邪神の心臓2
「光にぃ!なれぇぇぇぇぇ!!」
《いやぁ、それはまずいんでないか?》
「ガ○!ガイ!ガー!」
《アウトおおおぉぉぉぉ!!》
さて、著作権的にカットされそうだが、別に悪気はない、ただ、相手を一撃で粒子レベルまで崩壊させその残滓といえど光に成って居ると言えるこの状況を見てつい叫びたく成っただけで、別によく知って居るわけではない。
と言うかふざけていないと気が狂いそうなのだ許してくれたまえ。
一度マーリンやニャルラトホテップの一人が使った大魔法、自身の心象を現実に押し付け現実を侵食し自身の心象を降臨させる。それにとても似て非なるものがこの地下では起きていた。
そもそもこの異界はかの邪神の存在していた無秩序にして混沌の宇宙である。
これはかの邪神が現世に出てこようとしてくることで発生する副次的な物で、突き詰めてカテゴライズすれば雪女が冷気を纏っていたり、火の精霊が熱気を放って居る様に、それが存在するだけで発生する世界の改変の一つである。
それゆえ、様々なバックアップがあると言っても所詮未だ人の域を出ない俺にとっては息をすることや心臓を動かすことですら疲弊を強いられ、存在して居るだけで精神汚染や精神崩壊、SAN値減少などの精神異常をきたす狂気の空間、さしずめ『邪神の気配』とでも言うべき大規模かつ破壊的な継続型の現実改変である。
「ぬぐぐぎぎ…体が…重い!」
《がんばれーあと数歩で剣の間合いだよー》
そしてそれは敵の本体に近づけば近ずくほどに濃度が増し、今、邪神の心臓とも言うべき現世に降臨した邪神の一部の目の前にいるヒミツには凄まじい負荷がかかっているのであった。
何故魔力による攻撃をしないのかといえばそれは余裕がないからである。
今回の邪神の何かしらの魂胆の核心にあるであろうコレを守るために千の異なる顕現のうちの殆どが神風アタック、もとい突っ込んできては復活し、突っ込んできては復活しを繰り返している上に数が多くても邪神、一般人レベルの強度のものも多いがその力は強大だ。
近づかれる前に消し飛ばすのが最善だが、やはり数が多すぎる接近を許し防御することも多いので防御に回す魔力も多くなり、今俺が立つためにも魔力を使った補助をしているので正直本体のありえない魔力防護を掻い潜っての一撃を放つ余裕はない。
さらに言えばこの空間で俺の手から離れたものの法則は全てがかの邪神の思う通りになるので投擲も不可である。月の魔力は神と天体が俺に貸し出しているものなので同格かそれ以上の法則は操れないのか特に異常はない、
「クッッソが!邪魔だぁ!」
一歩二歩と着実に歩を進めるヒミツ、しかしてその限界はすぐそばまでやってきていた。
《ねぇ!ヒミツそろそろ君の体が重圧と聖剣の魔力に耐えられなくなるよ?いいの?死んじゃうよ?死んじゃえば私が勝手に代償を選んじゃうよ?》
心なしか楽しそうな女神の声が死刑宣告の様に頭に響く。その時彼はこの醜悪な心臓に剣が届くあと一歩のところまでやってきていた。
「知ってるよ!だが、これで終わりだぁぁぁ!」
用意周到というか、運がいいというか、彼の武装には前までなかった物があった。彼の手には自身の手の作った影から出した長大なバスタードソードが握られている。
《アッッハァ!大正解!》
「聖剣!圧縮!」
彼と彼の振るう聖剣の渾身の魔力はバスタードソードを包み込み侵食する。そもそもが非実体にして魔力である彼の聖剣『月剣三日月』はその刀身をほとんど持たない、その真の姿は変幻自在付与される物が何であれそれの長所を伸ばし短所を補う万能型だ。
「チャージ完了!奔れ!爆ぜよ!その光で魔性を粉砕すべし!『三日月』ィィィィィ!!」
その長さと質量はほとんど力が入らない彼が上から下に振り下ろすだけで心臓を殺すにたる射程と威力をもちその存在意義を示す様に剣は心臓に突き刺さり籠められた魔力が放出されることで赤黒い様な心臓の内部を青白い様な月明かりで満たし、爆破、気がつけば剣は薄暗くも何の異常もない地下道の床に邪神の角であろう黒い教典を縫い止め、ヒミツは全身を放り出す様に地面に崩れた。
「・・・ギリっ」
しかしその顔には安堵など無く、ほとんど死に体の体に鞭打って壁にゴリゴリと寄りかかりながら剣を杖にして立つ。
少し残った魔力で魔力のつながりを感知、マーリンの生存と周辺にいる生存者を確認、聖剣解放は解除されているのでもう一度纏うには時間と身体の回復が急務だが、殺人的に嫌な予感がするので目のみの局地展開を強制的にしてガリガリと削られる神経を無視しモードレッドを探す。
彼の目にはあの暗闇の中でさえニャルラトホテップたちの顔が見えていた。そして同時に心臓を潰す瞬間のあのおぞましい狂気の体現である彼らの微笑みを、
そして彼の勘は当たった。
王都外周部、そこに居たのは睨み合う褐色白髪の燃える美少女と頭を抑え侍従長に自身を拘束させているモードレッドとその手に持つ聖剣がアーサーの腹に突き刺さっているという絵だった。




