第二話 誘いの言葉
渚公園は学校から少し離れたところにある小さな公園で、若干の遊具と申し訳程度のベンチがあるだけの特に変わったところのない公園だ。
・・・と、迅はなかば現実逃避気味に公園の様子を思い出す。
(いやいや・・・ちょっと待てよ。)
冷静になるために迅は一度思考を切り替えてみる。
手紙の文字を見間違っている可能性も十分にあると考えたからだ。
目をつむり、少したったあとに再び目を落とす。
もちろん、手紙の内容は変わらなかった。
「ねぇ・・・迅・・・」
そんなことをやっていた迅は隣からの静かな声で現実に戻される。
恐る恐る隣をみると、紗耶は俯いていた。
表情はみえないが、なにやら迫力のあるその姿に迅は硬直してしまう。
そんな迅のことなどお構いなしに紗耶は次の瞬間には笑顔でこちらに聞いてきた。
「いつから、妹萌えになったの?」
「そこ!?」
唐突に出た言葉に思わず突っ込む迅。
しかし、紗耶は変わらずに笑顔でなおも追及してくる。
「ねぇ・・・迅。いつからなの?いつからそういうプレイに目覚めたの?なんで言ってくれなかったの?私じゃダメなの?私迅のためならなんでもやるのに・・・迅は私なんかじゃダメなの?」
「違う!!!!」
恐らく混乱していたのであろう紗耶の台詞に迅は大声で否定した。
驚いていた紗耶に迅は少し怒ったように言った。
「大声だしたのは悪かった。でも、自分じゃダメなんて言うなよ。俺は紗耶がいいんだ。いや、紗耶じゃなきゃダメだ。」
「迅・・・」
迅の紗耶を思っての台詞に紗耶は嬉しそうに涙ぐむ。
そんな紗耶の姿に思わず迅は紗耶の体を抱き寄せる。
「一応、誤解を解いとくと、俺は紗耶以外の女の子に興味はないし、何より妹プレイなんてことはさせないよ。そこはわかってくれ。」
「ふふふ・・・迅・・・」
真剣に言った迅の言葉は、抱き寄せたことによってデレデレし始めた紗耶には若干届いていなかったかもしれないが、それでも迅は少しほっとする。
(にしても・・・これはなんだ?)
まず第一に迅には妹などいない。従って、「お兄さま」などと呼ばれたことはない・・・はずだ。
次に、「ひかり」という名前。
どこかで聞いたような名前だが、迅に対して「お兄さま」と呼ぶ「ひかり」という名前の人は心当たりがない。
それに・・・
(このタイミングでの意味深な手紙って・・・凄い厄介な気配が半端ないんだけど・・・)
1週間前、迅と紗耶香は謎の女性に突然襲われた挙げ句に、紗耶に自身の過去を知られてしまった。
幸いなことに、なんとか撃退して、過去のことも紗耶に受け入れて貰えたが、しかし、何やら大掛かりなことが裏で動いてそうな感じの連中に接触したという事実がある以上、迅はこの手紙に不信感をもってしまう。
(どうしようかな・・・)
「迅、行こう。」
迅が悩んでいると、いつのまにか正気に戻っていた紗耶がこちらをみて、微笑んでいた。
「多分、この手紙の主は迅の敵じゃないよ。それはなんとなくわかる。」
「紗耶・・・」
こういう時の女の勘はあてになりやすい。
なにより、愛する人がそういうなら、安心できると、迅は頷いた。
公園まで移動した二人はベンチに女の子が一人座っているのを発見した。
制服のデザインから察するに、近くの有名な女子高のものと思われる制服をきた長く青い髪をもつ少女。
顔立ちは整っており、童顔っぽい顔つきで年齢は下にみえる。
体つきもほっそりしており、纏う雰囲気はどこかお嬢様のような優雅な雰囲気を醸し出していた。
「お待ちしておりました。お兄さま。」
近づくと、少女はこちらに気づいたのか立ちあがり、上品に頭を下げるとそう言った。
