幕間:大改造!?劇的☆マッド錬金術!
ちと休憩
「あ?」
さて、きっと誰もが予想しなかったであろう私、錬金術師ホーエンハイムの視点だ。さてさて、そんなことより今私の目の前には古本に埋もれ恐らく気を失ったであろう研究材・・・げふんげふん、ヒミツを名乗る怪しい金ずる兼研究素材提供係兼未来の私の夫が倒れている。
まあ、それはいいのだ。今回はうっかりやってしまったが過去にも何回か気絶してもらっているし、本人も恐らくそれを承知できているのだから…いや、そうではなく、問題はヒミツが倒れると同時に馬鹿でかい剣と女性数人がボンっと私の店兼工房に一瞬にして現れたことである。
「どういうことだ?」
「・・・・・!」
「ん?」
疑問を口に出すと彼の使い魔・・・だろうか?超危険魔法生命であるヘクトアイズの確か・・・あったあった、名札にはタヌキチと書かれているな、何かを表そうとしているようだが・・・
「・・・・・!」
おっとどうやら言語を理解しているらしい、軟体の体をくねらせて文字を描き此方に伝えてくれるようだ。
「ふむ、彼らしいな。」
わかったのは彼女らは彼が攫ってきたのではなく、あの不死身の英雄と名高いバカが首魁であった盗賊団から救ってきたは良いもののうっかり衛兵詰所まで行って身元の確認をしてもらうのを忘れられていたかわいそうな子たちであるという事と、恐らく彼の意識がなくなったことにより魔法によって維持されていた空間や時間封鎖が途切れ飛び出てきてしまったらしいということ、
「はぁー、仕方ないか、」
とりあえず彼女らがいては邪魔なのでしばらく作業は中断して送り届けてくるとしよう。それに・・・
「良いことを思いついたからね♪」
ああ、きっと今の私の顔は恐ろしいくらい口角がつり上がっているだろう。久々にインスピレーションが溢れてくる。
彼女の眼に映るは巨大な剣のその機構と構造、そして一緒に出てきた巨大な魔力塊とヘクトアイズだった。
あー、久々に外に出た。全く女子に五人も人間を運ばせるなんてひどい男だ。その上作品はこっ酷く壊すし、彼の祝福をしている月の神様にちょっかいかけられるし、全く!最高だな!
「ふふふ…」
女性を送り届け、昼間の会話についてちょい頑張って降臨してきた女神様に呪われそうになった錬金術師はこの上なく上機嫌だった。
まず一つに神という高次元生命体に会えたこと、これは魔法使いや魔術師、全ての魔に関わる人間にとって一生に一度は会いたい物なのだ。
そして出来ることなら真理を世の理を聞いてみたい、しかし自分で解き明かしたい!その二つの相反する気持ちに苛まれたいという奇妙な生き物なのである、特に研究者と言うものは。
そして二つ目に彼の陰からなぜか飛び出てきた巨大な剣のようなカラクリである。
「名の通り、あらゆる怪物を殺すための機構が組み合わさっている!強度を保ちつつもワイヤーや刃による切断、その巨大さ故の鈍器としての威力!何より相手の固さによってワイヤーによる切断や重さによる叩き潰しなどどんな相手も相手どれる!」
なんだか少しヨダレが出てきた。ウヘヘ、ぶ、分解したい!けど彼の持ち物・・・う、ウゴゴゴ!えーい!彼の腕に活かせれば良いだろ!やるぞ!私は!
「ヒャッハー!」
迷宮産の物はいつでも人を魅了する魅力をどこかに隠し持っている。それが迷宮の所以でもある故に。
三つに・・・いや、もう言うまい、何処か研究者や技術者というのはネジが飛んでいるというか、突き抜けているところがある。
特に彼女なんか錬金術師としての夢の一つである無限機関、その次程度にある野望、『賢者の石』の精製に自分を犠牲にするような狂人である。
「ふふふあはははははは!」
工房の奥にあるのは再生槽と大量のパーツ、そしてスペアの身体、元の体型をそのままに造った完璧な人形、質感も動きも人間そのもののオートマタの上位互換、その心臓部、其処に有るのは真っ赤な石、彼女の本体であり研究成果『賢者の石』で有る。
実年齢などとうの昔に忘れ去り、永遠の20歳を名乗る彼女はその大成功とともに同輩からの妬みを一身に受け研究者としての活動を続けながらも今はこのような路地に認識阻害と軽い異界化の陣を張って隠居している。
「ここを・・・こうじゃ!にゃはははっは!」
しかし、石となった身は朽ちることなく、同輩が寿命で倒れて久しい今もこうして元気にマッド錬金術師をしている。
実は教科書にも載っている天性の天才だが、生憎ヒミツは衛兵学校でも魔法の歴史など習わず、魔法の教本として使っていた本はホーエンハイムの使っていたものと同じ、つまり旧式の物だったのでホーエンハイムのほの字もない。
「最高だ!こんなに愉快なのは久しぶりかな〜、ほんと、賢者の石を造って以来の超大作だ!」
さてさて、シリアスしているうちに腕は瞬く間に組み上がっていく、今回は本当に戦闘用の武骨な見た目をしている。例えるなら・・・そうだな、まるで鎧のような腕、かな?
「さあ!後は君が彼に力を貸してくれるかどうかだ!それでこの作品は完成を飛び越せる!」
「・・・?」
その目には神に近ずいた愚者らしい人間の果てない探究心とほんのちょっぴりの恋慕が写り込んでいた。




