表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかの幸福  作者: Retisia
5/11

ただの勘


そいつは禍々しかった。



目の前にいること自体が絶望にさえ見えてくるのではないか、そんなふうな感想がでてくる。



そいつは犬型の魔物で恐ろしく巨大だ。肌の色、と言うか鱗の色は漆黒で目から出ている細い線が身体に浮き出ている。


その魔物の吐息は腐敗させる力でもあるのか、あたり一帯は異様な枯れ方をした草花や木がある。



・・・・これは近づいての攻撃はできないな。



近づけないと命中率が格段に落ちる、倒した者たちに毎回近距離まで近づいてから攻撃しているのはそのためだ。


遠距離で出来ればよかったんだがこれまでそんなことはしたことはなかったし、失敗し、攻撃したのがばれる可能性すらあった。


でも、それでもしておけば良かったって今なら思う。



僕の考えが甘かった。


気が緩んでいたんだ。


たったの2体魔物を倒せただけなのにここで生きられると勘違いしていた。



〈漆黒犬〉―――漆黒の鱗で犬だから―――は気が付いているにもかかわらず一向にこちらを見ない。

強者の余裕という奴だろう。


隠れし闇(ハイド)』も『空間狂偽(エリア)』も通用しない。


認識阻害(ブライト)』はどうかわからないが効いている感じではなさそうだ。


当然ながら身体能力、魔力保有量はぼろ負けしている。


勝てる見込みはほとんど摘み取られている。



ヤバイ・・・・・どうにか、しないと



全力で頭を回転させる。


この状況を打破する方法を見つけ出すために。


その時、ゆっくりと〈漆黒犬〉が僕に目を向けた。


その目は・・・・・・・・・殺意があった。



「ッ⁉⁉」



一瞬で僕の身体は恐怖で固まった。


僕を見る目には煩わしいものを見るような本来生き物に抱くことの無い感情が宿っていた。


さっきの殺意は少しイラッとしただけだろう。

それだけなのに動くことさえできなかった。


そして強者だけが抱くことのできる傲慢を持っている。


さっき感じた限りでは心底、人間をごみ扱いしているみたいだ。

この強さなら当然だろうが・・・。


そして〈漆黒犬〉は・・・・・右前脚の()()()()()()()()



「・・・は?」



なんでそんなことをした??



訳が分からない。



大量の鱗と血が地面に落ち、大地を汚していく。


鱗が大地に触れた瞬間、血が大地に広がって行く途中、それは起きた。


鱗が歪み、形を変えていく。


血が幾千、幾万の球体となり、形を取ろうとする。


そのを見届けようともせず〈漆黒犬〉は後ろを振り返り、未踏破区域の奥に消えていった。


なぜ攻撃してこなかった?する理由はあってもしない理由なんてないはずだ。


僕から何かを感じた?いや、それはない。

そんな必要がないほどに僕と〈漆黒犬〉の力の差ははっきりとしている。



ふぅ、まあいい。



とにかく()()()()()強敵は消えた。


問題は〈漆黒犬〉が残していった、()()()()()


あぁ、やっと謎が解けた。

未踏破区域の魔物が強い理由も魔物が異常に少ない理由も全て。


あいつが作っていたんだ。自分の肉体を傷つけて。


魔物が少ないのは傷を作る理由がないから。


未踏破区域の魔物はあんな強いやつの肉体で作られてるんだ、強いに決まっている。



そして、・・・・・・・・・・・万を超える魔物の群れに僕は囲まれた。




♦♦♦




〈漆黒犬〉が作り出した魔物たちはゴブリン、オーク、コボルト、トロール、と人間に呼ばれている。


見ため通り筋力重視で速度自体は大したことはない。


だが、確実に()()()()()()


隠れし闇(ハイド)』や『空間狂偽(エリア)』を使っているにもかかわらずだ。


たぶん、〈漆黒犬〉が作る魔物は多少の改造はできる。



あのやろう‼・・・探索系【能力】特化の魔物作りやがった‼



「あ、あぁぁ、、あがぁあああああぁぁああああああ‼」


「うぼぉぉぉぉぉぉぅぅおおおおおおおおぉぉおぉおぉ‼」


「ぐるぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁっぁぁおあぁおあ」


「ええ、え、ゆえ、いぁぃ、ぇぇき、へ、づでおさ、しぬ、い、ん‼」


魔物たちはこちらに向かって走ってきた。


ナルマ―やウザイラの身体能力を手に入れている僕には歩いているかの様な速度だ。逃げることは出来る。


だがここで逃げたら意味がない気がする。ただの勘だ、確証はない。



・・・・・自分の勘を、信じようと思う。


僕は自分自身だけを信じている。


信じる者が、あるのだから、それを信じるべきだ。





きっとこのさきに行くには必要なことなんだろう。




それに強くなるのも目的の1つと言ってもいい。






だからこそ










ここでこいつらを、














「 殺す‼ 」











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