王たるもの騎士たるもの1
気がつけば王権を表す折れ砕けたとされる王の選定剣が突きつけられている。
「『月光の騎士』ヒミツよ、妾と聖剣使いとしての技量比べをしようではないか?」
ざわめく騎士達、そしてうっかりこのタイミングで降りて来てしまった小夜、妙に黙っているマーリン、それらを見てから騎士鎧の冒険者はこう答えた。
「ふむ、報酬が出るのなら受けましょう。あいにく私は冒険者、危険には報酬を求める、そういう者ですから」
芝居掛かった様に、そして相手を煽る様にこう答え、激昂したかそれとも別の理由か切りかかって来た騎士の剣を左腕で受ける。
金属と金属のぶつかる鈍い様な澄んだような音が響き剣が折れる。
「ふむ・・・いいだろう。公式にすると面倒だと思っていたところだ。報酬は貴公の戦いぶりによって決めるとしよう。」
あら?どうやらこの王様も煽り耐性がおありのようで、随分と寛容な王様のようだ。だが、信用はできない、あの眼は確実に狂気を孕んでらっしゃるぜ?
「ついて参れ・・・ああ、お前とお前、妾の客に剣を振るったな?」
ついて来いと言われたのでスッと立ち上がり、護衛の騎士の背中越しにモードレッド王を追いかけるが、唐突に立ち止まり進路を剣が折れた事に驚き放心していた騎士二人に変えた。
「耐えて見せよ、死ななければ晴れて平民だぞ?」
「ヒッ!」
「く、クッソお!」
後ずさるバカ、向かってくるばか、その両方が鎧ごと幼女に蹴り抜かれ錐揉み回転して壁を突き破り外の道に放り出されたようだ。
「っは・・・ガァ!」
「グッフォ・・・」
「ふむ、やはり硬いな?肉壁には良さそうだ。」
なんと言うかツンツンですな、デレが見当たらないですぞ!
しかしここでまた何か言えば棋士の方々が犠牲となるのだろう。高給取りになって慢心している上にどいつもこいつもキャメロットより練度が低い、正直捨て駒がいいとこの平騎士なのだろうなぁ。
「すまんのう?制裁というのは必要なのでな?」
「随分と過激ですね、今代の王は。」
「ふふ、若い王は恐怖くらいしか泊がないからな、勘弁してほしい。」
あら、案外マトモじゃないか?
こうして呆然とするマーリン達の前から又してもヒミツはいなくなったのであった。
一目見たときに同族だと感じた。まあ父上を助けたときは聖剣など持っていなかったそうだし報告によれば魔法の術式を読み取るだけでその魔法を使う事が出来るという。しかし魔法使いにしては狂気が薄いし、エクスカリバーと言うには聖なるオーラが足りないような気がする。
まあ、私も言えたことではないな、しかし折れていない選定剣を見て動揺しないとは・・・無知なだけかそれとも兜奥で顔を歪めておるのか・・・ダメだな、取りあえず戦いながら話して見ないと『監視』を撒くことができない。
「ふふふ。」
「随分とご機嫌ですね?」
城の中の騎士団の訓練場の控え室、其処で薄いし笑いを零すと其処にいたメイド長に珍しいものを見る目で見られた。
「しっけいな。わたしだってこどもなのだぞ?」
「そう言うところが子供らしくないのですがねぇ。」
ムムム…知識が先行しているからな、多少、いや、かなり年寄りじみてしまうのだ。仕方ないだろう。
「むぅ、もうゆくぞ!」
「はい、行ってらっしゃいまし。」
彼女は私の数少ない完全な臣下、実権を手に入れたとは言えこの先の脅威や城の中の勢力図は未だ纏まっていないのだ。
「えっと〜、此処は?」
「訓練場だ。」
「それは知ってるが・・・」
「さっさと武器を選ぶがいい。」
なんと言うか王様の言うことを聴かない兵士というのはつくづく馬鹿である。態々ボロい剣やらを集めてきたと思ったらコレを使えと・・・少しの間後ろからついて行って城まできただけだが、一瞬話をした感じ多分だけどこういう小細工は嫌いなタイプだし、マーリンと同じような見た目詐欺な気がする。
