強襲と奇襲と強奪が合わさりただの盗賊狩りが始まる。3
意外、というかなんというか下っ端盗賊の多くが討って出て、幹部も大半は装備を整え向かってくる。
「妙だな。」
実際の盗賊団というのはほとんど力と利益関係で出来ているためこういう襲撃時、基本的には幹部がトンズラし、下っ端も逃散・・・というのが多い、まあとっ捕まえたりぶち殺したりしないといけないから向かって来た方が楽といえば楽なのだがね?
「ガッフ!?」
後ろからの攻撃、避けて反撃、皮鎧だったが左の黒剣で肋骨ごと叩き壊す。
「・・・」
そういえば魔術師の作った薬品を団員が服用したりしているのを見ない、おそらく結界やら魔法やらを対価に攫ってきた人間を見繕って貰って居たというのが有力かな?
一昔前の傭兵団の紋章をあしらったマントや甲冑、皮鎧、時には武器、そう言ったものを身につけた明らかに盗賊ではなくむしろ戦士、傭兵に近い奴らを斬り伏せて行く。
「っと、そこ!」
外套で目くらまししながら重装甲の隙間を縫って剣を突き入れ心臓を破壊。
「げっふ・・・フハハハハ!」
そとで派手にやってるマーリンは最初の攻撃以外は非殺傷で何処かに気絶したりしたやつを集めている様だ。・・・お優しいことである。というか問答無用で抹殺してる俺がダメなのか?でもなあ、別に更生するとかないし、一回こういう事しちゃった奴って結局どっかでまた裏に引きずり込まれちゃうし、勢い余って反乱とかしちゃうかもしれないし、生かしておいても鉱山労働者ぐらいにしかなれない訳だ。
「ちょいさ!」
少し数が多いので足も使って行く、身体強化を集中させ脚力だけで首を飛ばし、胴を吹き飛ばす。
「ガッ!」
いい加減、彼らの付けている紋章の見当がついてきた。いかんせん全部が擦れていたりしておそらく同じものであろう事しかわからなかったが、どうやら有名な傭兵団の物だ。確か…
「『不死旅団』・・・だったか?」
「そんな名前の集団だったのですか?」
いつの間にか近くに来ていた微少女に驚きを禁じ得ないが耳をすませばマーリンの砲撃も止まっている様で、周囲の敵意を探知するとあとは俺が行く先、最奥である団長室らしき場所に三つ反応があるのみである。
「ああ、確か大戦中最も強く勇猛で死を恐れない集団だったそうだ。なんの因果か今は盗賊なんかやっていた様だが。」
恐らく理由はある。そしてかなり理解しがたいものだが、きっと戦争狂なんてそんなものだろう。同時に俺は王都で昔冒険者としてある女性の護衛をして来た時に襲って来た奴らを思い出した。
確かその時も同じ様な紋章を・・・
「ヒミツさん、私先に周辺の探索をしておきますね?残りはもうほとんどいない様ですし、もしかしなくてもさらわれて来た方々がいるかもしれせん。」
「ん、ああ、そうだな、できれなマーリンと合流しといてくれ。」
いかんな、さっきから考え事ばかりだ。
小夜と別れたヒミツは既に動く者のいない通路をゆっくりと進んで行く。堅牢であった洞窟型の拠点は原始的なランプの心もとない光で通路を照らしているのだが、それも今は砕け、通路や壁、実はあった外周の壁の様な構造物も吹き飛び、焼かれ、砕けている。
おおよそ3人という少数戦力に敗れる道理も無い圧倒的な数も、それを覆す圧倒的な個の力で砕かれた。
「扉か・・・いや、此処は最終決戦だしワイルドに行こう。」
壁を斬る。細切れにする。
激しい爆撃音、次々に死んで行く団員、そして…濃厚な殺気。
「ガハハ!」
3メートル近い巨人の様な筋肉の塊は自身の得物である魔戦鎚『破城』を担ぎ、殺気の主人を待って居た。
彼、カラアゲ盗賊団の団長、ガンドルは有り体に言えば中毒者だった。
雨霰のように降り注ぐ矢、魔法、大砲の爆音が耳を震わせ
万を超える軍勢と万を超える軍勢同士の殴り合い血を血で洗う様な凄惨な『戦争』という行為の中毒者だった。
「大将、今回は死ねそうですかね?」
右に控える眼帯の剣闘士も
「キシシ、楽しい楽しい戦争だネェ?」
左に控える奇術師も
「ああ、きっとあそこで死にぞこなった俺たちをぶち殺してくれる。最高の死神だぜぇ?」
彼らはかつての戦争で、英雄とまで呼ばれた傭兵だった。しかし激化する戦争をくぐり抜けて行くとその力は成長を辞めず、止まらず遂には怪物にまで届いた。
『不死身のガンドル』
まるで木の棒の様に軽々と巨大な戦鎚を振り回し、その魔鎚の力を掌握し力を跳ね上げ再生能力を跳ね上げ、終ぞ死に損ない続けた男の称号だ。そしてその傘下もまた同様に戦争が続くことを望み戦闘の中で死にたいという生粋のバカばかりだった。
戦術的な敗北はあれどどんな無謀な戦地でも生き残り、敵を血祭りにあげるその姿はまさに不死身、そして彼に続いて行く戦闘狂達もまた一騎当千の死に損ない、長らく続いた戦乱を生き延びてしまった人間大の化け物集団、やがて彼らは戦争がなくなって行くのを感じ取り火種を欲した。
「だが、まあ、」
「ワオ…あっちのが人間やめてるじゃない?」
「クク、面白い。」
しかしいま、扉を開ける事なく壁を粉砕して入って来た人影とその仲間と思しき二人、たった3人に盗賊団として贅肉がつき動きが悪くなったとは言え元最強の傭兵団が蹴散らされている。
「うむ、燃え尽きるといいぞ、英雄?」
赤熱化し空気すら燃やしている刀身は至って実直なロングソード、左手には鈍器じみた鉄の塊、だがそれを構える人物が一番異様だった。
「ガハハハ!面白いことを言うな、同族!さあ!始めようじゃねえか!」
「ああ、そうだな。」
ただ一閃にて歴戦の死に損ない、それも最強と名高い傭兵二人を発言させる間も無く斬り飛ばし、しかし全くと言っていいほど隙を見せない全身鎧のボロを纏った騎士、久しく忘れて居た強者との戦闘、その高揚を抑えきれずガンドルは騎士に突っ込んだ。




