⑥
「彼氏の写真? 見せて、見せて!」
「やだ、夜じゃないの? やらしい~!」
「お相手、いい男じゃない? わぁ! これって、彼の部屋じゃないの? クリスマスケーキがある! 去年の?」
「四人の中で、一番最初に結婚かぁ……!」
友人達は、私のスマホを取り合って、彼と私のアルバム画像を見ている。
今日は、私の結婚報告会だ。半年後に、挙式を予定している。私の部屋に集まって、友人達に式を手伝ってもらう話をしていた。
「ねえ……これって何だろう?」
「あれ? これって、テレビ?」
「えっ! ちょっと……」
さっきまで、にぎやかだった友人達が、急に黙り込んだ。
二人は、顔を見合わせた。もう一人のスマホを持った友人は、私のとなりに座り直した。
「ねえ、ちょっと、ここ拡大して見てもいい?」
「いいよ。どうかした?」
友人の指先が、写真画像の一部を拡大した。
「…………!」
後ろからのぞき込んでいた友人達も、画像を見て口々に叫んだ。
「やだ! 何これ?! 心霊写真?!」
「えっ! やだ、気持ち悪い!」
拡大された画像には、『笑顔の彼』の背後にあるテレビ画面の中に、もう一人の『鬼の形相をした彼』が映っていた……!
あの時、テレビは消していはずだ。食事中は、テレビを消すのが彼の習慣だった。私が、彼の習慣に合わせる為に、テレビのスイッチを自分が切った覚えがある。
偶然写り込んだとか、光の加減がとかいうには『鬼の形相をした彼』は、鮮明すぎる。フイルムなら二重露出の可能性があるかもしれなかった。だが、この写真は、スマホで撮ったデジタル画像だ。
私は、無言で画像を消去した。
彼に夢中だった私は、写真の存在を忘れることにした。あの時の私は、どうしても、彼と幸せな結婚式をしたかった。
写真は、警告してくれたというのに……!
一年後、彼のDVに悩まされ、離婚することになってしまった。
私は、あの写真を撮る時、小さなおまじないを心の中でしていた。
『彼と結婚したら、幸せになれるかどうか、写りますように……!』
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