依頼:『周辺調査と異常発生したわたあめの討伐』1
「はぁ…」
現在俺は王都からそこまで遠くない平原をグルグルと徘徊している。理由は簡単、王様直々に来た依頼である。午前は邪神との戦闘に使えそうな土地や神聖系の魔力を放つ森の調査やどの方角からくるかの大まかな調査、そしてメインである午後は凶悪な魔物である『わたあめ』の討伐である。
「聖剣抜刀、アーカイブスに仮接続、周囲100キロ四方の地形把握を開始。」
俺は聖剣を仮解放しつつ目の付近だけに魔力回路を形成し月の賢者の知識を展開した。このアーカイブスは月という天体を基点とした知識の集積所でありソレの管理者である『月の賢者』に許可をもらう事で、軽い未来視と自身を中心とした第三者視点的な高高度からの観測、そして超解析を発動できるというものである。
直接戦闘に関与はしないが俺の強化を起点とした魔法の逆魔法『解析』を強化して結果的に強化魔法を強める。
しかしながらこの能力の最も活かされる場面はやはり戦況の把握と超遠距離からの狙撃である。第三者視点的なものであるとはいえ超解析を併用すればそこまでの距離や地形把握、どんな強さのどんな硬さの何がどれくらい居るのか位は一瞬で把握できる。また軽い未来視は1分以上先の未来だと確証がかなり薄くなるがそれ以下ならほぼ未来予測であり、未来観測として信用できる精度を誇って居る。
「・・・・面白いほどの平原だな、森が存在していない区域は農業もやっていないというのに膝くらいまでの草しか生えていないのか・・・戦いやすそうではあるな。」
しかしながら、この能力は俺の精神や脳への負荷が高く併用すれば通常頭がパーンと弾けてしまう、実際今も良い感じではない、がパーンしてないのには理由がある。それが魔力回路である。
正確にはその模倣品だが俺の場合、月の魔力を運用するときつまり聖剣抜刀時のみ発動する身体強度を上げ、魔法の威力や月の魔力独特の効果をより効率よく引き出すための強化外骨格的な何かであり、身体能力を下げるための制限術式を構築するための魔法陣の線でもある。
この制限式はエクスカリバーの代償と違い任意発動な上に俺のオリジナルなので、後に残ったりはしない、コレによって俺は体を動かすために使われてる脳の容量を半減させ、結果的に身体能力を二分の一かそれ以下にする効果を発動させて居る。
そのぶんの機動力や瞬発力を魔力や月の魔力で補う事で脳の容量を無理やり確保し広範囲の解析や複数の未来視、高高度から多角的な観測などを行う。
「おっと危ない。」
「ピギッ!?」
ちょっと解説じみた思考をして居ると『大剣角鹿』が俺に突っ込んできて同時に首が吹き飛び遅れて前脚後ろ足が切り飛ばされた。
これが俺の聖剣の唯一と言えるチート能力、俺の聖剣の本質である超高密度のエネルギーの粒子が何の形も成していない時、詰まる所待機モードの時はほぼ自動で俺の周囲を漂い敵を迎撃する、と言うものだ。その自動迎撃を瞬間的な未来視、挙動解析、多角視点などで更に補い相手を一瞬でミンチにする。
「うーん美味しそう。」
まあつまり、そもそも動かなくてもいいのである。
にしてもまだまだ日が高い、もう王都周辺100キロは観測終了し、昨日ボコボコにした平原を直したり、這いよる混沌を観測しようとしてそういえば超解析でも位相の違ってしまった物は見えないのだと思い出してちょっと凹んだり、夜に到来するであろうこの時期の旬魔物であるわたあめとの戦闘場所の確認をしたり、色々したのだがどうにも聖剣有りだと素早く終わってしまう。まあチートアイテムだしね、仕方ないね。
「・・・そういえば賢者の未来視が外れたなぁ、どう言う事だろうか?」
俺は余りに余った時間に呆然としながらボンヤリと昨日戦った終末神を思い出し、同時に俺が戦うのは混沌だけであると言う賢者の未来視が外れた事について考える。
「モードレッドも、運命に歪みが生じて居ると言っていたが、ぶっちゃけあの賢者がその程度を考慮してない筈がないし、創作神話系統の最たるクトゥルフ神話は運命とか、狂気とか、発狂とかたっぷりだし相手は分霊とはいえ神様な訳だからそりゃあ歪むだろうしなぁ。」
聖剣は既に納刀され、月光のごとき燐光を放つ短剣は相変わらず懐に入って居る。手慰みに久し振りとなるレイピアを抜いて型を確かめ、ついでに持って居る武器すべての振り方や持ち方を確認してしまった。
「そーいや、エクスカリバーって結局何なんだろうか?」
「勿論人々の幻想であり理想、それを束ねた星の力ですよ。」
上からの声、どうやら馬に乗って居るようだ。だが特筆すべきはそこではない、バカみたいなカリスマと凛とした声に背筋が伸びる。この声は・・・
「アーサー・ペンドラゴン・・・かな?」
「ふふ、お久し振りですね、私の騎士様?」
振り返るとそこには愛馬ラムレイを今まさに降りた絹のような長髪を持つ記憶のものよりだいぶ成長した彼女が立っていた。
「マーリンとかマーリンとか監視とか色々していましたがそこらへんは乙女の悪戯と思い受け流してくださいね?」
「・・・」
いや、涙したね、あのツルペタ少女の体液から作られたモードレッドがボンキュぼん!だったから予想はしていたが・・・
胸がでかいな!
「死んでください!!」カァ!
俺の兜越しのわかりにくい視線を読んで顔が真っ赤になった彼女のパンチを俺は避ける事なく受ける事に甘んじたのであった。
「フゲァ!」




