちゃいそうですけど」


 本場のムエタイではパンチが殆どポイントにならない為、試合終盤でポイントで負けていると判断した側の選手がKO狙いでパンチを強振する事が多いらしい。

 だから、ムエタイ式の麗衣のパンチはどうしても荒くなるのかも知れない。


 恐らく麗衣は暴走族、つまり男子を戦う事を想定しているから普通にパンチを打っても男子のパワーには敵わないから、国際式ボクシングではなく一発KO狙いのムエタイ式のパンチを使うのだろう。


「でも、女子のアマチュアキックボクシングだと肘や膝が制限されているでしょ? だからボクシングスキルが高い方が有利なんだよね」


 麗衣は男子との喧嘩を前提に想定し、妃美さんは女子との試合を前提に話している。

 どちらも正しいとは思うが、個人の適正としてはどうなのだろうか?


 かつて、K-1でも活躍したカリスマ的大スターの総合格闘家がムエタイを取り入れた後、並みの試合になってしまった事がある。

 総合格闘家的な攻撃やステップ、距離感が本家のキックボクサーを惑わしていたのであって、慣れないムエタイでは相手の土俵に合わせる事にもなり、実力を発揮しきれなかったのであろう。

 つまり、各人に適したスタイルがあるから無理に弄らない方が良いという事かもしれない。

 それに、サムゴーを模範とする麗衣にとって、ムエタイスタイルを崩す様な事はしたくないのかも知れない。


 とはいえ、麗衣がボクシングクラスに参加しないのは他にも何か別の理由がありそうな気もするが……。


「ふーん。勿体ないねぇ。まぁ試合の前提はとにかく、昇級審査でマスボクシングもあるから、一応ボクシングクラスも参加しておいた方が良いよ?」


「あ……そうだったか……」


 麗衣は頭を掻いた。

 亮磨との戦いの苦い経験を思い出した様だ。


「仕方ねーな……今度ボクシングクラスに参加します」


 麗衣は渋々と言った。


「良かったぁ……きっと勝子ちゃんも喜ぶよ」


 もしかすると、勝子のモチベーションも考えて麗衣を練習に誘ったのかも知れない。

 そりゃあ、幾ら喧嘩では無敵の勝子とは言え、年上ばっかり相手に指導していたら気が休まらないかも知れないよな。

 もし、そういう話なら俺も参加したいな。

 勝子とは普段から練習をしているけれど、ちゃんとジムで習うボクシングにも興味があった。

 それに麗衣が居るのならば俺も参加したい。


「俺もボクシングクラスの練習に参加できませんか?」


 だが、妃美さんの返事に俺は落胆せざるを得なかった。


「ごめんねぇ。級持っていないとボクシングクラスには参加できないのよぉ」


 先ずはキックボクシングの基礎が出来てからという事か。

 当然と言えば当然の事だ。


「そうですか……残念です」


 落ち込んでいる俺の肩をポンポンと叩いて慰めると、麗衣は妃美さんにお願いをした。


「そうそう。妃美さん。お願いがあるんですけど、今日練習終わったら、バックスピンキックとか踵落としとか、テコンドーで使いそうな蹴りのテクニック教えてくださいよ。妃美さんああいう変則的な蹴りも得意じゃないですか?」


 妃美さんは不思議そうな顔をして首を傾けた後、険しい顔をして言った。


「教えてあげても良いけれど……回転系の蹴りは昇級審査にも無いしアマチュアの試合じゃ禁止されているよね? まさか、テコンドー使いと喧嘩するのが目的とかじゃないよね?」


「ち……違いますよ。人聞きが悪い事言わないで下さいよ。トレーナーになりたいから後学の為にですよ」


 妃美さんが鋭いというか、恐らくこんな事が今まで度重なっているのだろう。

 妃美さんなりにこの可愛らしくも、お転婆なじゃじゃ馬の事が心配で仕方がない様だが、教えてくれることにはなった。


 入門クラス、初級クラス終了後、俺も付き添いでテコンドーの蹴りの練習を行った。

 全く俺の蹴りは様にならなかったけれど、麗衣は流石に飲み込みが早かった。

 次の女子会までには充分スパーリングで試せるレベルになりそうだ。


 ……というか、何時まで女子会という呼び方を続けるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 格闘技初心者の武君がいきなり一日四時間の練習はきつそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