「君は・・・」
「覚えておりませんよね。お兄さま。」
悲しそうに微笑む少女。
迅は少し申し訳なく思いつつ頷く。
「仕方がありません。あんなに色々なことが起これば、過去の記憶なんてなかなか思い出せませんよね。」
「・・・・・!?」
少女の台詞に凍りつく迅。
まるで、迅の過去を知っているかのような物言いに思わず身構える。
しかし、そんな迅のことを気にした様子もなく少女は静に続ける。
「改めまして、お久しぶりです。お兄さま。私は、西園ひかり。お兄さまの妹です。」
「い、妹って・・・いや、それよりも君は俺のことを・・・」
動揺する迅に頷く少女・・・ひかりは、迅のことを慈しむように見つめて言った。
「お兄さまのことは昔のことも今のことも知っております。先週のことももちろん。」
「・・・・・・」
明らかにすべてを知っているという様子のひかりに迅は警戒心を抱いてしまうが、同時に動けないでいた。
自身の過去を知っている人間を前にして、やはり体が凍りついてしまった。
震える迅はふと、手に温かさを感じて隣をみる。
「紗耶・・・」
隣で成り行きを見守っていた紗耶が迅の手を握っていた。
紗耶は笑みを浮かべると、ひかりの方を向いた。
「はじめまして。私は夕日紗耶。迅の恋人です。」
ためらわずそう告げた紗耶の姿は堂々としていて迅は思わず見惚れてしまう。
そんな紗耶にひかりは笑顔で答える。
「存じています。夕日さん。お兄さまがお世話になっております。」
「その、お兄さまっていうのは?」
挨拶をするひかりに紗耶は直球でそう聞いた。
すると、ひかりは少し考えてから言った。
「お兄さまはお兄さまですよ。まあ、遠い親戚ていうのが近いですかね。」
「親戚?」
「ええ。」
紗耶のお陰で幾分か落ち着いた迅は努めて冷静にひかりに今回の目的を聞く。
「それで、何か用事があったから呼んだんじゃないの?」
「お兄さまは鋭いですね。」
微かに笑うとひかりは真剣な表情になった。
「用件は単純です。」
そこで迅の元へと近づいたひかりは紗耶が握っていないもう片方の手を掴むと言った。
「お兄さま。私とともに来ませんか?」
らっくがきこーなーはっじまるよー!
このこーなーはほんぺんにはかんけいないはなしやもしものこーなーだよー
〈勘違い〉
「迅はいつから妹萌えになったんですか?」
「いや、俺は・・・」
「隠さなくても大丈夫ですよ。お兄ちゃん?」
「違う!」
「兄妹禁断の愛が好きならそう言ってくれればいいのに・・・」
「あの、紗耶さん。俺のこと普段どう思ってんの?」
「大好きですよ。」
「嬉しいけど、そういう意味じゃなくて!」
「ところでお兄ちゃん。」
「だから、違うって!聞いて!」
「お兄ちゃん。あんまり煩いと・・・」
「な、なに・・・」
「お兄ちゃんを監禁して、私色に染めちゃうぞ♪」
「笑顔で何を言ってるの!?」
「いいから、お兄ちゃんは私に身を任せて・・・」
「さ、紗耶・・・まて・・・」
「お兄ちゃん・・・へへへ・・・」
手紙をスルーして、二人でいちゃつきました。
最近このコーナーのオチが同じになりつつあるので、ネタを増やしたい今日このごろ・・・
さて、更新のペースが少し落ちぎみですが、明日、明後日はしっかりとアップしたいと思います。
最近、皆様のお陰で、今までの作品で一番読まれている作品になってきました本作。
こんな下手な文章を読んでくださって、感想までもらえて、作者は嬉しくていっぱいです。
いつも応援ありがとうございます。
あと、ヤンデレ好きな同士のみなさんありがとう。




