勝つ為に?
さて、これからどうしよう。
正直、最初の目的である生き抜くことはもう出来ている。
ここでの生活も慣れてきた。
今の目的は〈漆黒犬〉に勝てるぐらいの力をつけることだ。
だけどここらの魔物はあいつが作ったものだ。
今回大量虐殺したので魔物はほぼ残っていない。
では、次はどこで力をつけるかだが、未踏破区域ではもうできないのはわかっている。魔物がいない場所で僕が力を付けるのは非効率だ。
なら、行先は決まっている。
人の居るところだ。
だが・・・・・・行きたくない。
理由は幾つかあるがその最たる理由は僕は向こうに、と言うより人に良い印象を抱いていないと言うことが起因になっている。
殆ど何も知らないのに良い印象も何もないんだろうけど。
・・・・・・・・・・・・はぁ、仕方ない、行くか。
甚だ不本意だ。
でもこれも僕があいつに勝つ為だ。
じゃあ、一旦、パティルの町に行くか。
今の僕なら10~20分程度で着くはずだ。
ん~~~、やっぱり客観的に見ると最初に比べると強くなったと思うな。
きっと、もっと強くなって同じこと思うんだろうな。
僕は新しくなった【能力】、『消えし存在』を発動し出発の準備をした。
・・・・・・・んじゃ、出発。
♦♦♦
さてさて着きました着いてしまいましたパティルの町でございます。散々な目にあった唯一の場所、まさにある意味究極の元居場所と呼んでもいい。
・・・・・・・・・もう町の面影すらないが。
やっぱりあの炎はすごかったんだ。
正直に言ってあの発動時間さえ何とかすれば未踏破区域でも生きられる実力が町を燃やし尽くした魔法使いにはある。
なのに何故あんな盗賊団に入っているのか。
愛着があるから?
そんな理由ではあそこまで強くなれないはずだ。
なんだかなぁ~、今更だが気になってきた。
あの強さはどのように手に入れたのか。人格面には興味はない。知ったところで意味もないし。まぁ、いずれ会う時があるだろう。そんな気がする。
ん~、ここからどうしよう。
燃え尽きた町に居ても何もできないし、別の町に行くにしても王都ぐらいしか知らないし。そうだ‼王都に行こう‼なんてなることはない。絶対に人が多い場所に行って僕が王都に圧倒されない未来が見えない。
とりあえずは北に向かって進んで村とか町がないか探そう、最悪なかったら王都に行くって感じで。
そう言えば家から持ってきた?本をまだ読んでなかったな。歩きながら読もうかな。
近くに情報源があったのに読まなかったのは未踏破区域の所為だ。危険地帯で呑気に読書をする勇気は僕にはない。
しかし、こんなに緊張感がないのは久しぶりな気がする。町を出てから数日しか立っていないのに。
僕は本を片手にゆっくりと街道を歩いて目的地を探す。勿論探し方は【能力】任せだ。自力でどうにかすることもできるはずだがめんどくさい。
あれ?【狂魔法】は自力に入るのか?
そういえば【狂魔法】は先天的なものなのか?気付いたのは3歳なので後天的でもおかしくはない。
今思うが【狂魔法】は呪いであり奇跡だと僕は考えている。
・・・・・・・・まあ、どうでもいいか。
今は本を読もう。この本は魔法に関係する本だ。【狂魔法】について知るためと言うのもあるが単純に魔法自体にも興味はある。
内容は・・・・もっと簡単に言えばいいのに。
訳すと魔法には属性がありその属性は火・水・土・風・木・光・闇、の7属性ありそれを基本属性と呼ばれている。
基本的に人間は個人個人で適正属性が違い、殆どの人間が基本属性を最低一つは持っている。二つ以上持っていると天才とも呼ばれる。適正属性は生涯変わることはない。
魔法は魔力を込めることで威力が上がり、威力によって下級・中級・上級と分けられている。上級の中でも飛び抜けて威力が高い魔法は禁術と呼ばれる。
基本、魔法を使うには詠唱が必要となるが熟練の魔法使いは詠唱を短く省略したり一流と呼ばれる者は無詠唱、つまりは詠唱を唱えなくとも魔法を使うことができる
魔力保有量は魔力を使い切ることで増やすことができる。
魔力を使い過ぎると倦怠感、吐き気、頭痛、などが起き易く、ひどい時は意識混濁や最悪の場合、死ぬ。
こんなところかな?
ただ納得いかないことが2つある。
1つは僕は詠唱をしていないことだ。
本に書いてあることが本当だとすると僕は一流の魔法使いだということになる。これがどうも納得いかない。
いや待て、もしかすると詠唱を必要としないのは【狂魔法】の特性の1つなのかもしれない。それなら納得がいくな。
【狂魔法】はいいとしてなんで基本属性には詠唱が必要なのだろうか。
ん~~、わからないからこれは保留で。
んで2つ目は基本属性以外の魔法の存在をしっかりとは明言されていないことだ。
基本属性って、もう個人固有の属性あること示唆してるんだけど。
多分だがこれを書いた人は僕と同じ固有の属性を持っていたか知り合いにいたかのどっちかじゃないか
な。
ここでちゃんと書かれていないということは固有属性を持っていた人に不利益になることがあるから?
本を読んだだけでここまで人間社会が胡散臭く感じるなんて、ますます王都に行きたくなくなった。
ついでに言うと適正属性の確かめ方は5歳になると教会で確かめられるらしい。そうしなければいけない義務みたいなものがあるようだ。
その理由は簡単、稀にいる聖女と聖者を見つけるためだ。
聖女や聖者と見分ける条件は簡単で神聖属性を持っているかどうかだ。
どうやらこの神聖属性、穢れを元に戻ることができるらしい。
僕と真逆な属性だ。狂うことが穢れることと考えるとそれを元に戻せる聖者や聖女は僕にとって厄介や存在になるかもしれないな。
どうも出来過ぎていると感じるのは気のせいだろうか。それと僕は適正属性を調べることをしていない、と言うか出来ていないが正しいか。まっ、牢屋にいたから仕方ないけど。
とにかく僕もなるべく気を付けよう。
♦♦♦
二日ぐらいのんびり歩いていたある日、10m先で『時空探知』に反応があった。ちなみに常時『消えし存在』は発動している。
魔物だ。それもとても弱々しい。
『時空探知』には便利な機能があった。それは反応によって種族の違いが判ることだ。
今僕の中でどう分けられているのかだが、人間・魔物・その他だ。人間の枠にはエルフやドワーフ、獣人なども入っている。その他は主に別次元を見るために作られた枠だ。ちなみに地形などは元から分かるようになっている。
っと、【能力】についてはまた今度でいいか。
今は魔物だ。ここまで弱々しいとなるとどこかで闘争があった可能性が高い。そこで『時空探知』で魔物
の反応だけを探知したが殆どが弱々しい反応だ。闘争が辺りで起こっているのは間違いないんじゃないかな。きっと魔物はそこそこ反応の強い魔物たちにやられたんだ。
たぶんだがこの森では縄張り争いが激しいのだろう。
この街道は森を挟んだ形で出来ている、これだと盗賊や魔物に襲われることが頻繁に起こりやすいはず
だ。よくこんな場所に街道を作ろうと思ったものだ。
そんなことを考えているうちに10m先にいた魔物が近くに来たみたいだ。
僕から見て左手側の草むらの中でごそごそしている。
「さて、どんな魔物が出てくるのやら。」
そして、魔物は出てきた。