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いつかの幸福  作者: Retisia
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まさかの急展開‼

誤字・脱字の報告をしてくれるとありがたいです。



「このクソガキが‼」



そう言って僕は母親に打たれた。


いつものことだ。そう感じる様になったのはいつからだったか。


物心(ものごころ)が付いた時にはもうこんな風だった。父親は夜にしか帰ってこない。別に仕事に行っているわけじゃなく、ただ遊び歩いているだけだ。よくもまぁこんなのと結婚したなと両方に同情したくなる。するわけないが。



そんなことを考えて現実逃避をしている間も母親に全身を蹴られ続けている。子供に暴力を振るって楽しいのだろうか?いや、楽しいじゃなくて便利なんだろう。自分より弱いものを傷つけるのは人の性だ。なら、僕の両親は受賞されてもおかしくはないじゃ?・・・・主に反面教師として。確実にみんな理解してくれるだろうな。・・・・何がとは言わない。



「ちっ!気味悪い目しやがって‼さっさと元の場所に戻りな‼」



おっと、もう終わりか、今日はなかなか早かったな。まぁ、仕方ないか。痛がる素振りを見たくてやってる訳だし、そりゃあ、何の反応もなかったら気が乗らないだろうな。こっちとしては好都合だけど。



僕は元いた場所――どこからどう見ても牢屋――に戻った。なぜか家には牢屋がある、他の人の家にはあるのだろうか。いや、ないだろうな。この家がおかしいだけだ。他の人の家に入ったことないから分かんないけど。・・・・ないよね?無いのが普通だよね?そもそもあったとして何に使うっていうのさ。なに?この国日常的に拷問認めてるの?



僕が居る屋敷はそこそこ大きい。普通の屋敷の3倍はある・・らしい。なぜそんなに大きいのかと言うと両親はセクレイト王国の貴族だからだ。

世間知らずの放蕩貴族、両親には言い当て妙だと世間は思っているし、僕もそう思ってる。


政治が云々で政略結婚させられ、セクレイト王国のサぺイス公爵――母親の父――の領地の南部、パティルと呼ばれる町に厄介払いさせられたらしい。

あの世界中の雲を集めて作った雷雲の様な性格じゃそれも自業自得にしか感じないけど。


パティルの町は辺境と言われていて、滅多によそ者は来ないみたいだ。


なーんでそんなに辺境嫌がるかね~?もっと人は自然を愛するべきだよ。



そんな情報をどうやって知ったかって?


