2.ハグ。※イラスト
「“ぎゅー”ッとして欲しいな?」
「ハア?」
僅かに日差しに暖かさが残る、学校の帰り道
プリン頭は、普段とはキャラクターを一八〇度変えてエモな台詞を放って来た。
思わず周りに人がいないか見渡し確認した。
ハグはいいよね……ストレス解消に役立つし、本当なら毎日したい。
この台詞はむしろ俺が毎日言いたい、心の奥に秘めた願望。
「フフン、オタク君こう言うの好きでしょ!」
幼馴染のプリン頭はいたずらっぽく笑う。
普通に可愛い、滅茶苦茶抱きしめたい、もう今、すぐにでも。
「オ、オタクじゃねーし!? そんなの全然好きじゃないし!」
ケラケラと笑うプリン頭。
「なんか鼻息荒いし、んじゃハグしようかオタク君?」
「い、いいのか?」
「どうぞ」
プリン頭は俺を導く様に両手を開いた。
一瞬躊躇したがジリジリと距離を詰めてプリン頭の腰と背中に手を回す。
――ちょっと硬い……
プリン頭はレスリングの選手だ、
階級がある競技は体重をコントロールする必要がある。
プリン頭は体脂肪率が低い。
そのまま強くプリン頭を抱きしめる。
胸部にある、柔らかい二つの塊が押し付けられる。
力を入れても折れそうにない、硬く弾力がある腰回り。
相手の体温がゆっくりと伝わって来た。
プリン頭の頬に自分の頬を密着させると火傷しそうなほど熱い。
プリン頭は顔だけではなく耳まで真っ赤にしていた。
お互いの心臓の音が混じり合ってどちらの物か分からなくなる程の長時間抱き合った。
「――お、弦司もういいだろ?」
「後もうちょっと……」
「ふふ、弦司は甘えん坊だな」
そう言うとプリン頭は俺の頭をなで始めた。
そうか、俺は甘えん坊で、マザコンの気があったのか……
ちょっと恥ずかしい……