俺氏による俺氏のための大魔法
さて、さてさて、ニヤニヤしながら俺との間に忌々しいラインを繋いだ幼女と十数人の女性を見送り再度探知を発動、ゴブリンとかゴブリンとかしかいないのを確認してから俺が使える攻撃での最上位魔法『擬似太陽』を準備する。
この魔法は成り立ちとしては些か簡単だがそれをなすのが難しい典型的な最上位魔法の一つでまず一人で発動するようなものでないということが最上位魔法たる所以の一つである。やる事はシンプル全属性の魔力を火の魔法をベースに混ぜ合わせて行き擬似的な星を生み出して対象に叩きつけるというものだ。
「『煌け!燃えよ!"擬似太陽"』」
特に意識していないが山の上の方に創り出したので俺ごと燃やし尽くす形であるが、問題はない、自分の魔法でやられるなんて三流は、魔法使いのうちに入ってないので先ずは気合いで魔力操作から練習すべきである。
山の上と魔法が接触し容赦なく山を削り取りながら爆裂する。
ドグオォオオオオオォォン!
「うむ、綺麗な花火だな。」
俺が今やっているのは結界による自身への爆風などの防御、そして爆発を効果範囲いっぱいに広げた結界内に押し込めると言う作業である。
最上位魔法の欠点は威力が大きすぎる為に環境を大きく変えてしまう事である。
まあ多くが大昔の大戦争中に編み出されたものだったのもあって敵国に重大なダメージを与えると言う点では良く出来ていると言っていい、だが今日はその爪痕から色々面倒なものが出てきている関係上使用は控えるように通達されており使う場合も威力より強力な防御効果を持つ結界を張れることが条件だ。
因み破ると面倒なことになるのでやらないほうがいい 。
ひとしきり爆発が治ると大きく球形に抉れ溶解した地面が顔をのぞかせる。
「・・・ち、ちょっとやり過ぎたか?」
と思ったのもつかの間溶解した地面から巨大な触手が・・・触手?
「おっとそうかダンジョンマスターか・・・相変わらず某神話系の見た目だな。」
球形の黒い塊から無数の触手が生えた冒涜的な見た目の生物、これがダンジョンマスターだ。
生物、と言うくくりからかなり逸脱している魔物の一匹で、生態だけを見ると食虫植物のようなものだ。魔力と周辺の物質を使用して迷宮と呼ばれる部分を作製し、いまだ理論的に説明不可能だがどのようにかしてその内部で魔物を増殖させる。そして最後に餌を得る為にこれまた原理は不明だが宝物を創り出す。
実は迷宮と言うのはこの生物的なものともう一つ迷宮核と呼ばれる魔力の結晶を核とする無機物的な物の2種類があり歴史的にはこの無機物的なものが最初にあったらしい、それが生物に取り込まれた結果ダンジョンマスターと言う新種の魔物が誕生し各地で増殖している・・・らしい、実際あの蛸の中には巨大な魔力の結晶があり、この学説の信憑性を出しているのだが、魔物には魔核と呼ばれる魔力結晶がごく稀に精製されており、長い年月を生きた魔物多いことから、魔物が極限まで成長した物がダンジョンマスターだと言う説もあり、学会は混沌としているらしい。
実際にはそんなことを知っていてもどうしようもないのだが元日本人としては気になるところであり今後の研究に期待である。
「とりあえず今はこの冒涜的な生物をぶち殺さねえとな。」
こいつの迷宮である山を崩せたので俺の今の魔法はこいつ自身の魔法耐性を上回っている。なのでもう一度撃てばいいのだが・・・流石に魔法使いが本職じゃないし本職でも空中浮遊を維持したまま大魔法を撃つのは難しいだろう、今回は弱点である単眼めがけて剣を抱えて突進が無難かな?内部にあるであろう魔力結晶を抉れればいいし、
「kyaaaaaaaaaa!」
「おっと!あぶね、え、な!」
相手は地面にいるとは言え大怪獣レベルの大きさ、触手は鋭く尖りヒミツに向かって伸びてくる。
それを魔力を固めた防壁を足場に展開して跳ねるように避ける。避けることに意識を割きながらも黒塗りの剣で触手を斬り落としていく、再生するがそれにも少しは時間がかかる為相手の弱点を見切るまでの時間稼ぎくらいにはなるだろう。
「・・・見えた!」
先ほどの回避法を突撃に応用し宙を蹴って突っ込む。触手が来るが魔力防壁でごり押して弾き、剣にも簡単な雷属性の付与をする。
「kaaaaa!」
最後の抵抗か魔力を単眼に集中させ何らかの魔法を発動させようとするダンジョンマスターだったが。
「遅い!」
加速を一気には早めたヒミツの剣が正確に単眼の中心を貫き、着地、一瞬の交錯のうちに左手に頭ほどの大きさの魔力結晶を納め影に収納して剣を軽く振って納刀、少し遅れて単眼に集まった魔力が暴走し爆発、先ほどの魔法よりは小さいがそれでもあたりの地形をもう1段沈めるくらいの威力はあった。
「はああ、何だか大規模な戦闘になっちゃったな。」
騎士兜の上から頭を掻きながらマントや装備についた汚れを手で叩き落とす、装備類が全部あるのを確認し・・・
「あ、やべ、鞄どっかに置いてきちゃった。」
何だかマントが良くはためくなと思ったけどまさか鞄を忘れていたとは思わなかった。一応影の中にはあったので今回は運が良かったと思う。と言うかもう荷物は全部影に収納しちゃおうかな、けどそれだと雰囲気が・・・失くすよりはマシか、
とりあえず全てを吹き飛ばしたので戦利品は無さそう・・・かな?
「ぬ?」
ダンジョンマスターの死骸の中央付近、ダンジョンを爆破したその爆心地に輝くものがある。よく見ると剣のような形をしているが・・・
「でかくね?」
大きさが異常である。俺の今世の身長が百七十五位あるのに対しこの剣は三メートル近くある。正直言ってまともな人間に使えるとは思えないし・・・そもそも迷宮産の剣は鑑定しないとどんな物なのかよくわからないと言うのが通説だ。
「むむ、あやしいな、『識別』」
簡単な鑑定用の魔法だがやはり本職には及ばないだろう、どうやら魔剣の類らしく銘は『怪物殺し』身体能力の強化といくつかの変形機能がついた魔法武器らしい、とりあえず仕舞っておこう。
どうにも世界には人型になる魔剣やら聖剣やらが居たり、その装備に憑く精霊やら何やらが居るらしいが生憎まだ見たことがないため何とも言えない、だが持ってみれば大概わかるらしい・・・これには特に無さそうだ。残念。
『もしもし〜?終わった〜?』
「っち、はいはい、今いくよ。」
ラインを通した念話だ。ライン、と言うのは物理的な線ではなく魔法的若しくは呪術的な契約によって生まれる鑑定用の今回はどうやらあの忌々しい幼女と俺との間で念話と位置の情報の共有がなされて居るらしい、契約形式的には幼女が俺の奴隷になっており一応命令権限はあるがもっと上の奴がいるな。これは。
あまり気乗りしないが彼女が転移した方々の安否とか今日の寝床とかも欲しいので彼女が行ったエルフの里に向かって走り始めたのだった。