両親の愚痴から推測したに決まっているじゃないか。それ以外に情報を手に入れる手段がないからね!殴られる意外にこの牢屋から出ることはないんだから、仕方ない。



今、僕は6歳だけど推測位は簡単にできるし、そこに伴っている感情も理解できる。



それを加味すると僕は将来が色々と不安になっていくのは気が使いふりをするべきだ。本当にそう思う。




♦♦♦




夜、目が覚めた。



どうも底冷えするような感覚がある。こんな時は必ず何かある証拠だ。



僕は意識を集中させ音を見逃さないようにした。探知の魔法、と言うか普通の魔法の使い方がわからないから五感に頼るしかないのだ。



静かだ。




・・・ん?静か??いつもならば夜は虫が忙しそうに鳴いているはずだ。



異常だ。



虫が鳴かなくなるのは何かの影響を受けている時だ。



そうなると、魔物か?だけどそうとは思えない。魔物が町に近づくなんてよくあることだ。

この程度で底冷えする様な感覚にはならない。もっと別の理由のはずだ。



ん~~駄目だ。情報量が少なすぎる。こんな時にはどうしてもこの牢屋が恨めしく思う。



つまらないことに気を取られていた時、悲鳴が聞こえてきた。一つだけじゃない、大量の悲鳴だ。



僕は耳に意識を集中させ探知した。



たくさんの足音、魔物じゃない、人だ。



つまり盗賊が来たわけだ。これは拙い(まずい)。盗賊が町などを襲う目的は考えられるだけで3つだ。



1つ目は掠奪、つまり食べ物や金目の物を取るため。大体の盗賊がこれに当てはまるんじゃないだろうか。



2つ目は殺すことが目的の場合だ。人を殺すことに喜びを感じるサイコパス野郎の思考回路は分からないからどう動くか見当もつかない。



3つ目は復讐が目的の場合。この場合は2つに分かれる。1つは復讐対象がこの町にいてそいつだけを殺すことが目的の場合。2つはこの町自体が復讐対象だった場合だ。



・・・どれもありそうだ。とりあえず3つ目の復讐対象がこの町にいるだけはないな。だって悲鳴響いてるし、盗賊の足音いくつもあるし。



順当にいけば理由は1つ目だろうな。そう仮定した方がよさそうだ。どんな理由にしたって必ずと言っていいほどこの屋敷は狙われる。



ん?おっと、やっと両親も気が付いたか。さて、どう動くか。



僕は勿論(もちろん)両親がしっぽ巻いて逃げるに賭ける。あいつらが何してももう無駄そうだし。



「くっ・・・ははははははっ‼」



やっぱり逃げた。これで僕も自由に動ける。



貴族関係のいざこざはめんどくさそうだから僕はこれまで動かなかったがこれで生死不明でい続ければそんなこととは無縁でいられるはずだ



さて、逃げるためにこの鉄格子(こうし)をどうにかしないと。



僕には1つだけ魔法のようなものが使える。これに気が付いたのは3歳の頃だ。



この力を僕は【狂魔法】と名付けた。



そもそも魔法は火・水・風・土・木・光・闇のどれかの属性に属しているらしいんだけど僕の【狂魔法】のような特性を持っている魔法は無いらしいのでカテゴリー外と言う意味でそう名付けた。



僕の【狂魔法】はすべてを狂わせる。無機物でも生物でも。



僕は鉄格子に手を向け、発動した。



すると滅紫(めっし)色――灰みのある暗い紫色――の魔力が鉄格子に触れた瞬間、僕が望んだ方向に歪んだ。



これは狂うことに指向性を持たせることで出来る。



この考えは【狂魔法】の基本だと僕は思っている。



【狂魔法】はどの様に狂わすかを決めることで全く別の力になる。



まだ僕も【狂魔法】の全てを知っているわけではない。



まぁ、それは追々見つけていけばいい。とにかく鉄格子を通れるように出来たから逃げる準備をしないと。



僕は父親の部屋に行った。



何か使えるものがないか調べるためだ。なるべく急がないと盗賊達が来てしまう。



部屋には沢山の物があった。その中から適当に――乱雑にと言ってもいい――探しているといい物が見つかった。



魔法の袋だ。



腰巾着程度なのにたくさんのものが入れれる文字道理まさに魔法の袋だ。



貴族や高位の冒険者ぐらいしかもっていない物だがさすがは腐っても爵位の高い貴族こんな辺境に厄介払いされたクズにも持たせるとは。



中身を見てみるとそこには結構な量の金貨が入っていた。



「これがあればとりあえずは」



父親の部屋からめぼしい物を貰った。・・・置いていったんだから捨てたのと同じはず。



僕は急いで食糧庫に行って食料を詰められるだけ詰めた。



これだけあれば1~2ヵ月は過ごせるはずだ。どこかの町などに入って食料を買うのもいい。



だが最も考えなければいけないのはこれからどのように脱出するかだが・・・



「ヤバイ、なにも思いつかない」




・・・・・なにも思いつかなかった。




いや、しかたないだろ?パティルの町がどんな風に入り組んでて、どんな形をしているのかなんてわからないし、知らないんだから。



知ってたら今頃こんなところに居ないわ‼



と、とりあえず外に出てみよう。それから決めても遅くないよね?・・・・・多分。



♦♦♦




僕がこの町について知っていることは少ない。



1つはこの屋敷が町の中央にあること。



2つ目は出入り口が4つあることぐらいだ。

このことも両親の話を盗み聞きして知った。



盗賊は足音からして全方位から来ている。かなりでかい盗賊団みたいだ。



これでは盗賊に会わずに逃げることはかなり難しい。



だがそれをやらないと生き残れない。



玄関口にたどり着いた僕はゆっくりとドアを開いて周囲を警戒した。



今は誰もいないらしい、僕は森に向いている南口から町を出ることにした。



王都がある北口には盗賊が待ち構えている可能性が高いからだ。



相手の目的が分からないので、僕は金を持っている奴ら、つまり貴族が狙われていると仮定している。

町を襲うのなら相応の下準備がされていてしかるべきだ。

それはつまり両親の性格なども知られていると考えていいはず。



僕も両親、あああぁ‼もういいや、あいつ等が北口に向かっていると推測している、と言うか確信している。



あいつ等しょうもない誇りぐらいしか持ってないだろうから、盗賊相手に自分の考えが読まれるはずがないなんて思ってるんだろうなぁ。



僕は走り始めた。



運動にはそこそこの自信がある。

ずっと牢屋にいて暇だったから筋トレしてたんだよね。まぁそれ以外にも理由はあるんだけど。



「・・・っ⁉」



悲鳴が聞こえた。それも相当近くにだ。



「・・・・・・よし」



少し近づいて様子を見守ることにした。



僕は【狂魔法】で僕の周辺を狂わせ誰にも見えないようにした。



次の曲がり角を左に曲がってつきあたりを右に曲がる直前で聞こえた・・はず。



どうしてこんなに詳しく知ってるかって?



