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いつかの幸福  作者: Retisia
2/11

まともな食事??


「い、生き残れた」


あ、あああ、あああああぁぁぁぁぁっぁぁあああ⁉疲れた~~~‼


それにしてもすごい威力だな、炎の壁。200mは離れてるのにここまで熱気来てるし。


そんなことより今の内にもっと遠くに逃げておかないと、殺される。


そもそも何が目的でパティルの町の住人を襲わる依頼を出したんだ?

その貴族には何か狙い、乃至(ないし)動機があるはずだ。


僕が考えられる限りでは僕を生んだ女の実家、サぺイス公爵かその夫、バイル侯爵のどちらか、もしくはサぺイス公爵と敵対している貴族の確率が高いと思う。


これも盗賊の知識だが僕の親()()()()()の素行はセクレイト王国王都にまで届いていた、いや、この表現は正しくないな。もともと王都に住んでいたみたいだし。王都では最悪な評判でサぺイス公爵とバイル侯爵の家柄に傷が付いた。が正しいな。


貴族にとってそれは致命的らしく恨みで亡き者にしようとしてもおかしくはないみたいだ。


だが何故パティルの住人までそんなことをしなければいけないのか。


それは今回襲ってきた『無垢なる怪人(トゥーフィス)』の危険性を訴えるためではないだろうか。


サぺイス公爵は自分の私財を使いたくないからパティルの町と住人を犠牲に王様の危機感を煽り、『無垢なる怪人』の討伐をしようとしたのではないか。

あのクズにこの親ありってやつだ。


だがしかし、サぺイス公爵に敵対している貴族がやった場合も辻褄が合うのだ。


パティルの住人が死んだのをサぺイス公爵の所為にできればサぺイス公爵は王都での発言力が弱まる可能性が高い。

それを狙ってやられていたらこちらから探し出すのは難しくなるだろう。


何故かって?そんなに頭回る奴が証拠を消さないわけないのだ。


他にもいろいろ考えられるけど、どれも今一つ根拠も証拠も足りない。


・・・・もう、このことを考えるのは辞めよう。


僕がどれだけ考えても何もする気はないし、折角貴族のいざこざから逃げるためにあの屋敷留まっていたのだ。それでは本末転倒である。




♦♦♦




あれから1日たった。


今、僕は()()()未踏破区域直前の半径50m位の草原で休息を取っていた。


さっきまで僕が歩いていた場所が未踏破区域でないことはこの草原にきてからすぐにわかった。


だって、ここからでも分かる位の強烈な気配がいくつも巨大な樹木が立ち並んでいる森から感じるんだから。

全く、ふざけているとしか思えないね!


ついでに言うと僕はここに来るまで一度も魔物に遭っていない。全員逃げ出したんだろうね、あんな炎の壁が出来たらしょうがないわ。


だけどそれは僕にとって結構痛いことだ。

魔物は身体能力は高く、必ずそこそこな魔力保有量を持っている。僕にとっては何より美味しい存在だった訳だ。

そんな敵に恵まれず、今いるのは勝てる可能性が低すぎる者たちばかり、理不尽過ぎる。


本当は植物からも奪えるんだけど奪われた植物は黒くなって萎れる。こんなのが大量に残ったら僕が探されている場合、痕跡が残ることになる。

それは駄目だ。1日程度で撒いたと安心することは僕にはできない。


この休息使って僕は魔法の袋から水とパンを取り出し、食べることにした。


魔法の袋は中身の時間が止まっているわけではないので食料が腐ってしまう。持って来ていた食料は干し肉などの非常食が大半だがパンなども少しだが入っている。水はたくさん持ってきていたのでたいして困ることはないだろう。


そういえば僕は誰も口をつけていない新しいパンを食べるのが初めてだ。いつも牢屋に持ち込まれるのはあいつ等と使用人の食べ残しだけだったからな。


当初、1歳位の時―――僕が物心付いたとき―――からこうだった。まともな物を食べた記憶なんてない。悲しくなるのでこれ以上は止そう。


ゆっくりとパンをかじり味わっていく。とても美味しい、こんなにちゃんと味わって食べたのは初めてだ。

本当に、美味しい。たまに水を飲みながら食べていく。


「おいしかった・・・・・んっん~~」


食べたら眠くなった。それは仕方がない。

いくら大人と同程度の身体能力があるとはいえ、まだ6歳なんだから。これまでが重労働過ぎたのだ。


僕は毛布を取り出して丸まって寝転んだ。


よほど疲れていたらしくすぐに意識を落とした。




♦♦♦




目が覚めるとそこは真っ暗な場所だった。


あれ?僕、浮いてる?


地面に寝転がっている感覚はしない。


なるほど、これは夢だな。こんなのが現実だったらもうどうしようもないし。


何かないか探してみると少し離れたところに滅紫(めっし)色のモヤモヤしたものがあった。僕はそれを見に行くことにした。近くで見てみると僕には親近感が湧いた、気がした。


ん?これ、もしかして【狂魔法】?

そう思った僕はモヤモヤに触ってみた。すると滅紫色のモヤモヤは僕の腕に吸収されていった。


「・・・ウっ⁉」


その時に、頭痛がした。


「あ、ああ。なるほど」

さっきの【狂魔法】の塊を吸収したことで【狂魔法】などについての知識が流れ込んできた。


どうやらここは僕自身の精神がいる場所みたいだ。だからか、こんなに暗いのに落ち着く。

【狂魔法】の能力の確認は目が覚めたらでいいか。


さて、これからのことを考えよう。


今後のことを考えるとあの未踏破区域には入った方がいいと思う、と言うかそれしか選択肢が残されていないと言ってもいい。

今から目的地を変えるにしても引き返さなければいけない。

それは僕が『無垢なる怪人(トゥーフィス)』に殺される可能性が高い。

あの時は相手が気を取られていたから上手く殺すことができたけど次も上手くいくとは考えづらい。

それに町に行っても僕にうま味もないことが分かったし。


うん、やっぱりこのまま未踏破区域に行った方がいいな。


考えなければならないことは終わったし特にやることがないのでこのまま寝ることにした。


おや、す、み



♦♦♦



目が覚めた。


今は日の出直前位の時間だから10時間は寝ているはずだ。ついでに言うと1日は24時間だ。


一晩寝たら体の調子も戻ってきた。子供の回復力は本当にすごい。たぶん【狂魔法】も理由の一端だろう。


朝食を食べ、やることをやったらすぐさま出発した。


出発時には太陽はすっかり昇っていた。


「絶対、生き残る」


そう言って未踏破区域、いや、誰も生き抜けなかった危険区域に入った。











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