ここはどこ?
初めての投稿なので、勝手が分かりませんがよろしくお願いします。
パシンッ!!
「いい加減になさって!!そんなもの王子に食べさせて何かあったらどうなさるの!」
目の前が一瞬真っ白になってフワフワとしたと思ったら、パッと周囲に色が戻った。
目の前には金髪ストレートのはっきり顔の美人さん。
それからその後ろにタイプが違うけれどそれぞれ整った顔の女の子たち3人組。
あれ?私、この人たち知ってる…
いや、もちろん散々説教を受けた挙げ句に平手打ちをされてるんだから知ってて当然なんだけど。
そうじゃなくて、この人はジュリアンヌ様!乙女ゲーの悪役令嬢。そして、私はソフィア!オーロラ姫のご加護を得るヒロインじゃないの!!
どうして?どうしてこうなった!?
確か私は高校の入学式に行く途中で事故にあって、入院していたはず。やっと最悪だった中学を卒業できて、死ぬ気で勉強して合格をした高校に通えるはずだったのに……
私は秋山実。だった。
趣味は食べることと料理。
部活は陸上部。
勉強は中の下だったけど、入試に向けての猛勉強でなんとか名門女子校への入学を勝ち取った。
どうしてその高校にこだわったかというと、それは中学にいい思い出がなかったから…!おもに男子に!
陸上部の朝練で走り込んでいるから毎日はらぺこ。
休み時間は食べるためにある!食べられるからこそ幸せな時間だった。その幸せな時間のためにせっせと毎日パンやらクッキーやらを作って持って行っていた。
よく食べる。男子より食べる。それだけで揶揄うには十分な理由になったらしい。
おまけに秋の山の実りなんて名前のおかげでさらに奴らの拍車をかけていた。
冬籠りの準備か?と言われ、冬眠するなよ〜?と言われ…せっかく友だち(女の子)のために多めに焼いてきているお菓子をつまみ食いされ。
おまけに肝心の女友だちは、常に男子が揶揄いに周りを囲むせいで苦笑いで遠巻きに見ていた。
「実って男子と仲良いね。いつも楽しそうでなかなか声かけれないよー。」なんて言われた。
思い出してもイライラする!
あんなの仲良しじゃないから!
私が仲良くなりたいのは可愛い女の子!
お菓子の感想を聞いて、拘ったポイントを聞いてもらって…あんな何食べても同じ反応しかしない男子のために作ったんじゃなーい!!
それで男なんていない女子校を受験したのに、事故にあったせいで入学式に行けなかった。ベッドの上でお姉ちゃんが持ってきてくれたゲームをしながら早く治れと念じていたのに。
そういえば急にお腹が痛くなって、周りがバタバタし始めていた気がする。
私、あのまま死んだってこと!?
「あ、あの…?大丈夫かしら?私ったらそんなに強く叩きすぎたかしら…?」
あっいけない!ぼんやりしていたら、悪役伯爵令嬢がオロオロしてる。きつくて厳しいと評判の伯爵令嬢だけど、毅然とした態度は崩さずにしているが目の奥ですごく心配しているのがわかる。うん、平手打ちも不意打ちだからびっくりしたけど力は強くなかったもんね。
「あ、いえ大丈夫です。」
ちょっとぼんやりしていただけで。そう言おうとした時、誰かがさっと私たちの間に入り込み目の前を背中で隠された。
「何をしているんです?ジュリアンヌ。手を挙げるなど淑女のすることでしょうか。いつもソフィアに淑女とは、を語っている貴方のすることとは思えませんね。」
そう言って私を庇ったのは、この国の第二王子ニコラス様。第二王子ながら、次期国王と噂されるほど優秀で、おまけに美形。
そしてジュリアンヌ様の幼い頃からの婚約者だ。
「私は別に。その方が貴方にその手作りクッキーを差し上げるつもりだと仰ったのでお止めしていただけですわ。ニコラス様が召し上がるわけありませんのに。」
「勝手に僕の気持ちを決めつけないでもらいたい。ソフィア、貴方が作ってくれた物ならなんだって嬉しいですよ?」
ジュリアンヌ様への冷たい目が嘘のように私の方を振り向いて蕩ける笑顔を向けたニコラス様が言った。
「そんな!いけませんニコラス様。そんな何が入っているかも分からない物お口に入れられたら…!」
「黙ってください。僕は彼女を信じています。」
再度、凍りつきそうな目を向けられたジュリアンヌ様たちは何か言いたげなのを堪えるようにして一礼して去っていった。
「大丈夫ですか?僕が君のお菓子を食べたいだなんて言ったせいで、君を酷い目に合わせてしまった。謝ります。」
悲しそうに目を伏せたその顔は完璧!まさにメイン攻略キャラだね!!
そんなことを考えながら見つめていると、ニコラス様はほんのり顔をピンクに染めて見つめ返してきた。そして、すっと私の手の中にあったクッキーの袋に手を伸ばす。
「これ、いただいても良いですか…?」
はっ!これ、ニコラスのイベントだ!!思い出せ思い出せ。なんて言うのが正解だった?
1 自信作なんです!そこのベンチで一緒に食べましう!
2 ジュリアンヌ様に叱られてしまいました。私、失敗ばかりですね。
3 一生懸命に作ったんですが…お口に合うか不安です。
確かこんな感じの選択肢だったはず。そしてこの王子は天然で天真爛漫で王子を特別扱いしない主人公に惹かれていくはずだった。だから……
「自信作なんです!そこのベンチで一緒に食べましょう!」
「貴方は…あんな事をされたのにもう笑顔なんですね。良いですね。ベンチで食べるなんて初めてなので楽しみです。」
眩しそうにソフィアを見つめながら、ニコラスは誰にも聞こえない声でつぶやいた。君の明るさに僕は救われる、と。
これが好感度アップの流れ。だから私の正解はこうだ。
バキ!バキバキバキ!!
「あっ私とした事が!ついうっかり!こんなもの王子に食べさせるわけにはいけません。責任を持って処分しておきますね。」
袋の中のクッキーを思い切り握り潰してニコラス様に一礼した。
「え!?あの、ソフィア?」
呆然としているニコラス様が回復する前にさっさと退場だ。今日は授業も終わったし、このまま家に帰って作戦会議をしなくては……!!
お読みいただきありがとうございました!