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放浪系騎士の様なナニカの冒険記的なサムシング  作者: 名状し難い魔王
狂気的な日常のその向こうはやっぱり非日常な俺氏
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邪神の心臓3

一体どうしたというのだろう。


時は少々遡り、先ずはアーサーとともに遊撃に回って居たモードレッド、

彼女が一国の王であるにもかかわらず遊撃手に回っているというのは一重にその聖剣の破壊力と制圧力ゆえである。しかし、その真の理由は『彼女が邪神を降ろすための触媒として製造されたホムンクルスである』という極めて危険なその出自故からであった。


勿論、王としては失格だ。王とはその身を大衆に晒して安心を与えてこそである。見えないところでやって居ても意味などない、そのため一応王城の玉座の間の壁にはマーリンによって彼女の行動が中継され映し出されているが、彼女自身そこに行く気はない、彼女は望んで民を守るためにその身を戦場に投げ出しているのだ。


「といったところでしょうかね・・・」


「エクス!カリバー!」


黄金の様にも見える爆発的な魔力の奔流が剣を覆いそれを横薙ぎに振るうことで魔力が半円状に射出され敵を薙ぎ払って行く。持ち論適性は最大レベルの物が有るので代償などいらない。むしろ通常天性の才能によってのみでしか振れるはずがないのだ。それを左腕という代償を払いながらも多少使うことができたというのは正に奇跡であり、御伽噺である。


アーサーは黄金の魔力を撒き散らし味方にはその神々しさと強さで希望を与え、敵には完膚なきまでの敗北と絶望を叩きつけるモードレッドに過去の自分を重ねて居た。理想の王と言う無稽にして無謀にして人の目指すべきでない道を、王と言う機械になり切らざる得ない王道の様な邪道の過去を、過労死とか寿命とか諸々の理由から不老不死になった過去を・・・


「父上!?」


気がつくといつの間にかほぼ放心状態で槍を振り回し雑魚を蹴散らし付いて来た騎士や現円卓の騎士を援護しながら涙ぐむアーサーに驚いたモードレッドがアーサーを揺さぶっており


「えっ、ぐぅひぐぅ。」


何だか色々吹き出してしまい泣きだしてしまうアーサー、どうやら狂気じみた政務時間とか様々な罵詈雑言とかかをうっかり思い出し揺さぶられた精神に邪神の発狂状態付与がはまり、発狂の軽度症状『恐慌』に陥って居た様だった。

そして、その瞬間を逃すほど邪神はお人好しではなかった。


『隙をミセタナァ〜?』


「ぐ・・・ああああ・・・うぐ!?」


聖剣の鞘がない不老不死なだけの元王様の耐性を崩したのはヒミツに心臓を潰されるほんの少し前、モードレッドは地面の下から聴こえる奇妙な鼓動によってその意識を断ち切られた。


「侍従長!たの・・・む・・・」


「畏まりました。我が主人様」



深い闇の底の様な、それでいて身を焼く様な炎を感じる。


「こ…こ、は?」


『我が領域だ。小娘よ』


佐藤小夜は通常の、一般的な女子高生ではない、神に好かれ神を降ろせる特殊な体質と現代日本に潜む魔法的、呪術的或いは陰陽的な所謂オカルト的なものを退治し、解消する組織の一員でありその組織の長の一族の娘であった。

その様なオカルト的体験や時には神話的体験をした彼女を持って、神との会話すら日常である彼女にとっても確実に初めてであろう自身に対する好意のかけらもない神との、それも邪神との会合である。


自身を見ると薄く透き通っている。どうやら精神体のみが呼ばれた様だ。周辺には自分のよく知る地球や何やらと言う天体はカケラもなく確実に別の銀河系の一天体の表面に立っているのがわかる。

そして正面には生ける炎の姿を取っている古代地球を支配していた旧支配者が一柱火神クトゥグアが座していた。


『娘よ、貴様は死ぬぞ、私の炎に内から焼かれ、脆弱な人の魂では耐えられない狂気と智慧が一度にのしかかったのだ。手の施しようもなく、むしろ良く人の型を残していると感心する。』


「・・・・」


至極他人事の様に火神は話す。何故なら彼女が既にほとんど死人であるがゆえ、そして旧主に類する神にとって自身の駒となれるものすら認識されないと言うのに、路傍に転がっていた石のうちの一つである彼女について惜しむ理由も、悲しむ理由も、謝る筋すらないのだろうから。


しかし、小夜の反応は違っていた。


「なるほど、死ぬ程度ですか、人型が残っているなら十分ですね?」


『・・・何?』


まるでおぞましい、彼の燃やし尽くすべき敵の、かの悪名高い這いよる混沌の様な気配を感じ身構えるクトゥグア、しかして彼女の微笑みはその顔をさらに歪ませる。


「マーリンさんも、ヒミツさんも、私がまるで無垢な乙女だと思っていますがね?何度もなんども高次の存在である神を見に降ろして、自我を失わなず、知識を得ず、狂気を智慧を受けていないと思っていたのでしょうか?」


彼女は人間としては破格の強度を、それこそ神霊とも殴りあえるにではないかと言う強度と密度の精神体で戯けてみせる。


「笑わせないでください、邪神様も、皆さんも、マトモ(・・・)なはずが無いじゃないですか!?あまり舐めないでくださいよ!巫女であり、対魔院次期当主であるこの私を、佐藤小夜を舐めるんじゃない!!」


揺らぐ心象、炎は反転し、暗き闇を纏う森に景色が映る。そしてそれを正真正銘今度こそ借り受けた神の炎で、あらゆるものを概念的にも物理的にも燃やし尽くすべき旧主の炎で焼き尽くす。


『な・・・ぜ・・・』


三角錐の様な口のない触手の生えた弱々しい顕現の一人が口を開く。何を隠そう先ほどまでの心象は全て虚像である。彼女は既にクトゥグアという邪神すらも魅了しその身に力を借り受けた。その為のプロセスとして暴走があり、彼に止められるということが必要なだけである。誰も能力について詳細に話す間抜けなどいなかったと言うだけの話だ。


「あまり人間様を舐めるんじゃない、この弱者(バケモノ)供、私を壊そうなんて百万年早いですよ?」


千の顕現のうちの一人の役目はこの火神を宿した少女を命に代えても、例えその過程で自身の力を失うことになろうとも精神世界に縫い止めるというものだった。しかしその目論見は神を魔物を弱者と嘲る高慢な彼女によって打ち砕かれるのであった。



目が覚めて居た小夜、と思われる人物はゆらりと幽鬼の様に立ち上がりその身を見下ろす。

その髪は白と黒それに赤の混じった絶妙な色味で仄かに火花を散らしており、目は黒に近い赤、柘榴石の様な瞳となっており、それらの体の調子を確かめると一瞬で外へと文字どうり飛んで行った。

近くにいた脂汗を流しながらブロントと邪教徒と思われる二人組を援護しながらジャンヌを治療しさらに小夜を呼び止めようとするも声を出す余裕すらないマーリンを尻目に、彼女は今度こそかの邪神を偶然にも身体に宿り、死に体になりながらその精神性を蝕まれながらも何とか制御できるレベルまで力を借り受けた火の精霊にして封印されし旧主、クトゥグアの力を持ってして焼き尽くすことを心に誓いながら。


「アハハハハハハハ!!人間様のお通りですよ!」


傲慢に、不敵に狂気的に素敵に笑ってみせたのであった。

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