音の反射で推測したんだよ。だから絶対に合ってるとは思わない。当たらずも遠からずって感じだ。



悲鳴が良く聞こえてきた。


「道は間違ってはいなかったな。」


小声でそう言い、右の曲がり角で僕は止まり覗き見した。



起こっていることは極めて簡単だった。ただ盗賊が女性の胸を剣で刺そうとしているだけだ。

僕はそのことを自分でも驚くほど冷静に見ていた。もう少し卑猥なことをされていたのなら一緒に殺そうとか思ってんだけど。色々と気が変わった。



今だけ助けようと思う。

これは正義感じゃない、ただどうしようもないほどの同情と目的の為だ。



僕は盗賊達に気付かれない様に姿を隠す効果を消し、左手を盗賊に向けて【狂魔法】を発動した。

気付かれない様に地面すれすれに魔力を流した。

それが功を奏したのか盗賊の身体に【狂魔法】の魔力が絡みつき全身から盗賊の肉体に侵入していった。




そして、すぐに変化は起きた。



「・・・・・アッ⁉」



数秒もするとそんな声を出し盗賊は無造作に倒れていった。

襲われていた女性は突然のことに頭が回らないのか唖然としていた。



僕は気付かれる前にその場から立ち去った。立ち止まっている暇なんてなくなったからだ。



さっき僕が何をしたのかと言うと【狂魔法】で身体機能を狂わせたのだ。

今の盗賊の外見は普通だが中身はミキサーで混ぜたようになっているはずだ。

この効果を検証するために牢屋に入ってくる鼠を捕まえて試した。

この効果を出すためには大量の魔力が必要だがそれに見合った効果を引き出していると思う。



僕は急いで南口を目指した。



いそがないと、速く、速く⁉じゃないと、町が‼



僕がまだ知らないだけかもしれないが【狂魔法】には特殊な特性が1つある。

それは殺した対象の身体能力、魔力保有量、記憶を奪うことができるというものだ。

これが僕が運動に自信がある根拠にもなってる。



僕は鼠を大量に殺したから身体能力はそこら辺の大人を簡単に超えているはずだ。

断言できないのはその、そこら辺の大人を知らないから比べられないのだ。


だけど鼠は魔力を極微笑と言えるか言えないかしか持ってなく、魔力保有量は雀の涙程度しか上がらなかった。

まぁ今まで魔力不足で困ったことないからいいんだけど。


記憶なんてもってのほかで何の役にも立たなかった。

分かったことと言えば鼠の生態と屋敷に空いている穴だけだ。



っと、そんなことはいい。問題は僕が盗賊の記憶を見て分かったことだ。


どうやらこいつら貴族に雇われているみたいだ。


直接あの盗賊が関わっているわけではなく、盗賊団―――『無垢なる怪人(トゥーフィス)』―――の首領が取引したみたいだ。


依頼内容は”パティルの町の住人を殺せ„だ。理由は知らなかったみたいだな。

だけど掠奪の許可も下りているみたいでその時間ももう終わる。


あと数分もするうちに『無垢なる怪人』の魔法使いが上級魔法をこの町に向かって使ってしまう。

そんなのに巻き込まれるのは真っ平ごめんだ。


そんな最悪なことが分かったこととは別に盗賊の記憶には色んな知識があった。

特に今役立つのがここら周辺の詳しい情報と出入り口の近況だ。


どうやら僕が向かっている南口は未踏破区域になっていてとても強い魔物がうようよいるらしい。

わざわざ危険を冒す輩がいるとは思えないので南口には人を置いていないみたいだ。


これなら楽にここを脱出できるはずだ。それからが辛いだけで。


僕が現実に苦笑した時、底冷えする感覚が強く襲い掛かった。

何が起きるのかは()()()()()()北の方からの強大な魔力で想像がつく。



「ちっ!あんまり魔力は使いたくなかったんだが、仕方ない‼」



僕は魔力で身体強化を行った。


これは盗賊の知識に在ったもので僕自身は知りもしなかったし、やり方も分からない初めての試みだがうまくいったようだ。


これで僕の今の速度はさっきの数倍には及ぶだろう。



「っ‼ヤバイ」



やっと南口が見えてきたその時・・・・『無垢なる怪人』の魔法使いの魔法が発動した。



「・・・は?・・・な、んだ・・・あれ、は?」



あれは、巨大な壁だ。




巨大な炎の壁、そういう他はない。少なくとも僕はこれ以上に的確な言葉を知らない。


炎の壁は一切合切を呑み込んで僕をも取り込もうとしている。


・・・僕を?・・・・だ、駄目だ。そんなこと、そんなこと受け入れられない。自由が手に入った。これから幸せにならないといけないのに、・・・走れ、・・・・もっとだ‼南口さて超えられれば‼


炎の壁は僕に1mもないほどに近づいていた。



「いそ、げ、急げ、急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げええええええええぇぇええええええええええええええぇぇえええええええええええええええぇぇぇぇぇぇええええええ⁉」



背中を焼かれながら僕は南口を通り抜け、生き残った。












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