カラクリと今後と狂気
何故俺の左腕がないか、コレは聖剣の使用権を手に入れようとしたからであり、その反動だ。
「そもそもエクスカリバーは持つべき人物、魂、そう言った適性が高くないと動きもしないんだよ、それこそアーサー王の複製体だったりとかね。」
そう、そのため俺は膨大な魔力消費し、左腕の全てを犠牲にし、そして使用後の強制的な身体能力低下を対価に『聖剣エクスカリバー』の真の力・・・とまでは行かなかったが、強力な魔力砲として解放する事に成功したのだ。
それを使ってエルフの里や単独での邪竜退治、そしてアーサー王の警護時ほぼあらゆる邪悪を粉砕できる素敵な剣としてエクスカリバーを使用した。恐らくアーサー王警護時に正式に契約をしたんだと記憶している。
「でも、ヒミツは幸いなことに月の女神たる私の寵愛と賢者の加護があった。砕けたエクスカリバーの月の側面を偶然にも手に入れた彼は少ないながらも加護と寵愛を経由して月の魔力を運用できたのさ。」
神様とあったのは転生して五年程経ったある日、孤児院での祈りの時間、そこだった。それがなければおそらくこんな面倒くさいことをしなくても済んだだろうが、確実に今よりも弱かっただろう。
「それを使ってヒミツと私たち双子月の神は無形の聖剣を作り、力を封印して無形の聖剣の核として使用できる様にエクスカリバーを調整したの、どう?簡単でしょ?」
全力使用できるのが夜だけだったり、詠唱が必要だったり、体を侵食されたりするのはそう言う事情からであった。まあ詰まる所俺にとってエクスカリバーは拘束具でしかなく、振るのにもビームを出すにも効率の悪い浪漫砲な訳だ。
まあ、まさかアーサー王も俺が左腕吹っ飛ばしながら聖剣を振るうのにはおどろいたらしい、報奨金はたっぷりもらえたしホーエンハイムとの縁も其処で出来た。
「つまり・・・」
エクスカリバールを取り出してガイアに渡したモードレッドは幼女になっているがメダロックに何か仕掛けだあるのかさっきまでほどではないがそれでも実年齢よりかは上の姿になっている。
「エクスカリバーがない方が俺は強いぜ?」
今朝俺に勝負を挑んできたモードレッドは少し認めたくない様子だが、事実だ。
て言うか聖剣を持つと弱くなるとか・・・普通思わないよね、うん。俺も最初はちょっときたしてたんだけどね・・・うん。ダメだったよ。
ガイアとヴィヴィアンは着々と聖剣の修復をしていく。それを見るモードレッドは複雑そうな顔をしていた。
む、今更だが服に魔法陣が組んであった。多分マーリンのだな、なんかラインから流れてくるあいつの思念が超乱れてるし、てか、あいつ上司からも俺からも情報が少なくて苦労してそうだなぁ。
「ふふっ、無茶苦茶だろうが彼は主に純粋な魔法と剣技、そして体技によって此処までの戦闘力があり、かつ月の魔力を利用してさらに強化される訳だ。今まではその魔力で聖剣の使用権と反動の軽減をしていたぶん出力といくつかの力を使用不可にしていたが・・・まあ、単独なら五分で、もし君がその剣を持って協力してくれるなら八割程度まで旧主の分霊に対する勝率をあげられる。」
「それに、砕け時に聖剣のカケラは無数に出来たわけで、あの短剣程度のレプリカ、偽聖剣と言うべきかな?あれは沢山あるからね、引き続きヒミツには聖剣を持ってもらうことは可能だよ〜、ま、エクスカリバーの機能はなくなって、本当に月の魔力を運用するための触媒としてだけどね。」
まあ、なんと言うか無茶苦茶な話だがそう言うことなのだ。まあそれに普通にやるならエクスカリバーもどきの身体能力制限術式は邪魔にしかならないが普通じゃない方法ならどうにでも、むしろそれが俺の切り札となっている。
「あはー、無茶苦茶だぁ、素の戦闘力どころか手加減した状態で我らが理想の王様を倒しちゃうなんてねー。」
