異世界迷宮に夢を持つのは間違っているだろうか?
「うわああああああああああ!!!」
「騒々しいな、お前らの作戦だろう?」
幼女の泣き叫ぶ声に反応し音源を探そうとする冒険者たちが見たのは不可解なことに、この階層よりも上はなく、総じて高い場所があるでもないこの第一層の上空から降ってくる怪しげな二人組だった。
さて、ヒミツは落ちていることになんの心配もして居なかった。身体強化は魔法ではなく魔力の運用技術の副産物であるし、タヌキチがいる以上落下で死ぬことはない、自分自身も三点接地法や最悪魔力放出や、聖剣解放すれば良い、対して幼女はみっともなくもがきながら最終的に恐怖で声が詰まった。
(タヌキチ、頼むぞ?)
(あい!)
ヒミツは左手を突き出し左腕を液状化してヘクトアイズの本性を現す。
「なんだ!?」
「新手のモンスターかしらあ?」
なんだかベテランっぽい剣士と魔女っぽい魔法使いとかぞろぞろと野次が多いがやってくるがなんの役にも立たない上に距離がありすぎる。
「ぎゃあああああワブっ!?」
地面につくそのギリギリでヘクトアイズが膨張、俺と空中で気絶した幼女はそこにぼすりと沈み込み落下の勢いを殺す。致命レベルの自由落下の勢いを殺しきり、液状化を解除腕形態に戻る。同時に魔法ではなく錬成陣に魔力を流しているだけで生成できるワイヤーで顔面から地面と接吻してる系痴女幼女を縛り、武器を没収、さらに腹に開いた風穴の治療を軽くして今瞬時に着ることができる両手両足の戦闘用の黒い騎士鎧と魔法耐性や物理防御の呪いが編み込まれた外套を纏う。
「そういえば。」
魔法使用不可なので魔力を流すだけの簡易収納から一個一個取り出してきた。鎧やサブ武装を帯剣し現状できる最高の装備も完了し、改めてキャッチした飛翔体を見てみようとポッケに手を入れたところで俺は突然首に剣を突きつけられた。
「一応、動くなよ?どういう経緯か知らないがな。」
まあ、感知していたので問題ないが恐らく野次にいた剣士と魔女っぽい魔法使いだろう。遅れて来た魔女の方が気絶している幼女のロープを切ろうとするがどうやら鋼以上の強度と魔法耐性のあるそれこそ竜を輪切りにできるワイヤーの太い版だ。魔法使いの腕力と短剣では切れない。
「ていうかそいつ暗殺者なんでそのままのしてくれないかな?」
剣士の男の警戒が強くなるが魔女っぽいのが止める。
「うーん、嘘じゃないみたいだねぇ?」
手に持っていたのは俺の血液がどっぷりと着いた凶器である呪毒付きの半端な長さにダガー、そして立ってると地味に痛んで血の滲んでいる俺の腹の風穴を指差し剣士を止める。
「こいつが襲いかかったっていう線は?」
「あんたぁ、また思いつきで飛んで来たみたいだけど相手の力量くらい測ってねぇ?こんな小娘不意打ちでもなければチリも残んないわよぉ?」
「ほぇ?」
間抜けな顔をする剣士、ていうか首に剣が当たってんだよ、俺が人外じゃなかったら間違いなく切れてんぞ?オイィ?
俺はもう良いかと聞きながら籠手の付いた右手で剣士の剣を退ける。剣士は力を入れてるようだがなんの意味もない俺はそのままの剣を鞘まで押し込むと朗らかにこう言った。
「とりあえず、此処が何処か一応確認したいんだ。話を聞かせてくれるか?」
俺はポッケに入っている俺を撃とうとした飛翔体が弾丸であるというのを確認してから幼女を彼女が羽織っていた認識阻害系とよくわからん魔法の付与されたレインコートのような外套をかぶせて担ぎ、一先ず彼らに保護されたという体でこの面倒臭い迷宮から出ることにした。
始まりは突然だった。まさか空から、この魔法使用のできない階層の空から人間が降ってくるなんて思いもしなかった。
「師匠、ありゃなんだろうな?」
「うーん、人、かな?転移魔法陣が見えたからどっかの罠かなぁ…でも明らかに迷宮の使ってる古代式じゃないから外から彼処まで吹っ飛ばされて来たのかなぁ?」
とりあえず人影は二人、それも片方は子供だ。知り合いですらないのか男の方はそんな子供を気にせず左腕を地面方向に突き出し一気に左腕だったものが膨張し闇のような流体が膨れていく。
「なんだ!?」
「新手のモンスターかなぁ?」
師匠はまるで魔法不可のフィールドでも涼しい顔でそれをレジストしながら箒に腰を下ろして呑気に見ているがもしモンスターだったり、あの幼い子供を攫ってきた誘拐犯だったら大変だ!
「師匠!」
「・・・なんかまた勘違いしてるような気がするんだけどぉ、ま、いっか。面白そうだしぃ『風よ』。」
まるで息をするように魔法を発動させるが普通こんなことはできない、感心しつついつかあんな感じになりたいと思いつつ走る。
するとちょうど黒い風船のようなものが膨張し一気に収縮したのが見えた。
「・・・あはぁ!やばいねっドキドキだぁー」
「!?」
あの男、魔法を使ってる。しかも収納系魔法だ。空間を魔力で拡張しそこから任意の物を取り出す高等魔法、師匠ですら此処で使うのが難しいソレをいとも簡単とは言わないが発動させ、武器や防具を取り出している。
「彼を見た覚えはないから私の技術を知ってるわけでもなし、独学どころか一瞬で此処の仕掛けをレジスト?ありえないな、バカみたいな魔力のゴリ押しでもない・・・楽しいねぇ?」
とんがり帽を揺らして楽しそうな師匠を尻目に俺は渋い顔だ。なぜならあれが敵かもしれないのだから。
「・・・やっぱ勘違いしてるね、言ったと思うけどあの魔法陣は「突撃ぃー!」・・・私の弟子って言うんだったら話くらい聞いてほしいねぇ?」
俺はこの時勢いで殴りかかっていなかった事は幸運だっただろう。何故なら俺はこの後なんの抵抗もできずに力のみで、全く本気を出していないような様子だったが少なくとも俺が全力でかかったのに捩じ伏せられたのだから。




