俺氏の台詞だ!ボケェ!
「勇者は、特別なのは俺だけでいいんだよ!しねぇ!」
「いやどうでもいいから早く帰ってくんない?」
剣と剣の打ち合い、若しくはそれに近い戦闘行為が何故か里の中で起きていた。自らを勇者と名乗る黒髪のもっと言えば日本人的な顔立ちの青年は刀を振り回し、ヒミツはそれを短剣で全て受け流す。短剣も殺傷用ではなくいつも持っている素材剥ぎ取り用のものである。
「なんでだ!なんで殺せない!」
「いや知らねえから早く帰れそして俺を安眠させろし」
このひどく一方的な闘いを見守るのはラインから一応戦闘状態だということで飛び起きたマーリンとこの馬鹿な勇者の同級生と思しきその他大勢だった。しかしその多くは勇者を名乗るものの無様に悲しみを覚え同時に納得もしていた。
事のはじまりはこうであった。激しい不運の呪いをなんとか退け拍手喝采の中宿泊施設まで送り届けてもらう途中の事。
「貴方がヒミツさんですね?」
突然後ろから知らない誰かに話しかけられたので
「そうかもしれないがそれ以前にお前誰?」
つい年齢相応の話し方が出てしまったが仕方がないだろう、あまりにも突然だったしビジネスマンだって素はこんな感じだって、というか肉体年齢相応に精神性が変革されてるんだししかたないじゃん?
「・・・ああ、すいません、僕は天城正義です。」
いや、誰だよ、知らねえよむしろ何故そんな自信満々に自分の名前だけ言ってドヤってんの?エルフの皆さんも誰だかわかってないよ?さりげなくリーゼちゃんも板を使って誰かと連絡してるし・・・は!もしかして…
「すいません、おかしな人とは関わらないというのが家訓でして失礼させていただきます。」
「は?」
呆然とするイケメンくん、そして全力で宿には入れ・・・ない!
「あるえ?結界かな?」
「そうです。」
振り返るとまたこれは日本人的な顔立ちの微少女(誤字にあらず)がみっこ巫女な格好でこちらをみている。というか近ずいてくる。悪意がなくそしてイケメンが未だフリーズ中なのでそっちを見ていると耳元まできた。
(あの、本当に大変申し訳ないのですがあの馬鹿をぶちのめしてくれませんか?)
(why、what、何故?)
というかこの微少女自分に認識阻害の結界を張ってる、それにこの世界にはない魔法の体系、だが俺はそいつを知っている。創作物上にしかないと思ってたんだがね。
(その・・・今所属している王国というか神聖王国が凄い胡散臭いんですけど、あの馬鹿はそこの洗脳にまんまとかかってそのまま自己中で無駄に実力のある勇者(笑)となってしまったのです。)
(いや、そっちがなんとかしろよ!)
(それもそうなのですが・・・その・・・馬鹿すぎまして。)
(ええー)
もともと思い込みの激しい馬鹿だったので胡散臭い国王の洗脳でより面倒くさくなりまして、)
うわぁお面倒臭い、なんか既に最初からその国に目の敵にされてるのがわかるところもめんどいしかもそんな馬鹿な勇者を元に戻すためにボコれだと?バカは死んでも治んねえんだぜ?
「えーいやだ。」
わざわざ声に出す。無論フリーズが解除された馬鹿勇者に聞こえるように
「お願いです!」
こっちもわざとだなぁ、てかまじでかえりたいんだけど?冒険に勇者との戦闘とか入って無いんだけど?だが・・・まあ報酬があれば話は変わってくる。
(陰陽術、ってやつだろう?君の魔法)
目を見開く巫女っちゃん
(ッ!貴方・・・いえ、まさか、ですが何故わかるのですか?)
(こっちの魔法とは毛色が違いすぎる。まさかあっちにもそんな技術があったとはね)
俺の言葉から全てを察したのか、少しため息をつく
(わかりますか、教えます。その代わりなんとかして下さいよ?)
(オッケー、よろしくね?)
さて、いい感じに自分が主人公だと自分が特別だと自分が優れていると信じる間抜けの堪忍袋が切れるかな?
「僕を!むし!するなあぁぁぁぁあ!」
素晴らしい、イケメン顔が真っ赤になって一息で抜刀、剣道の馬鹿正直な動きで突っ込んでくる。じゃ、俺も行くかな。
「エルフの皆さんは離れていて下さい、少し危ない可能性がほんの少しだけ有るからな。」
そういいながらも微少女に目配せをし結界を張ってもらう、ふむ無詠唱で少なくともこの馬鹿が破壊不可能な強度、素晴らしい!
大仰に動き挑発じみた言動をしつつもバカの振る刀をいなし弾き本体を蹴り飛ばす。
「ガッ!?」
「さ、早く帰ってくれれば俺は嬉しいな、俺も眠いし」
時刻は午後十一時、エルフの皆さんの多くは既に家に帰って寝ている。宴会で疲れてるしね。
「クッ!はあああぁぁぁ!」
蹴り飛ばされたのを忘れたかのようにまた突進してくる、異世界に来て身体能力でも上がったのだろうが、振りも、動きも、思考も!全てが足りない!全てが遅い!
「おっそーい!」
前蹴りで腹を突き刺すように蹴り飛ばす。無駄に格好だけつけて突っ込んで来ただけあって結界の壁に阻まれるまで吹き飛ぶ。
こんなことを繰り返して冒頭に戻る訳だ。というか新しいものが学べるという楽しみがあってもさすがに飽きてきた。何しろ成長しない、勇者を思わせない凡庸ぶりだ。一応これでも秀才だったらしいが・・・錆びたかな?
「そろそろ面倒くささが極まってきたし終わらせるか」ボソッ
もちろん打ち合っているのも意味が無いわけでは無い、洗脳というのは意外と面倒で特に解くときは気をつけないと廃人まっしぐらである。故に打ち合うことで解析していたのだがそれももう終わっている。
「死ねええええ!」
「『魔法解除』大サービスだろ?」
向かってきた勇者の洗脳の核、刀を魔力を高速で回転させながら放出することで生まれる魔力ブレードで粉砕し呆然とする本人も非殺傷の唯の魔力の刀身で撫で斬りにする。
「ハイ終わり。」
ばたりと倒れた勇者(笑)に駆け寄る者は誰も無かった。