「そうですね、アーサー王は既にロンの槍に武装を変更している為エクスカリバーの使用権は失われて久しいです。それにカリバーンの原点であるメダロックを所有して正式な王であるモードレッド以外に現状この聖剣を使える者は居ないと言う疑念はあったのですが、そう言うカラクリでエクスカリバーの様な違う何かを使って居た。と言うわけですか・・・」
どうやら聖剣の統合は完了した様で、二人の力が若干落ちているが問題はない様だ。それは正式にモードレッドに渡される。
「これが・・・『勝利の聖剣』その完全体・・・」
本来の姿を取り戻したエクスカリバーは月と星、その二つの天体の関係を使った相乗効果と人々の願い、伝承上の信仰、その全てが合わさりその刀身は輝き、持ち主に不死に近い再生力と不老を付与し、必勝の祝福をもたらす。
刀身は輝き、正統な両刃の直剣の姿に見える。装飾という装飾はなく、唯一あるのはその輝く刀身に刻まれたルーンのみ。
しかしそれを受け取って持つとモードレッドは不満気な顔した。
「む・・・付け足して居た権能の殆どが取り去られている?」
「ああ、それは大丈夫あと数日もすれば元の形、もとい釘抜みたいなか「バールです。」くぎぬ「バール」く「バール」・・・・バールになると思うよ?」
なぜそこまでバールにこだわるのかは不明だがきっと譲れない何かがあるのだろう。俺はエクスカリバーとしての力を失った唯の月光短剣を受け取りそれを懐にしまったのだった。
「じゃ!そういう事で!僕らは帰るよ!」
「えー、ヤダヤダヤダ!ヒミツは私のなのー!」
「私もそろそろ星への負荷がかかり過ぎるのでお暇させてもらいます。」
聖剣の修理、偽聖剣の補充、ネタバラシが終わったところで神様連中は精霊である湖の乙女を置いて全てが元の位相へと帰っていった。湖の乙女も力の損耗が激しくしばらくは動けない様で瓶の中に閉じこもった。
妙な静寂がなくなり、俺とモードレッドはようやくあの異常な空間を脱し、通常の時間軸への帰還を果たしたのだった。
「・・・邪神の件は私も協力します。直感ですがこの王都付近での戦いになるでしょう。」
「ああ、そうしてくれると助かる。月の賢者もガイア様も色々言ってたからな。」
緊張からか手をつけて居なかった紅茶にモードレッドが手をつけ、一息つく。そして何かを決心した様に息を吐いた。
「では、今回此処に来てもらった個人的な理由をお話しします。」
さて、本題だ。ようやく本題だ。今日、何故、なぜゆえに俺を此処に呼びつけたのか、いや、まあ予想はついている。
「・・・王様の警護かな?それとも内部勢力の鎮圧?どちらがお好みかな?」
するとモードレッドは本来の獰猛さをにじませ口角を上げた。
「戦争、殲滅、討滅。なんでもいい、父上の事を追う奴は追わせておけばいいし、貴族も勝手にすればいい、だが、『邪魔をしてくるなら遠慮はしない』私は、そういう奴だからな。」
豹変したかの様だが彼女の本性は苛烈にして鮮烈な狂戦士、伝承上の邪心よりもよっぽどいいがよっぽどヤバイ、アーサー王の全盛期が理想の王の体現だとするのなら、彼女はそれを上回る狂人であり狂王だ。
なんせ人の心を捨てた王様ともとより人でない王様だ。幸いなのはどちらも国を潰れる事良しとしない信念を持っているという事、
それに、俺が止めようと、もし此処で始末しようなどと思えばあそこの侍従長が防ぐし、俺にメリットがない、
「オーケー、わかった。しばらくはお国の為の掃除でもするとするよ。」
俺は既に旅人だ。一定の良識はあるし、人並みに善意もあるがその程度である。この国ですごしやすくなればそれでいいし、邪神対策で此処に立ち寄っただけでそれをどうにかすればしばらくはのんびり旅出来るだろう。
返事を聞いたモードレッドと詳細な打ち合わせや依頼内容の擦り合わせ、報酬や要注意人物などの意見交換をした後俺は部屋に戻るのだった。
「おやすみなさい。」
窓から飛び降りた俺を見送る幼女姿の彼女はきっと素晴らしく恐ろしい顔をしているのだろう。




