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ジュリアンヌ様とはなそう。

 休み時間になった。例の4人と歩きながら食堂へ向かう。


「では今日の昼食はあちらでいただいてきますね。女の子同士の秘密のお話なんですから、今日は入ってきちゃダメですからね。」



「ごきけんよう!私はも入れていただけませんか?」

 突然現れた私に一瞬怯みながらもジュリアンヌ様は笑顔でお付きの人に椅子を持ってくるように指示を出した。


 流れるような動き、笑顔を崩さないところ、やっぱり生粋のお嬢様だね。

 前世平民、今世山育ちからの男爵家の私とは大違いだ。


「ソフィア様からお声をかけていただけるなんて、初めてですわね。」 


 そう言いながら、さりげなく周囲を伺っている。あの四人が何か言いにこないか気にしてるんだろう。

 そりゃぁそうだよね、気を使って色々教えようとするたびに、最後まで話を聞いてもらえず悪者扱いされたら…

 私だったらすぐに嫌になって声をかけなくなる。

 でも、ジュリアンヌ様が声をかけ続けてくれるのは今この学園にいる女生徒で一番身分が高いため女生徒を纏める責任を感じているからだ。本当に真面目な人。


 取り巻きABCも怪訝な顔で見てくる。こちらはしっかり顔にでてるね。


「突然申し訳ありません。先日、話が途中になってしまいましたので…もしよろしければ何故手作りの品を渡してはいけないのか教えていただけませんか?」

「あら…貴方は自分の置かれている立場をご存知?身分違いなのに王子にとりいって。沢山の男性に愛想を振りまいて節操がない。貴族としての礼儀作法を知らない人。……酷い人だと平民のくせになぜここにいる。なんて言う人もいらっしゃるんですのよ。」


 分かってはいたけど評判良くないね、私。

 ジュリアンヌ様は続ける。


「そんな貴方が手作りのクッキーを食べた後に王子になにかあってごらんなさい。クッキーが原因で無くとも貴方への攻撃材料にする方が出てきます。校内では身分は関係ない、と明言されていても王子の身に危険が及べばそんなもの関係なくなるでしょう。男爵家しかもできたばかり…他の貴族に抗うことなどできないでしょう?嘘を真の様に言われてしまえば傷つくのは貴方です。そしてそれを見て、ニコラス様も責任を感じることでしょう。」


 最後の方は小さく弱々しい声だった。私の事を気にしてくれているのも勿論だが、本当にニコラス様の事が心配なんだろう。

 なんて優しくて不器用な人なんだろう。


「ジュリアンヌ様の言うことは理解いたしました。ですが、王子をはじめ、高位の方にお願いをされたときの断り方が分からないのです。身分は関係ない、その様に謳っていても実際は関係がある…それは皆様も感じていらっしゃるのでしょう?」


 ジュリアンヌ様も取り巻きABCも難しい顔をして目を伏せる。


「ニコラス様たちは学園内で私に親しくしていただける数少ない人たちでもあります。その方たちに悪意無くお願いされると叶えてあげたくなる、というのも本音ではあります。」


 続けて言うと、ジュリアンヌ様は真剣な顔をして私を見る。


「確かに友人にお願いをされたら叶えたい、と思う貴方のお気持ちもわかります。私もエーヴァ様たちにお願いをされたらでき得る限り叶えようとするでしょう。そうですね…では差し上げたものを信頼できる方に毒味をしていただいたらいかがでしょう?貴方の信頼できる方ではなく、ニコラス様の周りで信頼されている方ですよ。例えばお世話をしているお付きの方、護衛の方、そういった方たちを通して差し上げればもしニコラス様が体調を崩されてもその方たちが平気なら貴方に疑いはかからないでしょう?」

「ありがとうございます。実は今日も作ってきたのですが渡すかどうか悩んでいたのです。ジュリアンヌ様に相談してよかったです…不躾なお願いとは存じておりますが、私は貴族社会の常識に疎いのです。お時間のある時、ジュリアンヌ様が気になった時で構いませんので、淑女のあり方について教えていただけませんか?」


 ジュリアンヌ様たちは目を見開いて固まっている。私がこんな事を言うなんて思ってもいなかったのだろう。そりゃそうだ。今まで悪役を買って苦言を呈してくれていたのに全く聞き入れてこなかったのだから。


 遅すぎたか…と諦めようとした時、ジュリアンヌ様が小さく私に務まるかしら?と呟いたあと、決心した様に拳を握りしめた。


「わかりました。私にできうる限り貴方に淑女教育をさせていただきます!よろしいですね、皆様!」


 顔は強張り握りしめた拳は心なしか震えている。すごい決意表明だ。そんなに不安かな、私…

 他の三人も表情を硬らせたまま何度も首を縦に振っている。

 傷ついても仕方ないのでせっかく仲間に入れてもらえるチャンス!!

 このまま畳みかけよう!


「ありがとうございます!ではこれから昼食は毎日ご一緒させていただいて良いですか?」

「え?毎日ですか?ニコラス様たちが寂しがるのでは…」

「えぇ、毎日です。ニコラス様たちは応援してくれるはずですわ。なので毎日!よろしくお願いいたしますね!」


 やったー!!これで女の子とランチできる!!

 少し強引に仲間入りしたあと、他の三人とも少し会話んした。三人はエーヴァ、ビアンカ、シイラというらしい。いつもジュリアンヌ様の後ろに隠れているイメージだったが四人は本当に仲良しらしく、三人とも可愛らしいお嬢さんだ。取り巻きなんて言ってごめん。


 大喜びで昼食を済ませたあと、ニコラスたちに合流して今日のミッションをこなす。

「衛生面は気をつけましたし、食材も昨日仕入れたばかりのものです。ですが、私は素人ですし絶対安心というわけではありませんので、必ず毒味をしてもらってから食べてくださいね!必ずですよ!!」


 周囲に潜んでいる彼らのお付きの人にも聞こえる声で言いながらクッキーを出すと、お付きの人々がそそっと出てきてクッキーを受け取りにきた。クッキーの袋を渡しながら声をかける。


「皆様に食べさせるようなものでは無いとの判断でしたら処分をしてください。お身体が一番大切なので…」

「あなたがくれた物を処分などできるわけがないでしょう。必ずいただきます。」


 ニコラスが話を遮り、そっとクッキーを取ろうとしてくる。


「そうだ。君が俺たちに何かする訳がないじゃないか。」

「心配症だなぁ。そんな君も可愛いけれど。」

「…」


 皆が口々に、一人だけ目線でだが訴えてくる。


「ダメですよ!皆様のことが大事なんですから…約束してくださらなければあげれません。」


 人差し指を顔の横で立てながらウィンクをする。

 なにこれ、身体が勝手に…恐るべしヒロインの血……!!

 私の必殺スマイル&ウィンクを受け四人が頬を赤らめてうなづいた。

 ちょっと不本意だが皆が納得してくれたからまぁ良いか。これで約束は果たした!明日からは女子とランチタイムが持てるー!!

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