「ふむ・・・」
まあいいんだけどね。何を使っても多分勝てる。
「じゃあ、これで。此処をまっすぐでいいんですかね?」
ニコニコとした陽気な感じが兜を被った上からでもわかるような軽い口調でカラカラと笑うヒミツ
「ッチ!そうだ。さっさと行け!」
明らかに予想とは違う上に気に触るヒミツの様子に口調が崩れる兵士、しかしそれは悪手であった。
「へえ、東方訛りか・・・王国騎士じゃないね?死んで?」
不動一閃、ノーモーションからの首刈りの剣
「ナッ!?」
それを受けた騎士は最も馴れた動き詰まる所暗器術と短剣術による剣そらしを実行、しかも不自然なまでに鎧の音がしない、消音の魔法を発動しているのだろう。
「いいじゃん?だが、馴れない鎧は重かろう?」
「クッソ!何故わかった!」
「動きが変だし、それにお前どっからいたっけ?なんか途中から兵士増えてんなーと思ってさ?」
「バケモノ・・・め?」
「バイバイ。」
どちゃりと倒れる肉の塊と宙に舞う首が落ちる。それを断ち切った錆びた剣はパキリと折れるとそれを置くように捨て、影からいつのもベルトを取り出して巻いて、見知った道を歩くように訓練場の広場に向かうのであった。
訓練場はどちらかと言えば闘技場のように見える戦闘訓練用の空間で、様々な結界や治療器具などの揃った怪我する事を前提とした施設だ。
その中央に先ほどの少女が立っていた。
「ふむ、ご苦労だったな、態々挑発の魔法を発動させながら精神的な揺さぶりをかけるなぞ、面倒な事をして。」
おう、バレテーラ。
「あら、バレてましたかね?」
「勿論『我が王』に仕える者ならこの程度どうということはないがな?」
は?
「ぬに?」
え?まじで?影武者?とか思っていると奥の、俺の出てきた入り口と反対の入り口から少女ではなく間違いなく幼女が出てきた。しかし明らかにおかしい、持っている武装の威圧感も目の光も全てが確かに俺の前にいたのが影武者だと納得させるほどであった。
「あなたがははうえとたたかい、しょうりしそしてそのごえいをつとめたぼうけんしゃですね?」
舌足らずだがはっきりと聞こえるという謎の現象を目の当たりにするが此処はKooLにいこう。
「ええ、そうなっていますね。」
「わかりました。ではほんきでおあいてしてもらいましょう。」
そう言うと影武者の筈の少女がバールとなって幼女の右手に収まり、更に左手でカリバーンを腰の鞘から抜く。抜くだけでも周囲に膨大な魔力を撒き散らすカリバーン・・・のようなもの、以前聞いた話では既に砕けていると言われていたが、それは間違いか何かではないだろうか?あんなものが折れるというのが想像できないぞ?
「ふふ、おどろいていますね。これはカリバーンではありません。」
「ほう、だが種明かしは必要ない、そうだろう?」
膨大な魔力とそれに混じる強烈な歪み、この幼女、ヤバイ。
俺もロングソードと黒剣を抜きそれぞれ右手と左手に持つ、できれば聖剣は使いたくないのだが・・・
「・・・せいけんをつかわないのですか?」
「あまりむやみに抜けないからねぇ・・・ヤバくなったら抜くとするよ。」
その返答が気に入らなかったのかそれとも最初からそのつもりだったのか、詠唱を開始する幼女、あとさっきから表情とか微動だにしていない上に瞬きすらしてないんだけど?アレか?人間やめてる系か?
「『おうのつみはここにあり』おきなさい、メダロック。『そとなるもの、またわれらがてきをうちほろぼしたまえ。』エクスカリバー。さあ、おかくごください、おうけんをしっこうします。」
・・・ツッコミどころが多すぎるが取りあえず一つ。
「エクスカリバールじゃないんかーい!」
「それはだいにこうほでした。」




