面倒なそれでいて必要な依頼と協力。
話をしよう・・・あれは今から数時間まえ、そう、訓練場にいた時の話だ・・・
「ふざけている余裕があるとは・・・流石ご主人様を倒しただけはありますね、しかし!この超メイドの前でその隙は致命的です!」
「おっと。」
硬質化した腕を黒剣で弾く。ガキンと金属同士のぶつかる音がするが片方は紛れもなくメイドの腕である。
「ところでなんでおたくは殴りかかってくるんです?」
「良い質問です。答えは『貴方が信用ならないから』です。」
即答である。
その間にも彼女は着々と増えている。まるでスライムの様に、まるでモードレッドを守る様に。
「なにおー!そっちだって山賊使ってアーサーちゃんの聖剣を砕いた癖に!」
「ぶち殺して差し上げましょうか?花の魔術師、どうせ貴方の主人であるアーサー王の送り込んで来た刺客なのでしょう?」
「なんか大変そうですね〜」
「・・・お前は落ち着きすぎだ。」
「じじゅうちょう・・・もうすこししずかに・・・うるさい。」
「はい!直ぐにでも!」
さて、じゃあ数時間前に遡ろう。
事は数時間前、もといモードレッドを張っ倒した後であった。モードレッドを引き渡してそのまま悩んでいるといつの間にかいた二人目の侍女が目の前に居てこう言う訳だ。
「さて、とりあえず貴方には死んでもらいましょうか。」
「What!?」
すまない、普通の反応ですまない・・・いやさ?だって唐突にしかもいつの間にか現れた誰だかわかんないメイドさんに『オレサマ、オマエ、コロス』(違)とか言われたらそうなるだろ?
むしろ反応できたことに感心して欲しいくらいだ!
で、俺は咄嗟に後ろに後退するがこれまたいつの間にかメイドさんが背後にいて、しかも前にいるのと連携して襲いかかってくる。
なんか関節が曖昧だったり、人外な速度で動いてたりよく見ると全員同じ顔だったりと不自然というかむしろどこが不自然じゃないのかわからないがそんな意味不明なナニカが襲いかかって来た訳で、俺は咄嗟に左腕の新機能であるワイヤーの精製を行い一人一人丁寧に捕獲した訳だ。
だがどうしてなのか叩いて叩いても出てくるモグラ叩きのモグラ的なメイドさんに傷を付けずに捕獲するのがだんだんと難しくなり素手での迎撃に切り替え相手の意識を奪う方向にシフトしたがそれでも中々に厳しく。
全員が超級冒険者程度かつまるで以心伝心的な連携がありしかも俺は相手がモードレッド王の付き人である上に当の本人が伸びている為に縛りプレイを続けなくてはならないという状況のため事態の収拾が付けられずジワジワと圧される。
「うへぇ、多過ぎだろ、何人姉妹?ていうか一卵性でこんなに増える?」
「・・・冗談で言ってるのなら死んでから脳の機能を改善した方が良いのでは?」
「だよねー」
気が付けば周りにはぶっ倒れたメイドさんが山積みに、その死角から気絶して居ないメイドさんの凶刃が俺に迫ったところで唐突に生えた木によってそれは防がれる。
それと同時に聞き慣れた幼女ボイスが空から降って来た。
「ぬーん!そこまでじゃあ!」
「あ、おはようございます。」
「うん、おはよう、マーリン助かった。」
「ッチ、花の魔術師ですか、面倒な。」
杖に二本足で乗って飛んで来たマーリンが木と魔法を連続的に生成し訓練場に投げ込む。それを避けるメイドさんを空を走って来た微少女が麻痺の効果を込めた麻痺の札で止める。
で、最初に戻る。
しかしどうして来たのだろうか?マーリンには魔力のラインが有るのでそれを辿ってくるなり、むしろ最初から透過してついて来て居たりしてもおかしくは無いんだが・・・
「いやあ、よく考えたら新しい王様を見るのも一興じゃない?私、一応キングメーカーの後継者だし!」
「その割に王様作ってませんけど?」
「ゴッふあ!?」
駄目だ。既に空気がいつもの緩みきった感じに戻っている。今のマーリンから情報を得るのなら酒か泥酔かしか無い!と、思ったがこちらの人数が増えたところで多勢に無勢は変わらない。
「殺意のこもってない攻撃で、口だけ殺す殺す・・・ナニカいいことでもあったのかい?」
「・・・あら、バレて居ましたの?」
「じじゅうちょう、あいかわらずせいかくわるい。」
気が付けばクラシックなメイド服を着た侍従長と呼ばれた妙齢の女性は一人になっており、後に残るはマーリンの作った破壊の後のみ、むくりと完全に回復した様子で起き上がったモードレッドは美しく一礼をする。
「ようこそ。」
短くそう言うと侍従長はその後ろからスッと出て来て素人目にも美しい優雅な一礼をするとモードレッドの補足をする。
「あらためて『月光の騎士』、『花の魔術師マーリン』そしてその同行者である『異世界の勇者』様方、ようこそブリテンへ、いささか手荒な歓迎に成りましたが、どうか我らが城にて体を休めてはいかがでしょう?」
なんと言うか話がぶっ飛んでいるが侍従長とモードレッド、そしていつの間に湧いて来たのか宿に来たのとは比較にならない技量を持っているであろう騎士が、この不自然な状況においてナニカを伝えようとしているのを感じた。
「・・・有り難くお受けいたします。」
「ヒミ「ではではこちらに、日が暮れないうちに客間へご案内いたします。」・・・むぅ。」
侍従長について行く時すれ違いざまにモードレッド王はヒミツにだけ聞こえる声で
「どうかひがくれてからけいびをまいてわたしのしんしつにきてください。」
そう、囁いた。




