依頼:『王城で来賓と王様の暇を潰せ!』3
真剣に行こうぜ?
「フンムゥ!」
「ぐべら!?」
彼女からかの有名なネタキャラによく似た男の魔力を感じた。と思うと俺は空中に投げ出され地面に突き刺さって居た。何を言っているかわからねーと思うが俺も以下略
「アイタタタ…全く、ひどいじゃ無いかチェルシー?」
「・・・何よ?私を置いて行った上に他の女の子とパーティー組んでるような男に気安く呼ばれたく無いんだけど?」
相当にオコである。というかそうなのであれば今すぐ別の人とパーティーを組んでくださいお願いします。
「嫌よ!私の初めて(正式なパーティー申請)はヒミツって決めてるんだから!」
かなりナチュラルに心を読んだ!だと!?なんというか影に潜伏した俺を明らかに視認できて居た時点で可笑しかったが一体何が、そしてナニヲされてしまったんだ!?
そう一瞬心の中で思った彼だったが、彼の体は正直であった。
「え、イヤなんだけど?」
まあ、故意にではないとわかって居ても誤爆が多い相方を持ちたい者など居ないし、そもそものところパーティーメンバーとして彼女がヒミツの役に立てることは無に等しい、唯一あるとすればキャメロットのギルド長とのパイプだが、それは既に個人的に持っているし、戦闘力もヒミツの素の状態と今の身体強化術+装備効果でようやくイコールであり、ヒミツの魔力循環による身体強化と魔法的なブースト、そこに聖剣なども加味するとむしろ一人の方が戦い易いというレベルである。
要するに、互いに利用価値のある状態では無く。ヒミツが一方的に彼女を庇護するという状態になってしまうのだ。
「・・・ふえ。」
ヒミツの返事を聞いたチェルシーの反応は劇的で、そしてありがちなものであった。まるで恋に破れた乙女のように、泣き崩れようとして居た。
ヒミツはそれを見ながら焦った様子もなく「だが、」と続ける。
「貴方がもし、守られるだけの存在でいいと思うのならパーティーを組んで、一度だけ仕事をして、それで終わりにしてもらう。」
そう言いながら一瞬で聖剣と自分の魔力を全解放する。兜が適当な付け方だった為か吹き飛ぶがそれを気にした様子もないヒミツは答を待つ。
大気が震え空間が歪むほどの力の奔流を前に、チェルシーはステンドグラスから入る夕日によって影ができ見えなくなったヒミツの顔を直視して悟った。
彼は孤独なのだと、彼に勝てるものはこの世界に沢山いるだろうが彼の周りに彼と対等なものはそう多くないのだと、そしてそれに自分が含まれて居ないということを感じ取った。
ミシミシと嫌な音を立てる教会は青白いラインで強化され、ヒミツの圧力は更に高くなる。
「あ…」
声が震える。
自分は何て愚かなのだろうか、勝手に憧れ、勝手に目標にし、手前勝手な独り相撲に自身の想定を大きく超えた相手を据え、盲目的なまでに自分と彼が対等であると信じ続けた。
だが現実はどうだろう。
圧倒的な強者の威を前に涙も枯れ跪き呆然としている。まるで理解出来ないような隔絶した存在を前にそれと自分が対等であると今の今まで良く思えたと思った。
実際、彼が最初に覚えたのは魔力の遮断で、それは魔力が成長しても、聖剣を手にしても、それこそ敵以外の前では一切その強さを感じさせる事なく今まで生きてきたのだから、それはある種当然であり、それこそが彼女の至らなさであった。
「お…とうさんは…」
「あの人はこんな俺を前にしても怯まず、むしろ獰猛に笑ってみせたぞ?それと比べる…というのもおかしな話かな、貴方は今まで俺の前に現れた、俺を侮って居た怪物や悪人とおんなじ様に呆然として、跪いているだけだ。」
全解放した。と言ってもまだ教会の外や気絶している修道女には伝わらない様に操作している為全力ではない、そして魔法的な才能がない彼女にすらそれは感じられた。
言っておくがヒミツは善人でもないし、お人好しでは無い、日本人的な道徳観や、謙虚さを持つ一方、力があることを自覚し下手に出る必要がないときは出ないし、必ず依頼には対価を支払わせる。
人は助けるがそれは自分が人間社会から逸脱しない様にする為であり、究極的には自分の為である。
そんな彼が前世で40過ぎまで生きてわかったことは
(互いに価値を見出せない相手は志を共に出来ないし、理解もできない)
ということであり、この世界で孤児から成り上がった事でさらに得られた教訓は
(自身よりも弱かったり、優柔不断な仲間は仲間ではなく唯の庇護対象でしかない)
ということである。
元から大凡一般人的な道徳観が欠如して居た彼は他人にさほど興味がなく。恐らくある日突然隣人に殺されそうになれば躊躇いなく殺せるだろうし、寧ろ何かを殺すということに対しての恐怖や嫌悪というのが人よりもだいぶん薄いのをよく知って居た。
だから自身よりも弱い者には優しく。自身よりも強い者には敬意を払い、対等な者には対等を寧ろ互いに高め合うことを求めた。
今、この瞬間も行われているチェルシーに対するヒミツの行為は、彼女の『強さ』を『心』を認めた上でそれを試す様な『対等』を求めるが故の行動であり、誰から見ても高慢で誰が聞いても独りよがりで自己満足的だという様な最低に近い行為である。
それ故彼は人外なのだ。
そして、それ故彼は孤独であり飢えているのだ。
「・・・・」
そしてそんな最低最悪の人でなしは彼女の判断に期待しているのだった。




