1.結婚したら?
「手なんか繋いだら赤ちゃんが出来ちゃうだろ!!」
「ハア?」
眠気が抜けない朝の通学途中、隣の家に住んでいる幼馴染のプリン頭はいきなり訳の分からない事を言い出した。
俺の幼馴染はいわゆるヤンキーで、染めた金髪頭の天辺が黒くなっており、プリン頭をしているので最近はプリン頭と呼んでいる。
本名は阿我妻 真清だ。
肩まで伸びた金髪、やや切れ長のくりくりとした目玉は、可愛らしいと言うよりかは美人で、全体的な印象としては顔がいい。
身長は高くすらりとして、筋肉質、胸元を大きく開けていて、少しと言うかかなり阿婆擦れ臭い雰囲気を醸し出している。喧嘩がめっちゃ強そう。
その幼馴染のプリン頭ヤンキーが朝から意味の分からない事を言い始めた。
……こいつは朝から何を言っているんだ?
昔からアホだなーと思っていたがとうとう常識が小学生まで退化してしまったのだろうか?
お気の毒様だな。
「フフン、オタク君こう言うの好きでしょ!」
幼馴染のプリン頭はいたずらっぽく笑う。
顔がいい、とても可愛い。好きだ、結婚したい。
「オ、オタクじゃねーし!? そんなの全然好きじゃないし!」
ケラケラと笑うプリン頭。
「顔、滅茶苦茶赤いし、んじゃ赤ちゃんできるか試してみようかオタク君」
プリン頭に強引に手を捕まれ引っ張られる。
「うわー……滅茶苦茶しっとりしてるんだけど、引くわぁ……」
「う、うるせー……お前みたいなカワイイ女の子と手を繋げば誰だってこうなるんだよ」
勢いに任せて褒めつつ本音を混ぜる。
プリン頭は攻撃力全振りで防御が弱い、すぐに照れて赤面するのだ。
「へ、へぇぇ可愛い? アタシがへ、へぇぇ」
照れるプリン頭は最高に可愛い、正直好きだ、結婚したい。
「可愛い、正直好きだ、結婚したい!」
思っている事が思わずそのまま口を突いて出た。
「お、おまえ!! そう言うストレートな物言いは、ズ、ズルイと思う……」
顔を伏せ耳まで赤くしたプリン頭と俺は、日課のように手を繋いで通学路を歩いた。
赤ちゃんは出来なかった。
残念。
「出来る訳ねーだろ……馬鹿……」