俺氏にとって仲間とは…
ヒミツはおおよそ人間とは思えない身体能力を有している。主な原因として幼少期からの過酷な訓練や異常な量の魔力、そして強化をベースとした各魔法に強引な取得など要因は色々あげられるがそれは訓練で身につく最高レベルの能力であり、決して才能ではない、確かに努力するのもソレを習熟する早さも天才と呼べるかもしれ無いが、それは子供の見た目をしたおっさんだったからこその結果であり、チートレベルの天才では無いのだ。
「月の魔力回路を精製、身体への定着、身体能力の半減を確認、聖剣の制限を解除。」
鎧と自分の体、両方に浮き出て来た燐光を放つ束縛の呪い、それはエクスカリバーを振るう時の物と同じであり、決してバフの類では無い。
「・・・」
しかしなぜか美少年は聖剣を抜いたヒミツに勝つことはなく、むしろ手心など加えられなくなった状態で細切れにされていた。
「聖剣による『月の賢者の知識』に接続、インターフェースを左目に展開」
黒髪に黒目という日本人的な姿は今現在左目が紅い光を宿し、髪の毛先が銀色に変色する事で超厨二な、どちらかといえばコスプレ的な雰囲気を醸し出している。しかしそれが似合っているというのもまた事実なのだが鎧姿のため兜を外さなければ左目の発光以外の変化は見受けられない、強いていえば青白いラインが全身に走っている程度だ。
「む、微少女は単独か・・・マーリンは良いな、侍従長は増えてるしモードレッド王はオトナモード、ウヘェ敵は邪神信奉者ですなぁ、間違いない。」
エクスカリバーモドキは消え去り、ヒミツの周りには青白い粒子が吹き荒れている。ソレがいわゆる月の魔力であり、彼の聖剣で有るが、その多くは現在月がない関係で大幅に出力を落としている、しかしその力は他の聖剣に負けず劣らずの化け物である。
復活に時間がかかっている美少年のような肉塊を尻目にヒミツは王城に向けてを翳しそこを一瞬凝視、その左目からは様々な数値や解析結果が表示されるウィンドウがヒミツにだけ見えている。
「術式拘束をさらに上乗せ、身体能力を四分の一に、月の魔力を大量精製、刀身の変更を要請…受理、殲滅を開始する!」
そして術式による拘束を増やし、魔力を精製すると粒子状の聖剣を銃のような形に組み直し引き金を引いた。
瞬間、ハンドガンのような形に見合わない巨大な柱のようなエネルギーの奔流を発射しソレが分割され小夜の周囲だけを焼き尽くす。
「変形解除、粒子形態に・・・っと、起きたか、理性は・・・」
ソレを見ないで確認したヒミツは左手に魔法を複数待機させ右手に黒いロングソードを構え組み上がった形の同じモノに向き直る。
「gsぁびういうひうbsn…」
しかし先ほどまでの知性は既になく、体も半ば形状し難いナニカの程をなしている。終末神の末端である彼の意思は既に何処かに退去し、権能だけが残ったようだ。
「無さそうか・・・微少女は後10秒後、展開に1分くらいかな?」
ヒミツは左手に待機する魔法のストックを増やし手始めにと終末神だったものを地面に縛り付けたのだった。
「ナニ・・・コレ・・・」
いや、理解はできている。ヒミツからの援護であり、私に早く来いと言っているのだろうが・・・それでも理解が追いつかない。
(聖剣を偽っていたとは言っていたけど・・・コレは・・・まるで・・・)
「化け物・・・かな?」
「ま、マーリン!?」
未だ青白い燐光は周囲の怪物を焼き尽くしておりソレが再生速度を超えた破壊で有るがためか、それとも何か別の要因かは知らないが怪物はその数を減らしており、ソレはマーリンの所でも同じであった。
「いやー、久々に聖剣の力を垣間見たって感じだね、エクスカリバー強いわー」
モードレッドによる小規模の聖剣解放によってマーリンと侍従長によって膠着していた戦場は一気に吹き飛んだ。代わりにモードレッドは暫く再使用まで時間を欲したがそこにヒミツの援護が加わり瞬く間に怪物は数を、体積を蒸発させたのだ。
「・・・」
しかし、小夜の表情は晴れない
「何を考えているのか手に取るようにわかるけど多分余計なお節介だよ?彼は進んで化け物じみた力を手に入れたし、彼自身ソレを特に問題とは意識してないからね!」
マーリンはそう言ってヒミツの援護に行こうとしたが小夜に止められる。振り返ると完全武装巫女服を着込んだ小夜が佇んでいた。
「ふふっ、あまりなめないでください、私が彼の事を、ヒミツさんの事を心配している訳がないじゃないですか…」
「ふむ?そうかな?」
「そうですよ!」
小夜は最も信頼できる神の触媒としてその神から渡された鏡を取り出しながら言う。
マーリンはニヤニヤとした笑みを崩さない、しかし小夜は嘯く。
「私は信頼したんです。ヒミツさんの化け物具合を、ぶっ壊れ性能を、ちょっとでも間違えれば全てが煤に変わってしまうような私の力を振るうのに、私を止めてくれるという確信を得ただけです。」
過去に起こしてしまった惨劇や、悲劇を、自身の力への恐怖を感じ震える手足を『仲間』への信頼で強引に、止める。
「へー、実は小夜ちゃんはツンデレさんかな?」
「あ、恋愛感情とかは無いんで。」
茶化すマーリンだったが一瞬にして素面になった小夜を見てギャグ時空の汚染を感じたのは言うまでもなかったが、マーリンと小夜はほぼ同時に平原から王城に向かって何かが吹き飛んできているのを認識し、その瞬間に彼女らの真横に着弾した。
「・・・遅いんですが?ねえ?何ご都合主義たっぷりのラノベみたいに駄弁ってんの?試合終了30秒前が30分みたいな感じのサッカー漫画とはちげえんだぜ?オイィ?」
ソレは煤や土やなんかでボロボロのヒミツのであり、見えていた中で最も確率の高い未来の光景が切り替わったのと同時に唐突に吹き飛ばされたのだった。
愚痴を言いながら立ち上がると彼はほとんど準備ができていない小夜とおそらくその原因であろうマーリンを見るとゴミを見るような目で一瞥した後
「俺は、サッサと行動できない愚図に用はないから、」
と言って、無駄に巨大化したナニカに向かって突貫して言ったのであった。
残された二人はヒミツの猛烈な怒気と殺気と罵倒に意識を飛ばしかけたがなんとか踏みとどまったはいいが、そこでヒミツの罵倒がよぎり強烈に胃が痛くなったのと、恐らく好機であった一瞬を逃したのだろうと言うのの二重の精神負荷により結局再起不能になったのだった。
当のヒミツはアーカイブスによる並列思考と世界観測によって得た情報から彼女らの処遇を決めつつ、怒りを全て終末神だったモノにぶつけて一応の収まりをつけた。
史上稀に見るダメパーティー




