唐突な戦いについていけない?問題ない、俺氏もだ。
どがん!べこん!
コミカルなようでいて恐ろしい、金属板を大きく歪ませた時のような音がする。発生源は勿論平原から、さらにいうならヒミツと恐らく終末神の分霊たるこのいけ好かない美少年であろう。
「あははは!楽しい!楽しいよ!」
「そうですかねーッと!」
美少年は素手で、ヒミツは新品のバスタードソードを両手持ちや片手持ち時には蹴り飛ばして使う。
「ふぅ!あっぶな!」
影を使った武器の高速切り替えや魔力による強化はせずとりあえず武器に慣れることを優先に、どうやらこの神様、殺すとか叫んだ割にはかなり手心がある。殴るとSAN値が削れているのか言動が怪しくなってくる。
右手、左手と片手持ちを切り替えつつ袈裟斬り、薙ぎ払い、兜割のほぼ三つの太刀筋で上下左右どの位置にでも正確に斬撃が放てるように自身を調整していく。しかして戦いには大雑把さと言うのも必要だ。決まり切った型と言うのは速いが脆い、
「ぬぅ!?ッガ!」
ある程度の柔軟性を維持しつつ武器を揺らしたり、上下左右の切り分けを無規則に、時には技術ではなく殆どを力で振り回したりとバラエティに富んだ攻撃を放つが、先ほどもだがヒットして体が吹き飛んでもすぐさま周囲の魔力をかき集めて再編成し、肉体を急速に修復している。しかも確実にじわじわとだがどす黒い生け贄の香りが漏れてくる。恐らく破壊神信者が嫌がらせに召喚して来た弱体化分霊を汚染した結果だろう。
「キリがないな・・・あー、(マーリンまだなのか?)」
あまりにも遅いので念話を・・・
(不味いよ!なんか騎士派の人達が一気に攻勢になって残った数少ない貴族派を抱えて突貫してきた!)
「にゃにぃ!?」
「がガガガ……グヌゥ、疾くしとメイ!力が暴走するぞ!っグ!?」
面倒臭いぞ、コレは・・・騎士派とか貴族派とか言えど騎士王である以上迎え撃つだろうがその隙にナニカ別のものがきそうな気がする!主に邪神信者とか!
「ウギギ、最高火力は俺じゃねえんだよ!てかその自動的に攻撃してくんのなんとかならないんですかねえ!?」
「ムリだナ、如何につよいジュつ式とは言え油断していたワタしの不覚だがカナリ強ク侵食サレテイル。トメルニハ………そうだなとりあえずチリも残さず殺しツクシテクれればなんとか・・・死ぬ?カナ?」
「強すぎわろすwしゃあない、ちょいと本気で行きますかね。」
ヒミツはバスタードソードで美少年を思い切り吹き飛ばして偽聖剣エクカリバーを構えた。
「来い!月剣『三日月』!」
「ヒュー♪それが君のブキカ…」
場所は変わって謁見の間付近、そこでは貴族派の生き残りがナニカをされた騎士派を率いて攻め込んで来て来た。
「木よ!花よ!我が敵を貫き其の力を示せ!『偽・薔薇槍』ふっとべぇ!」
しかし流石は花の大賢者、瞬く間にそこらの花瓶や周囲の植物を操り床や壁を覆うことで自陣に有利な地形を生み出し自身は彼の聖槍を模した木そのものである長槍を複数召喚し虚空から射出する。着弾した相手は貫かれるのと同時に成長した木々によって磔にされ、さらにその根や枝は周囲の人間をも巻き込んで貫き血の海を創り出す。
「ちょっとー!王様ちゃん!手応えがおかしいんだけど!?」
通常ならこれで十分な筈なのだが・・・どう言う仕掛けか騎士派の兵たちは手足が吹きとぼうが、頭が亡くなろうがズンズンとこちらに向かって来ており、最悪なことにちぎれた手足は結合しあって盗賊団で見たような気色の悪い怪物を創り出す。
「どうやら邪神信奉者とか言うゴミが私の、そして父上の国にいるようだなぁ…近衛兵たちは精神汚染耐性、または精神強化系の魔法を発動し宮廷魔導師団との連携の元、王城を魔法的、物理的に閉鎖、封殺しろ!」
「「「イエス!マイロード!」」」
モードレッドは聖剣とメダロックを構えオトナモードに変身して片端から全てを肉塊に変え、侍従長はソレを使って自分を増殖させながら魔法と物理での援護を強化していく。その間に近衛兵と残ったモードレッド派の騎士そして別方面からの貴族・騎士派もとい『邪神信奉者』の迎撃に当たっていた宮廷魔導師団は合流し王城を周囲から隔離しその結界を宮廷魔導師団が起動するまで近衛兵と騎士は時間を稼ぐ。
「素晴らしい手腕だけど・・・不味いなぁ・・・」
しかしマーリンの目には未だ増殖し続ける肉塊ばかり、この惨状を生み出した術者の影も掴めていないのだった。
「気色が悪い、と言うには些かぼうとくてきすぎますね。」
そういいながら野太刀を巧みに操り制御できるレベルまで神の力を自身に付与した佐藤小夜は単独で自身の周囲の安全を完璧に確保していた。
(小夜!小夜!聞こえてるかな?急いでヒミツ君のとこ・・・あ!もう!増えんな馬)ぷーぷー
「心配ですね、それに私を呼んでいるというヒミツさんと戦闘している神気・・・行きたいのは山々なのですが・・・」
迫り来た触手を微塵に切り裂き太陽神直々の焔で焼き尽くす。結界にも火属性を付与したなんとか拮抗しているが正直余裕などない。
(それにヒミツさんの魔力…いえ、気配が増大しました。聖剣を抜いたのでしょう、しかし今は昼間、戦闘力の向上はあれど劇的ではない筈です。・・・っく!)
詰まる所余裕がないと言うのが今の現状であり、ソレをひっくり返すほどの火力は有るが使えば火の海は避けられない
「くぅ!」
しかし、ヒミツはやはり腐っても人外レベルの超人で有る。青白い奔流が王城の壁を粉砕しながら小夜の周辺を焼き尽くしたのは小夜とマーリンが膠着に陥り、ヒミツが聖剣を抜いて程なくの事だった。




