最悪に向けた俺氏のサムシング5
魔法とは、すなわち世界を見る自身を騙す事である。いかな術理をもってしてもそれはすなわち真である世界を自身の視点を持って歪め、改変し、自らの心を映し出す術なのだ。
「『大魔導教本基礎編』か、実際魔法という事象はそうなんだけれど、世界へ映し出すっていう工程である程度決まったプログラム、俺が使うのは神聖文字や魔法文字、あと漢字、それらを組み合わせ有効な形にする。そういう風な魔法陣の作成っていうのが必須なんだよね〜」
「そうなんですか、やはり霊力や祈祷術とは根本的な違うナニカなんですね。難しいですね〜」
「むー!ウムー!!」
旅の道程、少なくとも普通の敵を相手に苦労しないこの一団は歩きながら魔法談義をしていた。いや、マーリンは簀巻きにされ口に布をかまされていた。
マーリンはうっかりがすぎるためこの世界の魔法をよく知らない小夜にはまだ危険な話や精神汚染の可能性のある話をぽろっと言ってしまいかねない、知りすぎているが故に危険という奴である。
まあ全員何かしらの精神強化や防御はされているため問題ないといえばそうなのだが、万が一という事もあるし、一足飛びにそういう深淵とか神秘とかの話をしても結局基本が最も重要なのである。
「そうだなぁ、むしろ俺は祈祷術の方が難しいと思うぞ?神様だよりは性に合わんしな。」
ま、聖剣使いというか、月の神様とかによく呼ばれる身としては頼るってよりも依頼人って感じが強いからな。
「まあ、私もお母様と昔から妖怪やら神様やらと戦ってなければできなかったとこだと思いますし、祈祷術の多くは加護や寵愛がなければ使えませんからね、なのでやはりこの世界でいう魔法、私たちがいう陰陽術や風水術、忍術が主流でしたね〜」
「忍術か〜、クラスメイトだっけ?忍者がいるって言ってたよな?」
そう、いるらしいのである。ニンジャ、ジャパニーズニンジャ、アイエエ!
「そうですね、残念ながら私は教えられませんし、多分服部くんも教えてくれませんよ?」
「ざんねんだ。」
「ぷは!ぶっちゃけ君がこれ以上強くなったらもはやバグだよ!?」
いつの間にか縄をほどきヒミツの肩から飛び降りたマーリンはヒミツの腰に新たにつけられた真新しい瓶の中でいつの間にか三つ目にまで回復しているポン太こと、使い魔契約済みのヘクトアイズにりんごスティックを与える。ちなみに小夜はスライム系には嫌な思い出があるらしく複雑な顔をしている。
すごいノリノリで燃やしていた気もするがそこは気にしないであげよう。
「あ!あそこ!村じゃないですか?」
「建築物・・・どう見ても村・・・だと思うんだがな。」
「?」
王都へ向かい歩き続ける一団は暮れていく陽を見ながら歩き、ヘクトアイズ戦から野営二日を経てようやくまともな人里、所謂村という奴を視界に収めたのだった。
だが、忘れてはいないだろうか?ここはまだ北の端、キャメロットとその衛星都市以外は殆ど人里などない、戦時に作られた立派な王都まで繋がる街道はあるが・・・
「廃村かよ!チキショー!」
「今日は此処をキャンプ地とする。か。」
辛うじて結界が機能しているため見た目は酷くないが人のいない、埃をかぶった家々、老朽化し潰れた家、紛れもなく廃村である。
「なぜ此処に廃村が?」
整備もされ普通なら栄えそうなものである。ましてや道沿いにあるこの村など街になってもいいのではないか?そう思った小夜は疑問をもつ。
「そりゃアレだよ、ここら辺は魔物が強すぎるんだ。」
キャンプの用意と探索をこなすヒミツがざっくりと理由を言う。そうなのだ。此処にはこの前のように大量ではないものの村人や下級冒険者には十二分に脅威であるオーガや、木に擬態するトレントの類、オーガのせいで居なかったのかは不明だがどう猛なDOUBUTUも潜む恐ろしい森なのである。
開拓当初は兵士や超級の冒険者も居たらしいが転移門が起動され、戦争も終わると同時にこの道に意味はなくなり商業的価値も薄れ、村ごと集団で衛星都市やキャメロット付近の村に移住したのであった。
「まあ、それに此処らが衛兵団の限界範囲だからなあ。」
「え、それって・・・」
なんとなくヒミツの言う限界というのが察せてしまった小夜はたじろぎ、次の瞬間
「うわー!ヒミツー!たっけてー!モギュ!?」
大量の山賊を連れて高速でこちらに向かって逃げてくる。杖に乗ったマーリン
「そら、おいでなすったぜ?」
油断なくロングソードを引き抜き非殺傷レベルに威力を落とした雷の範囲魔法をぶっ放すのであった。




