幕間:魔銃の担い手と一瞬でまとまる話しと。
ちょっと詰め込みすぎ?
大丈夫、
グダグダになるのは戦闘くらいだから。
時は遡りヒミツが転移した直後まで遡る。
「『分身』『分裂』行きなさい。」
「ッ!?」
侍従長は自身の分身に主人と主人の母を連れて行かせ自分は屋根伝いに消えていこうとする暗殺者を追いかける。
(自己複製術式開始、残数40000…問題ありませんわ。)
魔力を循環させ自身の身体を活性化、城にいる他の分身にも警戒を出し幾人か出す。
(人払い用の精神干渉魔法へ干渉、反転、衛兵はこれで大丈夫ですね。)
「クッ!」
そもそも人外である為人間であろう暗殺者に追いつくことは容易だった。既に人よけを反転させ人の注意を引く術式に上書き済み、血痕があれば一般人なら衛兵を呼ぶし、それより以前に彼女の分身に動いてもらっている為通報済み、更に回り込み哀れな暗殺者の行き先に佇んでいる。
逃亡する暗殺者は金属製の筒を、所謂銃を構え引き金を引く。が、
「遅いです。」
「なっ!どうなってんだこの世界の奴らぁ!」
煙幕用のスモークグレネードを放るが目ではなく魔力と嗅覚で追っている為意味はない。発砲されるが走りながらでも正確に手足を撃ち抜こうとするような生ぬるい銃弾は効かないし、避けるどころか掴んでしまう。
「『疾く、鋭く』」
まるで踊るかのようにかける彼女は更に魔法を重ね速度を加速度的に倍加させる。長い筒状の物を持ったような成人男性など捕縛するのは容易なことだった。
「なっ!クッソ!『魔弾よ!?グア!?」
魔力を込めて引き金を引く前に前を見ていなかった男は回り込んでいた侍従長の体にぶつかり捕縛され、追いかけてきた侍従長にトドメの手刀をくらい意識を無くした。
「フッ」「捉えました。」
本来なら衛兵隊や騎士隊に引き渡すが今回は特例として城のモードレッドの私室の真下、城の中で最も危険と言われる彼女の魔法研究工房の実験台に仮捕縛することになった。
翌日、というか既に逃走劇があった頃には日が明けていたので今日なのだが、モードレッドとマーリンが起きるとすぐさま侍従長に連れて行かれながら昨日の夜の説明を受ける。
「ウェ!てことは・・・」
「はい、おそらく彼は今空間転移による強制移動をしているでしょう。」
「むむむ。」
転移というのはノータイムではない、確かに短距離のものや馬鹿魔力によるペナルティーの強制解除などで瞬間移動を可能にはできるが、あの銃使いが使った銃弾に込められていたのはかなり低級の魔法、それも単体専用である。どうにかヒミツはそれを二人ように修正はできたようで術式は展開され、肉塊のシェイクにはなっていないようだが、絶賛三半規管シェイクを食らっているだろう。
というかそれより問題なのは、彼の行き先と彼の魔力をあてにしている小夜、そして最近色々と切羽詰まっているのか色々と焦っているアーサーがどういう反応をするかである。
「とりあえず聴取してみるしかないね、その暗殺者擬きはどこに?」
「モードレッド様の実験室です。各種拘束はしておりますので問題ないでしょう。」
「じじゅうちょう、それ、フラグ。」
とりあえず起き抜けにそんなところ行くのは嫌だと言ったモードレッドの案が採用され朝食をとってから、というか他の二人も起きてからにすることになった。
まあ、案の定彼女らの反応はムンクの叫び並みの画風の崩壊を見せたが、それだけだ。おそらく何処の崖や地面の中や空中やマグマの中、魔物の巣に送り込まれたってアレは生きているだろうという謎の信頼が働いているのだろう。酒が残っているためか朝食を少なめに水を飲んだ酔いどれ3名、調子はいいが気分が最悪の1名はモードレッドの工房へ行ったのだった。
行った先はかなりの人外魔境だったが得てしてそういうものに馴れている一行だ。気にせず進み実験室に、モードレッドは用意があるからと少し離脱、四人が中に入ると中ではどうにか逃げられないかともがく間抜けな姿を晒す黒髪の男の意思に反応してかガタガタと動く銃があった。
侍従長がとりあえず銃を叩き折りすごい顔をしている男に向き直ると質問より先にとりあえず拷問タイム、まず指を自主規制し、次々に自主規制、泣き叫ぶ男の心からポキンという音が聞こえるのはそう遠くないかもしれないが、それで話は聞けるのだろうか?
これもまた見慣れている一行は苦笑いしながらとりあえず色々と自主規制状態の男を回復させ事情聴取もとい、OHANASIをするのであった。
「俺は転生者で・・・まあ、暗殺者、といえばなんだか妙な感じだがまあそんな感じの家業をしてたんだよ、」
「そんなのは見ればわかるからいいよ、どうでもいいし、聞きたいのは武器と動機と弾の術式、君自体に価値はない。」
幼女にそう断じられ精神的にもボキャっと逝ったが、一応闇堕ち日本人特有の謎バイタリティで持ち直し簡潔に話す。
途中途中アーサーにというか彼女の巨大な一部に目を奪われていたがその度に無言で目潰しと回復を同時にされるという拷問を受けていたので問題ない。
「依頼人は元貴族らしい奴ら、かなりの報酬だったのでこれを機に辞める予定、銃弾の術式は空中への転移で自由落下での殺害を目的としている・・・うーん、死刑☆」
「ゼェ…ゼェ…」
一応釈情の余地あるといえばあるが襲ったのが名誉貴族であり超級冒険者であるヒミツだというのが致命的だった。
また、アーサー的にはヒミツの敵は粉砕すべし的な発想があったり、ちょっと面倒臭い事をしてくれたな的な私怨が小夜にあったり、何はともあれここで死刑宣告しぶっ殺して仕舞えば国王的に示しがつかないので司法裁判にはかけるが、これまでの経歴的に死罪か死ぬまで鉱山かとかになるだろう。
しかし、そこに待ったをかける人物がいた。
『ハロー、聴こえてるかー?』
「ヒミツ!?」
本人たちは気づいていないが起きた時に既に昼前だった為今はもう昼過ぎちょっとくらいだ。その頃彼は既に迷宮を抜け、たわいもない会話や思考をしながら屋台町を歩いていた。
『ちと気になることがあるんでそいつ生かしといてー、逃げようとしたらチビを殺すって脅しといて。』
気になることとはズバリ、彼を狙った理由の詳細、そしてとりあえず一発殴りたいという衝動的なアレ。もう一つは彼のパートナーのような幼女の記憶から読み取った彼の所業、というか彼の生き様である。
ぶっちゃけ彼はヒミツも辿ったかもしれない可能性の一つだ。今後のためにも聞いて起きたいことがあるらしい。
「・・・だって。」
「ムゥ…」
不満げな小夜にだったが
『あ、あと勇者に合流した。』
というか一報を聴き一気に機嫌が良くなり。
「・・・」ギリィ
すごい歯を食いしばっているアーサーは
『・・・まあ、なんか色々事情があるけど、嫌いではないよ。君のこと。』
というひねデレというか其の場凌ぎ感のある言葉にとりあえず機嫌を直したのか実験室を去っていった。
『取り敢えずすぐ戻るからちと待っているがいい、正確には一週間後くらいに。』
さすがチートは違った。




