早く王都に行きたい…4
「つ・か・れ・た。」
「そう、ですね。」
「あははは〜!」
今度遺跡とか迷宮とかに入る機会があれば絶対にマーリンは置いていこう、縛ってでも置いていこう。そう誓う。
落とし穴から脱出しマーリンの杖も回収し、時間的にも余裕が感じられる筈だったのだが、魔法と研究以外はとことんポンコツなのか、それともわざとなのか知らないが、盗賊どもの足跡を辿るだけで良いはずなのにバンバン罠に掛かる。
飛んでくる矢に振り子式の巨大鉄球、毒やら転がる鉄球やら爆発やら・・・出るわ出るわテンプレな罠が、そしてそれを何故か踏み抜くテンプレなバカもセットで大惨事である。
現在は最後の最後にマーリンだけが浴びた精神退行系の毒ガスで幼児退行しているだけなので問題ない、むしろこっちの方が抱えたりしても大人しくしてて楽だった。
なんと言うか、遺跡探検という行為に多少の浪漫を感じていなかったといえば嘘になるがこれは無い、色々気になる彫像やレリーフも有ったがマーリンがいる限りは行くことはないだろう。
「はあ、で、此処は………まだ森か」
「そのようですね、」
魔法での探知を発動するとどうやら此処は元いた森よりかなり下の場所らしい、遺跡の出入り口は魔法や構造的な細工で遠目に見たり、木々の合間から見るとただの崖に見えると言うものだ。
本来はもっと巧妙に枝分かれしているのはゆうまでもないがやはりマーリンがいる限り無理だろう。
上にある俺たちがいた森と比べるとだいぶ魔力の濃度が低く、トレントのような精霊系の魔物やオーガなどの魔物の反応もない、一般的な森と言える。だが・・・何かがおかしいな。
影から方位磁針と地図を出し、どうにも合わないので広げて地面に打ち付け俺たちが昨日いた村の位置を光らせる。そのあと美少女から習った地脈、霊脈と呼ばれるものを読む技術の応用で地図上に自分たちの現在地を映し出す。
「あ?」
「どうしたんです?」
「おかしいな、此処まで二時間くらいで歩いて着た筈なのに十倍じゃ効かないくらい進んでる?」
地図上に出た光点はつい四時間ほど前までいた廃村から遠く離れ既に王都近くの森に移動して着たことになっているのである。
「妙ですね・・・私たちが落ちた穴もそうですが全体的に空間や時間が歪んでいたのでしょうか?」
「その線が濃厚だと思うんだが・・・うーむ?」
またいつか来て調べたいものだが…
「とりあえずマーリンをどうにかしてからだな。」
「それは確かに。」
しばらくは御免である。
精神系ガスの効果が切れたからかそれともそのあと襲って来た羞恥からなのかぶっ倒れたマーリンを背負い少々警戒しながら森の中を進んで行く。ここら辺まで来ると人間の手が入っているのか所々目印のようなものや獣取りの罠、切り株や管理されているであろう薬草群などの生活感が見て取れるためやはり人里近いのであろう、そして探知で出た巨漢の足跡の反応はまだ続いているため盗賊団もこの近くにいる筈である。
「っと、『影隠れ』」
全員を巻き込んで隠蔽+影の中に潜行、少々驚かれたが流石に慣れたのかそれとも元からそう言う事もしていたのか静かである。
「おい、今なんか居なかったか?」
「あ゛?居るわけねえだろ、此処らにはあの胡散くせえ魔術師様が張った結界とやらがあるんだろ?」
目の前の草木が刈られ、踏まれ道を作って居たのと、少々話し声が聞こえたのが幸いだった。潜入初日から暗殺とか気が滅入るからね。
目の前を通り過ぎて行く『ザ・蛮族』みたいなトゲトゲとした謎の肩パットと毛皮の服、鉄の鎧などを掻き集めて着るようなスタイル、そして腕力でぶち殺す気満々の斧と錆びたマチェーテ、うーん、やっぱ盗賊ってよりも山賊かな。
(いけ。)
視線で支配した小型の羽虫を何匹か毛皮に紛れ込ませておく、これで本拠地の場所はわかるだろう。
「それに、他の支部からも幹部が来るんだ。並みの冒険者じゃあ、一瞬で肉塊だぜ?」
「はっはっは、そりゃそうだな!幹部様様だゼェ!」
騒々しくしながらも周りから動物が逃げる気配も寄って来る気配もなく、この一帯が結界のようななにかで認識を阻害して居るというのは確かなようだ。
(ムウ・・・・それなりに腕が立つ魔術師・・・か、結構隠密で行くのは苦しいかな?)
周囲を虫や小鳥などを使って観察し、何匹か使い魔らしきものを見つけたので認識をズラしておく、当分は影の中で過ごすことになりそうだ。
(『創造:部屋』・・・結構魔力の消費が激しい、な。)
影の中でくらいしか使えないが一応空間魔法を修めて居て助かったとこの短い今世で何度思ったかわからないがそれぐらい反則じみて居る。現に、先ほどまで真っ暗だった空間は四畳程度の畳の部屋になり、以前作った時同様囲炉裏付きだ。
「じゃ、しばらくは此処で待機だな。」
「・・・なんというか、驚くのも疲れました。影に引きずりこまれたと思ったら小さいですが和室の中に・・・・狐につままれたようです。」
「おう、そうか。俺は空間維持に魔力を使うから少し寝るぞ。」
とりあえず忘れずにマーリンを杖と一緒に簀巻きにし、影から取り出した布団を敷いて寝る。・・・一応デカイブランケット出しておく。お客様用だ。




