依頼1:城を崩すなら食糧から、貴族を崩すなら金から。
朝である。清々しい朝である。さて、今日の予定を確認しよう。
「あーっと、先ず帳簿の入手だな、貴族側のお偉い奴の資金支出とかからせめてじわじわ絞め殺すか、殺る時は理由を作らないと本格的にアレだからな。」
部屋の様子は変わっていない、強いて言えば今朝朝の一時程に扉の外で大きなものをうごかす音がした。因みにその頃俺は設置者にバレない様に細工をしながら魔法封殺の解除と逆監視体制を構築、昨日使ったルート上のワイヤの跡やなんかの修復もしてた。疲れた。
「ウェーイw!ヒミヅゥザン!ザクバンハドコニイタンディスカ!」
防音結界を張って置いた部屋で1日の予定とやる事リストをカカッと作成していると何故か滑舌がオカシイマーリンが窓からライダーキックをかまして来たので取り敢えず避けつつ答える。
「え?王様の寝室だけど?それが何か?て言うかナゼェココニイルンディス!マーリン!」
おっと、俺にも感染してしまった。案ずるな、シリアスの次はカオスが描きたくなる唯の病気だ。
「いや、まあマジレスされると私もネタが繋げられないんだけど?」
唐突な素面はやめてほしい、折角防音にしたのだからもっとふざけてもいいんだぜ?
「そうですね、取り敢えず深夜に女性の部屋に忍び込んだヒミツさんはギルティーですね?異論は認めない。」
すると次は天井裏から神様方からに寵愛や加護がありすぎて常時ステルスモードな小夜がハイライトのない目で薙刀を振り下ろして来た・・・振り下ろしてきた!?
「ふんぬ!」
「う、うまい!」テーテッテレー
ギリギリで真剣白刃どりを成功させつつ軸を横にずらし薙刀ごと小夜を床に叩きつける。
「甘いです!野営が何度もあったのにわたしたちを襲わない変態ろりこんは死ぬべきなのです!」
しかし次は刀を札から出しながらスタイリッシュに空中を蹴り突貫、と言うか微少女(見た目)とウザい系幼女(腹黒)とか選択肢の外側なんじゃが?そして何故襲われることを普通の様に話しているんだ!此奴はぁ!
「それは違うよ!」
俺は超高校級の指差しと共に真剣白刃取りを二本指で敢行、成功と共にデコピンを食らわせ取り憑いている何かを強制的に剥がす。更に左腕からワイヤーを発生させ射出、新機能の錬成機能を使い先端をゴムに変えてあるので壁を跳ねまわりあっという間に簀巻きの完成である。
「君も巻き込まれてるけどね。」
「お前もな」
「ハッ!私は何を!?」
俺の慌ただしい1日は始まった。
朝食と王様との面談、ちょっとしたゴミの始末をして昼頃、俺は今回の以来のメインターゲットである貴族派の中枢、魔道具越しに監視している間も偽名呼びを徹底させていたが王様が味方の暗殺だ。面も名前も領地も住処も割れている。
「楽な仕事だぜ・・・」
いやー、中東での紛争に巻き込まれながらのビジネスを思い出す。まさか護衛兼通訳の彼がテロリストだったとは思わなかったねぇ・・・ま、正当防衛(笑)の餌食だったがね。
今は影から影へ時には雑踏に紛れ、いくつかの情報屋や裏の怖〜いお兄さん方にお話を聞いている。まあ結構な悪党らしく、その地位と情報網からモードレッドを探し出し神輿に仕立てその後実権を握って国ごといただこうとか言う業突く張りだ。
この前ぶっ潰した『英雄』の盗賊団が起こしたアーサー王暗殺にも関与してるとか言う情報もあるくらいだ。そのほかにも現在この国では規制が強くなって来ている奴隷売買の裏ルートやら、アーサー王時代の終盤に唐突に成り上がって来た所も突けば出るわ出るわ血みどろの話・・・うむ、クズいね!
「ふむ・・・」
いい構図だ。どちらもイかれてるがあちらさんのがイかれてる。それに腐敗してやがる。殺して得なのは圧倒的にあっちだ。
「ククク・・・」
(大変です。ヒミツさんが歴戦の傭兵みたいな顔してますよ?)
(・・・謎だねぇ。)
・・・まあなんでこんな回りくどいことをする羽目になったかと言うとこの二人が原因だ。
なんせマーリンは美少女だし、小夜も認識阻害が外れる様な事があれば超絶美少女な上通常時いつも微少女と言ってはいるが注視すれば中の上程度の年頃の娘だ。幾ら治安がいいとはいえ目立ってしまう。
それに言ってはなんだが一人のが動きやすい。
「聞こえてんぞ、てかなんで来てんだよ?」
「えー、だってお城にいてもつまんない〜(王国を良くするのは上司からの基本オーダーだしね。)」
「ええ、まあそうですね。(あの豪華なところに一人は耐えられません!畳と緑茶が恋しいですぅ!)」
マーリンはいいとして今回は微少女がポンコツな回かよ、勘弁してくれよ!ぶっちゃけ自分で盗みにはいればもう今頃はいろんなとこに情報をリークして自爆してもらうつもりだったよ!
「あー、もうこれからは地味な工作しかないからとっとと帰っとけ、マーリンもな、て言うか小夜を縛り付けとけよ〜?」
「ふむ・・・わかったよ、じゃあ、今夜あたりに色々OHANASHIをしようかね?」
「・・・しゃあないな。面倒臭いがね、代わりにちゃんとみとけよ〜?」
「ヘイヘーイ。」
まあマーリンは聖剣の話は盗み聞きしてたみたいだし小夜も合わせて左腕とか王様とかの話と今回の依頼の話をしないといけないからな、俺は転移していくマーリン達を見送り裏路地の怪しげな酒場から出ていくのであった。
あと裏路地ついでにホーエンハイムに鎧の修理を頼んで置いた。
「あのさぁあ・・・私は鍛治士じゃないんだよ?そこらへんわかってる?」
とか言われたがぶっちゃけ彼女以上に上手い鍛治士など超一流と呼ばれる一握りくらいだし、鎧に魔道具的な機能をつける事ができるのも彼女くらいだ。まあ今回も素材に物を言わせてごり押ししたけどな、うん。
その日の夕方揉み消せないほど様々な方面へばら撒かれた嫌われ者のスキャンダルは凄まじい勢いで拡散されその悪事からそれなりな懸賞金がかかった。モードレッドはその報告を受け少し口角を上げるとその討伐依頼を俺にも横流しした。
「へぇ、領地に私兵団と傭兵合わせて1万ね・・・」
騎士鎧ではなく竜の皮と鱗を使ったスケイルメイルと皮鎧のハイブリッドに黒い外套を纏い、王都から西へ行った哀れな小悪党の領地の森の中、既に街を視界に入れられる範囲に佇んでいた。
内部反乱分子の始末をする代わりにモードレッドは混沌退治に全面協力をする。口約束ではなく魔法的な契約書と神様の加護持ち同士の為出来た相互監視システムのよりそれは確約されている。
更に俺の一手間により国からの報奨金ももらえる・・・金と貸しはあった方がいいからな。
「じゃあ、マーリン達のとこに戻るか。」
懸賞金の公布が明日なので今日は彼女らへの説明に頭を痛めそうだ。




