作戦会議?
豪奢な巨大浴場や丹念に仕込まれたであろう、それこそ俺たちがここに来ることを予期して居たかのような完璧な仕上がりの宮廷料理、おおよそ王族貴族の受ける歓待のほとんどを受けつつ、時折感じる明らかにモードレッドに賛同して居ないであろう貴族の騎士や、こちらの監視を強化する不自然な近衛、離された部屋に盗聴、盗撮魔道具など裏の歓待もお腹いっぱいに受けた。
「貴族派に懐古派ねぇ・・・」
まあよくある話で、魔道具などを仕掛けたりして来たのなら逆にそれを媒介に相手を覗き見ることも出来る。
小賢しい、そして高価な品々を贅沢に使った工作を使って来て居たのは貴族、それもアーサー王の退位後モードレッドを神輿にした方々、つまり傀儡にまんまと出し抜かれたお馬鹿さん達だった。
暗殺者を紛れ込ませたりして来たのもそいつららしい、まあ俺が狙いじゃあ無かったが、神輿に担いだ少女を暗殺なんてわかりやすい目的なのだと言うのだからお笑いだ。
また、兵士の中や特にアーサー王に陶酔していた者でキャメロットに連れて行かれなかった者達、それらが君主が変わった今もアーサー王を信奉し、だが立場は捨てられないと言う所謂どっちつかずな半端者が懐古派として暗躍(笑)をしている。
まあ、貴族派に比べればおままごとのようなものな上、モードレッド王に対して物理的な強硬手段に出れないのだから束になろうが実質的な脅威とは言い難い、だが人数がいる。
噂やそれこそ貴族派と結託などされれば面倒なことになるだろうと言うのは御察しの通りである。
さて、俺は今、黒のパーカーに儀礼用の騎士鎧を手脚に付け、外套を纏い窓から出て城の壁にワイヤーフックで貼り付いている。
「まさか扉を物理的に閉鎖するとは・・・脳筋すぎだろ。」
理由は簡単、隠密などの為の通常の魔法発動と物理的な出入りを扉だけだが封鎖されたのだ。よって、この無駄に明るい上にちょっと肌寒い月夜にお姫様に会いに壁登りに興じなければならないわけだ。
「愛してるぜ〜、ホーエンハイム。」
早速ワイヤーフックの機能が働く。
思念でタヌキチに呼びかければ良いだけの簡単なお仕事だ。
瓶に居た方もちょっと血とかを沢山あげて八目ぐらいにまで戻して外套と同化してもらっている。それによって外套伝いに右腕からもワイヤーを射出可能になった。
まあ、発射機構の付いている左手と違って右は本当にワイヤーが出るだけなので投げないといけないのだがね。
城の壁なので所々魔法耐性が高いがこちらの魔法を封殺するほどではないので『静寂』を靴と鎧に掛け、『隠密』を発動し存在感を薄く、希薄にし、左右のワイヤーを使って窓の淵から窓の淵、屋根の上などニンジャ的なアクションと、哨戒している兵士や騎士に見つからないように時にはちょっと寝てもらうなどの蛇的なステルスアクションをしながら頂上付近、侍従長にそれとなく聞いておいた『王の寝室』に到着した。
「よっとな。」
寝室、と聞いて居たが窓にはかなり念入りな対呪詛、対旧主の結界があり魔法を呪詛とみなしたのか発動中の魔法を破棄されたが問題なく窓を開け、侵入に成功する。
「こちらヒミツ、誰か、応答してくれ。」
某蛇のようなバンダナを出し珍しく兜をしていない頭につけて見る。うん、楽しい。
「あなたはいつもふざけていますね。」
少しかがんで居たからかベッドに寝転がっているパジャマ姿のモードレッドと目が合う。視線で窓を閉めるように指示を出されたのでとりあえず閉めておく。
そして向き直るとベッド縁に腰をかけ、足をぶらぶらとさせて居た。
周辺から少々異様な気配やら、何故かモードレッドの寝室で寝ている侍従長とか、突っ込みたいのを我慢しつつモードレッド王、幼女に話しかける。
「おっと、居たのか。」
「そりゃあしんしつですから。そちらこそよくもまあいったとおりに、それもさわぎのひとつもおこさずにきたものです。こうちゃをだしましょう、好きなところにすわってください。」
「感謝する。」
トテトテと歩く姿はやはり幼女であるが魔力の扱いのうまさや運用方法が達人のソレだった。そしてそんな彼女が入れる紅茶には期待できそうだった。
俺は影から上等な椅子と机を出し、並べる。少々不健康かもしれないがお茶請けに自作のカントリーマ○ムを出す。ちなみに俺はココア派である。
紅茶を白磁のティーカップに注ぎ、その香りを漂わせながら盆を持ってくるモードレッド、しかしやはり見て居てヒヤヒヤするので途中で受け取った。
「ありがとうございます。・・・さっそくですが、あなたもひとりの『聖剣使い』であることをぜんていにきょうりょくか、できればいらいをしたいのです。」
「とりあえず、お話をしましょう。もちろん『聖剣使い』として聴かせてもらいますよ?」
遠回しに聖剣使いである事を伝えつつ紅茶を一口、うーんこれは・・・だーじりん?
「すこしめんどうなのでせいけんをつかわせてもらいます。きて、エクスカリバー。」
そう呟きエクスカリバーがモードレッドの体に吸い込まれると昼間見た大人の様な姿をすこし幼くした様な、しかし魔力を感じないので本当にただ変身し『王として振る舞うにたる姿形』になったのだろう。
「ふぅ、やっぱりすこし疲れますね。」
「それが聖剣に付け足した能力かな?」
「・・・やはり、砕けた物を持つ人間と言うのは似るものなのでしょうか?貴方の剣も聖剣とは言えないほどに改造されている様ですね。」
「まあ、湖の乙女なりドラゴンの息吹なりでさっさと直して一本にしてしまった方が俺としては楽なんですけどね〜」
「・・・」
あら、なんだか複雑そうな顔をしているな。
モードレッドは少し溜息を付いて紅茶を一口含み飲み込み、口を開く。
「・・・そうですね、そこからになるでしょう。貴方は聖剣に加護を付けている神から神託は降りましたか?」
「ああ、そのために武器を新調したり鎧直そうと思ったりしてたんだけど…」
なんせ邪神様だからねぇ、恐らく分霊だけど。
「恐らく今回来る邪神は現界する為に触媒にヴィヴィアンを使って来ます。」
思わず咳きこんだ。
モードレッドも口調に迷いがない事からどの様にかして確信出来る情報源から情報を得たのだろう。
「ゴッふ、げっふ、ふぅ・・・何故、と言うかどこでそんな事を?」
「私の聖剣に宿る加護、この星の分霊から教えられたものですが・・・・違う方面からの確信もお話ししましょう。」
そう言って微笑むとどうしようもない位俺の知るアーサー王にに過ぎていた。




