混沌としたお姫様1
焼け付く様な痛み、暴走と沈静化を繰り返しガリガリと削られる精神、そして・・・こちらを見ている瞳。
「っは!此処は!?」
あまりの悪夢に飛び起きる。最近夢見が悪いとは思っていたが此処までのは初めてだ。
俺の疑問には聞き慣れた幼女ボイスが答える。少々呆れた様な感じをにじませるこの声は・・・
「宿屋だよ。」
マーリンであった。というか俺はなぜ此処に?確か人形屋で左腕を接続して、その痛みでぶっ倒れたはずだが?
疑問を感じつつも周りを確認する。
高級そうな肌触りの布と寝具全体から仄かに香る木の匂いとお日様の香りに包まれている。久しぶりに鎧を脱いでベッドの上に横になっている柔らかい羽毛・・・じゃないな、微かに弾力が有りその上に毛布の様なものが敷いて有る。弾力は恐らくスライムマットと呼ばれるスライムを生きたまま利用した洗濯不要の素敵マットで有る。
大きめの窓から入る陽の光が眩しい、どうやら既に昼を回っている様だ。ふと左腕を見ると完璧に肌に擬態している。
「ていうかさー、なんなのあの巨乳、アレか彼女か?彼女なのか?それとも行きずりの女なのか?あ゛?」
「なんでそんなにキレてんだよ、俺の義腕の製作者だよ・・・あれ?てか会ったのか?」
ふと左手を見ると手紙が挟んで有る。まあ、その前に誤解を解かなければな・・・
結局、途中からやってきた微少女にも左腕やら人形屋の店主で有るホーエンハイムとの関係性、昨日なんで途中で離脱したのかとか、なんで昨日帰ってこなかったのかとか、詰所に呼ばれて女性数人のことについて少しOHANASIが有ったとか…あれ?途中から愚痴じゃないか?
まあ、不満を解消し、この後少し武器屋に買い物や打ち直しに行ったら甘いものを奢るという話に落ち着いた。
「さあて、手紙読むか。」
そうはいっても女子にはお出かけの準備という儀式があるためそんなものなどなくいつも通り鎧を着直した俺は左手に握っていた手紙を広げる。
『やあ、きっと悪夢で目が覚めた後苛烈な女子からの追求にあった色男君に朗報だ。
この手紙はラブなものでもなんでもなくただの説明書だ。早く読むことを薦めるが、落ち着いたらでいい。』
「・・・なんで悪夢で目覚めたのを知ってるんだ?ていうかさなんか薬でも盛られたのか!?」
いつも通り読心術的な恐ろしい察しの良さである。賢者の石とか言う高次精神生命体になった弊害か?サトリなのか?
『大丈夫!心は読めないよ!』
「読んでんじゃねえか!」
『まあまあ、もちつけ、次の段から説明だから、ね?』
「クッ、完璧に読まれている。」
なんと言うかね、この世界の女性は恐ろしく感がいいと言うか、野生的な直感を持っているのが普通なのだろうか?なんなの?みんなエスパーなのか?
しかし、確かに次の段からは簡単なスペックと追加された能力、そして一番重要な体との親和性についてつらつらと書かれている。
『まず、今回の腕は今までとは一線を画した完璧なオーダーメイドで有り、ぶっ壊したら君の頭をかち割ってしまうかもしれないので気をつける様に!
さて、カタログ的なスペック、所謂装備品ステータスと言うのを書いて行こう。まず各種耐性は最高レベルに強化してある。特に耐火性と耐闇性は君が燃え尽きても腕だけは残るとかそういうレベルなので遠慮なく盾がわりにするといい、触覚があるから痛いけどね!
物理的な耐性は今回の故障で目立った、耐打撃と細かな部品一つ一つの耐熱の低さを解消して置いた。まあ、ドラゴンと軟体魔法生物最高とだけ記しておく。
追加性能・・・と言うか、今回のメインだけど。先ず、ヘクトアイズによる自律魔法使用とそれを肩代わりする超容量魔力電池が内蔵されていて、今多分肌に擬態してるけどヘクトアイズ君の質量分なら変形したり、巨大化したりできるよ!やったねヒミツ、ほぼ人外だね!
さらにさらに、ワイヤー射出機構と自動錬成炉が付いてほぼ無限に超硬度のワイヤーが出せるよ!魔力減るけど!フックショットにも使えるし、相手に打ち込んで引き寄せたり引き寄せられたり、他にも元の機構と同じ様に切断、拘束、なんでもござれだ。
さらに!君の持ってた魔力結晶をヘクトアイズ君つまりタヌキチ君に取り込ませたから左腕のを起点に魔法を撃てば魔力消費五分の一!威力は5倍!さらにさらに!余剰魔力による常時展開型の能動障壁で腕だけは残る!
最後に、この腕は君の血肉によって純粋培養されたタヌキチ君がいなければ不可能な完全な君の腕としての機能、つまり筋力の成長や、怪我などの自己回復、などなどを持った完璧にして未完の腕だ。くれぐれも壊すなよ?
ps、次壊したらマジでオコだから、ゲキオコプンプン丸だから。あと代金は王国純金貨3枚貰っといた。マイドー!』
「・・・大事にしよう。」
なんと言うかね、手紙にしてあるからか耐久性に関するところの字が乱れていたり、『腕だけは残る』とかの文字が太字になっていたりと、俺が腕を壊したことについて凄まじいまでの憤怒を感じさせる文章でした。
まあ、多分これなら現状俺の体よりも硬いし、心臓を基点とした魔力路や神経血管が完璧に合体しているので左腕は俺の一部として認識されるだろう。
手紙を読み終わり、まだ来ないマーリン達を待つために下のレストラン部分(言い忘れていたが此処は昨日の飯を食おうとした所の宿つまり二階部分になる。)に行き、飲みものを飲んでまったりしているとしよう。




