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勇者達と俺氏2


折角だ。抜刀せずにやってみよう。そう思ったのが癪に触ったのか、それとも俺を侮っているのか、取り敢えず目の前で一人刀を構える少女を見据える。


「全員できても良かったんだがね〜」


彼の中で戦闘開始にもかかわらず棒立ちであると言うのは愚の骨頂、戦わなくてもそう見える様に構えるだけで随分と生存率は上がる。むしろ、そうでないものほど死んでいくのをよく見て来た。少々の失望をにじませると人相がやばい系男子もこちらに向かって歩いて来た。


というか聖剣解放してサクッと終わらせて、迷宮行きたいでござる。


魔力はそこそこに剣士ではなく格闘家としての自然体の構えを取る彼に真っ先に突っ込んで来たのはすごい笑顔の刀を構えた女子生徒だった。


「魔剣、解放!」


「マジか!」



少し場面を戻し、時間を引き延ばす。私欲がダダ漏れ過ぎて、あと幼女の取り扱いとか色々気になることがあるため時間が惜しいヒミツは棒立ちのまま挑発じみた言動をしてしまうが、実は彼らが動けないのには理由がある。


(化け物・・・かよ・・・)


彼らのうちの一人、ただの高校生空手家だった男子生徒は自身の魔力を練ることすら不可能なレベルで恐慌していた。勇者特有の特典という奴でギリギリ立ってはいるが、音速でパンチやキックが繰り出せる程度の彼は自然体でゆったりと立っている彼を前に最早闘志もクソもないのだった。


彼が中に、この空間に入ってきた時彼らが相応に強者だからこそわかる違和感という名の重圧や、少ないもの先読み系や思考加速や並列思考による戦闘シュミレート、そして未来視、そのどれを持って断じたかは人それぞれだが、感じてしまったのだ。


(これは・・・勝てない。)


圧倒的な強者を前に生半可な強者、つまり大多数の勇者達、高校生の心は呆気ないくらいあっさりと粉砕されたのだ。彼らの眼に映るのは恐怖、畏怖、そして逃走、そのいずれかだった。



しかして物事にも例外はある。

例えばどこかのラノベ主人公の様な白髪灼眼義手義眼の男子生徒はマジカル古武術の家系でしかも生産系の戦闘に不向きな能力を持っているというだけの理由でほか多くの生産系能力者と共にダンジョンに突っ込まれ、犠牲を出さず、生き延びてきた男、彼の表情はほとんど無くなったが、それが幸いしてかダンジョンから生還し国ひとつぶっ潰してからの彼は交渉ごと任されることが多い、しかし内面は不思議なほどに変わらず日本人であり、ゲーム愛好家だ。


(勝算はほぼゼロ、動ける人がいるかすら危うい。)


それが彼の見立てであった。彼の観察系、鑑定系の魔法を常時発動させる義眼はヒミツに戦力を完璧にとはいかないがその断片を拾ってみている。

いま、思ったよりもたくさんの人が向かっていく姿勢を見せているが、同時に先ほどまで見ていた彼の魔力量が隠蔽状態だったということに戦慄し、作戦を変更しようと思うが時既に時間切れだった。

実は当初の作戦、というか実は作戦ですらなくただの雑談のつもりだったのだが、奴隷として邪な王に大人に、この世界の住人に翻弄されてきた彼らとしては協力者の真意を、その精神性を見たかっただけだというのに、何を間違ったのか(まあ、恐らくヒミツもそしてこの不運な男も口調がぶっきらぼうなのがダメだったのだろう)模擬戦という形の持ち込んだものの、これでは彼の不興を大特価で買ってしまうだけである。


(だが・・・うん、もう修正不可能なレベルだな。)


内心(^。^)おワタ状態だが、彼の体はそれでも表情や変化を見せず、少なくとも周囲の人間にはそれらしさを与えていた。


(まじ、頼むぞ侍娘・・・マジで。)


彼が最早神に祈るレベルで絶望しながら前に進んでいっているのだというのはきっと彼にしかわからないだろう。


例えばポニーテールを揺らすことなく刀を鞘に収めた状態で腰を低くして構える、いわゆる『居合』の構えをする少女は圧倒的な死の気配、敗北の予感に心躍らせていた。


「ァハ…」

(うふふふ…どっから切り込んでも返されて反撃一閃で吹き飛ばされる。でも明確な殺意がないっているのが残念かなぁ・・・アハハ!)


魔力というのは意思の力によってのみ、その形態を表す力の塊、それ故か、故意なのか彼女の魔力は荒れ狂っていた。

紫電を撒き散らし凄惨に微笑む彼女は『理性飛んでる系女子』だとか、『アマゾネス』と呼ばれ恐れられている。しかしその彼女がいままで本気で戦っている姿を誰も見たことがないのであった。


「魔剣、解放!」


「マジか!」


(ここでぶっ放すつもりなのか!!)


『雷切丸・千鳥』ィ!


魔法的な産物といえど雷は雷、閃光の様な稲妻と激しい放電、雷を切ったとされる名刀はその血肉を取り込み自らが切った雷を発生させる。


一瞬のことで吹き飛ぶ心折れた勇者達、そしてなんとか持ちこたえる義眼義手の男や忍者、陰陽師などなど、しかし彼らが見たのはありえない光景だった。


"打撃斬撃銃撃砲撃、生ぬるいねぇ。"


雷鳴によって全ての音がかき消えた様な錯覚を覚える中男は平然と、いや、彼らは見てしまったのだ。雷を魔力を纏った左手でいなし、雷と同化した侍娘の凶刃を右手で逸らし、音を置き去りにした速さの域に達している彼女の腕を折ったのだ。




「ガッ・・・ハァ!イイ!とっても良い!」


ウワァ、変態だ。変態ちゃんだよ、怖いよ。


完璧に左肩と左肘を外したと言うのにそれを右腕で無理矢理に嵌め直しながら口で刀を構える彼女はまさに修羅だった。なんと言うか気迫が違う。

元から戦闘狂の気が有ったのだろう。自身も少しそう言うところがあると言うのを自覚しているだけに彼女が日本という世界観の中でどれだけ自らを抑えていたのだろうかと、そして同時にこの世界に来てその社会不適合的な欲求はどれほどに彼女を蝕んでしまったのだろうかと思考し、一瞬で辞めた。


「なかなかに狂ってんな最近の高校生は…」


「あはぁ!」


魔剣の解放状態は続いているがヒミツに目くらましは通じないし、鎧によって音の取捨が可能なのだ。


「アハハ!」


「フッ、ホッ、ヨット。」


迫り来る彼女やそれを援護するかしないかで戸惑う彼らをよそに激しい剣戟と剣への狂気的な修練の成果かそれとも才能か、はたまた聖剣の力か、おそらくそのどれもが合わさった結果なのであろう無限に等しい剣戟と美しい動きをいなし、弾き、腕や足を折る。

そんな応酬をくり返しながらヒミツ自然と様々な予定を忘れ、彼女との闘争に耽るのであった。


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