邪神の心臓5
どうやら魔剣アンサラーは常に持ち主に理のある最善手を打つ剣らしい、俺が魔力を与えた瞬間起動したのはモードレッドの中に潜むモノを叩き斬るには実体のみの刀身は危険だったからの様だ。
「化け物じみてんなぁ…」
『月の賢者の知識』衛星としてこの星と同じ程度に時を重ね知識を蓄積した来た天体の持つ膨大な記憶の中にすらこの剣は異質だった。
しかしこれと同じ機能を持つ剣はいくつか存在しているらしい、そしてその全ては他ならぬ人の手で、大きなくくりで言えば亜人や異種族も含めた神以外の者によって作られているのだ。
「貴様ぁぁぁ!」
おっと無駄話は此処までかな。
剣を唖然としながら見ていたヒミツだったが目の前には未だ生きている敵がいるのだ。ロングソードとアンサラーを構え聖剣を解放した粒子を纏う。いかんせん既に時刻は夜明け近く。此処らでケリをつけなければいけない。
「やってくれたな、ヒミツ・・・」
すると横合いから柔らかい何かがヒミツに当たって来る。どうやらモードレッド(大人)が俺を支えに起き上がって来ている様だ。
「全く唐突に現れて淑女の胸に剣を突き刺すとは・・・飛んだ野蛮人ですね。」
「・・・できればその追及後にしてくれないか?」
と、思ったのもつかの間黒くなったモードレッドの様な姿のニャルラトホテップはいきなり吹き飛んだ。
見ると空間を燃やして距離を一気に無にした小夜が特徴的な感じになった髪の先に炎を散らしながら古武術じみた残心を取っている。
「・・・こっちも本性出したって感じかな?」
「そうだねぇ〜、それを言い始めた君もだけどね?」
「そうですよ、ヒミツ。それに貴方より全然予想内でしたし…ゲフォ!」
いつの間にかというか、当たり前の様にというか恐らくアーサーを治癒するために来たのであろうマーリンと、鞘を長年持っていた為か、それとも別の理由からか不死となっているアーサーが俺に何の恨みがあるのか知らないが独り言をキャッチして投げ返して来た。
・・・残存戦力は聖剣を携えたモードレッドとロンの槍をマーリンお得意の幻術でかの有名な神槍ロンギヌスと世界に偽装登録し権能以外の部分、つまり強度や内包する魔力を同期させた物を持って立ち上がるアーサー、そして外見の体裁は整えたもののズタボロな俺、死の淵から蘇り邪神を身に宿した状態で神をなぐりとばす小夜である。
「というか微少女だけで良くね?」
「いあ、無理だね、多分だけど小夜ちゃんの体の安全装置がそろそろ発動する。それまでにアレを吹き飛ばすとっておきを出さないと詰む。」
なぜマーリンが戦力に入っていないのかというと、単純に既に彼女の魔力が尽きかけである為だ。ブロントとジャンヌも同じ理由であの二人に関して言えば王城の守護も有る。
「とっておきね・・・」
俺は一応援護の為に回している魔力の粒子を見る。
「言っておくが、エクスカリバーは後一発が限度だぞ?如何に魔力を世界から供給されていると言っても身体が保たねぇ。」
モードレッドもメダロックを支えにしながら限界を告げる。
「私もですね、偽装登録とは言え神の子を処した槍の内包する魔力に鞘なしの私では耐えられません。」
それにアーサーも続く。
「・・・」ふるふる
それを聞きマーリンは思考するがかぶりを振るどう足掻いても火力が足りない、少なくとも現時点では俺も解析と戦闘補助ぐらいしか出来ないし、他の皆もその様だ。
「・・・!?痛い!」
「ほぁ!?やめてよ、びっくりしたなぁ!」
突然の激痛が俺を襲う!主に左腕の付け根から・・・あん?
「左腕?」
いままで全くもって忘れていた機能が思い出された瞬間で有る。
《あは!残念!今度こそ捧げものが貰えると思ったのになー、チェ!》
俺は左腕の魔力結晶に意識を向け、残った武器群の残数を確認、そしてタヌキチの力の制限を完全に外す。
「・・・・!!」
完全に流体と化す左腕だが感触も動作も可能、全く、ホーエンハイム様様だな。
マントや俺の創り出す影と一体化する闇の様な流体の奔流、よく見ると左手首だけが不気味に浮かんでいる。
唖然とする四人に俺は笑った見せた。
「勝ったわ。」
「「「とりあえず後でそれについて説明をしろ!」」」
「左腕が触手・・・なるほど変態でしたか。」
後で侍従長にはお望み通りのプレイを味あわせるのを決定し俺は聖剣を解放する様に、今回最後の無茶を宣言する。
「魔力結晶炉起動!魔法式フルオープン!」
全身に走る月の魔力回路に今までよりも鋭い輝きが灯る。
そして最も輝きの強い左腕の起点にはダンジョンマスターからもぎ取った人の頭ほどのサイズの高純度魔力結晶が内外問わず俺の身に宿る魔力と呼ばれる全てを増幅し、タヌキチは完全解放されたその全身で俺へのバフと最上級の攻撃魔法陣を並列かつ多重に展開、今までになく漲る力とおそらく有る反動に喜憂しながらも何でこんな素晴らしいことを忘れていたのか不思議に思いながら地を蹴った。
「聖剣全解放!魔力超過供給!」
ギュイイインという金属が超高速で回転しているかの様な騒音と共に青白い粒子は赤く変色し、解放によって赤くなっていた回路は身体と鎧の表面だけでなく内部まで浸透し熱を発し始めた。
「トラ○ザム!?」
「なんか原子炉が二機付いてしかも超加速しそうな格好になったな。」
「クソ・・・カッコイイ!」
「主人の美的センスが壊滅的なことにショックを禁じ得ませんわ。」
後で・・・殴る。




