王都でやることやれること1
白亜を基調とした城壁を持つ王都、外から来る者への対応も少々厳しいがそれだけ中の治安は安定している・・・方である。実際には貧民街やスラムのような場所もチラホラ有るがそれは裏路地、表通りは華々しい事この上ない、
家や店は中心に行けば行くほど白いものが多くなり、外周に近付くほどに木造や、レンガ造りなど色がまちまちになって行く。東からはパン屋や飯屋、市場などから香る空腹を煽る香りがし、売り子の声が聞こえてくる。西からは金属を叩く音や怪しげな薬品の店など職人色が強い店が並び、こちらからも喧騒が聞こえるもののそれは大概工房の長や親方と呼ばれる者たちが弟子を叱る声や、日々やってくる新しいものへの興奮がある。
「うーん、良いとこだ。」
王都、それはこの国の首都であり最も活気のある文化の集中点であった。そうなのだが・・・
「おーなーかーすーいーた!酒!肉!喰わせろ!ワタシニ!」
マーリンには関係ないようだ・・・と言うか往来でその姿でそう喚かないでほしい、なんかすごいひもじい思いをさせてるみたいで視線が痛い、
「まあまあ、先に賞金を貰わないと美味しものが食べれませんよ?」
「そうだぞ?」
「むぅぅぅぅー!」
むくれて駄々をこねる幼女、そしてそれを諌める男女・・・(意味深)
「早く行こう。ほら、焼き鳥だぞ〜」
「あむ!」
取り敢えず餌を与え目的の場所へ向かう。
先ず、俺たちが向かったのは冒険者ギルドだった。さすが本部と言うだけあってデカイし、中も小綺麗にされている。また、中にいる冒険者も王都まで来れる以上それなりの礼儀や強さを持っているので田舎ほど柄は悪くないし、ごく稀にだが依頼者として貴族や王族が来る事もある。だからなのか皆身綺麗である。
「こんにちは、ちょっと賞金首とか色々手続きがしたいんだ・・・ああ、あとこの子の冒険者登録も。」
こっそりとするのも変なのでごく自然に受付嬢へ話しかけ、やりたいことを簡潔に伝える。せっかくの機会なので微少女の冒険者登録もする。
「わかりました、そちらの方は名前と魔法の適正、戦闘スタイルや得意なことを明かせる範囲で書いておいて下さい、貴方は・・・ッ!少々お待ち下さい。」
「はい。」
「?」
異様に静かなマーリンは置いておいて、なぜ俺を見て顔を引きつらせススーッと奥へ消えたのだろうか?なんか俺したかな?
どうにも腑に落ちないが微少女の書類の手伝いでもしているか。
「ヒミツさん、此処は…」
早速か、どれどれ…『特技や特性、スタイル』か、
「ああ、固有魔法とか、奥の手とかは書かなくても良いし、ぶっちゃけ名前だけ書く人もいるから気にすんな。」
「なるほど、ヒミツさんの場合は書いてないことが多そうですね。」
なんか棘を感じたがそれだけ多芸に見えると・・・ダメだな、そこまでポジティブには受け止められないわ、うん、まあ隠し事が多いのは否定しない、だって面倒だからね!
暫くして別の受付の人がサクサクと登録を終わらせ、賞金首の手続きも基本スムーズに終わった。大物三人を出した時、一応奥の方に行かせてもらって出したがその時だけ無表情だった代わりの受付嬢の表情が動いた。
「・・・では、武器の方は確認が取れたのでお返しします。合計は300王国純金貨になります。」
王国純金貨と言うのは金貨の千倍の価値のあるほぼ式典用とまで言われる高額貨幣だ。金貨100枚で白金貨、白金貨10枚で王国純金貨、1金貨は100銀貨、1銀貨は100銅貨、1銅貨は100鉄貨となっている為、鉄貨を1円とするなら、王国純金貨は一枚10億相当の価値となり、それが300枚である。
「うん?桁おかしくね?」
「はい、お持ちになっている賞金首リストは少々古いもので他にも該当者が多数いた上に伝説と名高い元英雄に掛かった賞金も飛躍的に高まり、このような額になりました。実際、達成できるような方はほとんどいないと言っても良い偉業です。」
「お、おう。」
すごい捲し立てられたが、どうやら予想よりも多くの金が入ったのは良いことだ。
と、思ったのだが・・・
「アバババババ・・・」
「アレ〜、あはは〜?桁がおかしいぞう?」
言語の強制翻訳がデフォの勇者である小夜はスッと耳に入ってきた三千億円と言う言葉とそれが実際に目の前にあると言う事実に目を回しており、マーリンは自身の給料と比べているのか虚ろな目で金貨を見つめていた。
「ああ、じゃあ一枚を金貨と銀貨に崩してくれない?で、10枚をこの子の口座に、もう10枚と9枚は別々に分けて袋に入れてくれない?」
「かしこまりました。」
しかし、ヒミツにとってはこの程度の大金は訳でもなかった、冒険者時代に稼ぎに稼ぎ、毎日の生活費以上には常に稼いでいる。要するにこれ以上の大金をヒミツは所持しており、稼いだ事があるのでごく自然に対応していた。
「やはり・・・」
「ん?」
何か視線を感じるな・・・
「あへへへへ、お金、お金ってなんだっけー?」
「嘘だ…今まで王国の偉い人についてきてたはずなのに…コツコツもらってきた年収以上をを一瞬で稼いだ…だと!?」
「落ち着け!ほら!周りの注目を集めンな!」
うむぅ?気の所為だったか?
わずかな違和感を感じつつも報酬を受け取り、マーリンが待ち望んでいた食事のために少々位の高い飯屋のある。中心部に近い町の東へ何かが壊れてしまった二人を担いで行くヒミツであった。
「陛下、発見しました。『月光の騎士』です。」
「うむ、わかった。さがるがよい。」
「ハッ!」
広く荘厳な王の玉座、そこに似合わぬ幼女がその見た目通りのソプラノで舌足らずに報告に来た騎士を下げた。
騎士が行儀良く下がっていき、間に残ったのは幼女のみ、表情を崩しニコニコとすると歌うかのように、そして何かの始まりを告げるように、浮かれたように呟く。
「ふふ、わがちちうえをまもったるろうのきし…そしてせいけん、うれしいな♪うれしいな♪」
その目は魔力故か、それともその身に潜む強大な異界の啓蒙からか、妖しい光を放ち、王権を表す選定剣とバールのような形の形容しがたいバールを持つ彼女は新王国現国王、ただの神輿として担がれたものの王権を得ると同時に全ての権限をその力と智慧を持って我がものとした次代の完全な王であった。




